着物の種類

2022.6.6

カジュアルに着れる定番着物|小紋の意味や選び方、着用シーンについて解説

カジュアルに着れる定番着物|小紋の意味や選び方、着用シーンについて解説

着物にはいくつかの種類があり、着用するシーンや季節に応じて、その幾通りもの中からその都度に適した着物を選びます。そんな中でも、「小紋」の着物は、これから着物のおしゃれをはじめたいと考えている方にとっても、はじめての着物になる場合も非常に多い、スタンダードな日常着としての着物。カジュアルな普段着として、ある種の定番でもある小紋の着物は、ビギナーさん向けの入門編として勧められる場合も非常に多いものの、実際に選び取ってみようと思っても、いまいち着物への知識が薄い段階では、どれが小紋の着物なの? 他の着物とは何が違うの? などなど、様々な疑問にぶつかる場合も多いかと思います。本記事では、そんな小紋の特徴や実際の選び方、着用できるシーンについてご紹介いたします。

小紋とは

小紋とは、普段着物のひとつで、生地全体に細かな模様が入っているおしゃれ着としての着物の総称です。小紋の着物は、同じ模様が同じ方向に向かって繰り返し描かれた、パターン柄の生地を用いられるのが基本で、カジュアルな普段着として身に纏えるデザインから、ちょっとしたお出かけの際に、外出着として身に着けられるデザインまで、幅広いラインナップで展開されています。洋服で言うところのワンピースに近い感覚で様々なシーンで着用されています。小紋に用いられる反物は、基本的に「型染め」と呼ばれる技法を用いて染色されています。以前には模様の大きさによって、大紋や中紋といった名称で、呼び分けて区別していましたが、昨今では模様の大小で区別することは少なく、これらを総じて小紋と称します。

日常着としての着物のひとつ

小紋は普段着物のひとつで、日常着として着用するのが一般的です。基本的に小紋はカジュアルな普段着として着用しますが、一部例外としてフォーマルシーンで着用できる小紋も存在します。それ以外は、普段着という位置づけになりますので、これから着物のおしゃれをはじめたい方、お友達とのちょっとしたおでかけなど、日常のレジャーシーンで着物を着用したい方におすすめしたいのが、小紋の着物です。

小紋の歴史

「小紋」という名称は、小紋染めという伝統的な染色方法に由来します。型紙を用いることで、生地に文様を付けて染め上げる小紋染めの技法は、江戸時代に発達したとされていますが、その起源は遥か平安まで遡ります。小紋染めが衣服に用いられるようになったのは、室町から戦国時代頃だと考えられており、この頃はまだ武士などの一部階級のみが許された嗜みのひとつでしたが、江戸時代の発展を経て、小紋染めは広く庶民にも愛されるようになっていったのでした。現代における小紋は「絵柄を繰り返して型染めされたもの」という定義がされています。古来には細かな文様のみが小紋の特徴でしたが、昨今においては明治・大正の頃に台頭した大正ロマンやモダン調、アールデコ模様などの影響もあり、大胆な模様や総柄、飛び柄などの多様な小紋が数多く流通しており、カジュアルな日常着だけではなく、ちょっとしたおしゃれ着としても用いられています。

小紋の特徴

小紋とは「生地全体に細かな模様が入っている日常着・おしゃれ着の着物」の総称です。小紋の反物は、型紙を用いて染める型染めという技法を用いて、縞や絣、絞り、水玉などの模様の染めを施している品が多く、同じ模様が生地全体に方向関係なく、繰り返しのパターン柄で入っているのが特徴のひとつです。以前は柄の大きさによって大紋や中紋と呼び分けられていましたが、現在では総じて小紋と呼ばれます。また、小紋には江戸小紋、京小紋、加賀小紋などの種類もあり、これらは小紋の中でも特に有名な品です。非常に緻密な単色模様を型染めすることで、色無地風に見せる「江戸小紋」、友禅の技法を取り入れることで、動植物をモチーフとした大判柄を入れた「京小紋」、絵画のように繊細なタッチで華やかな絵柄を入れた「加賀小紋」は、それぞれ小紋の中でも代表格です。

他の着物との違い

小紋はあくまでもカジュアルな日常着としての着物であり、訪問着などと違って格はありません。いわゆる礼装には該当しないため、普段着やちょっとした外出着という感覚で着用することになります。

小紋はどんなシーンで着用するの?

小紋の着物は主に日常着として、カジュアルシーンを中心に幅広い場面で着用します。具体的にどういったシチュエーションで着用できるのか、下記にて例を見ていきましょう。

基本的にはカジュアルな日常着の着物

小紋は基本的に、カジュアルな普段着物の感覚で、お召しになっていただける着物です。普段の洋服に置き換えるとワンピースのようなポジションになりますので、気軽なお出かけから、ちょっとしたドレスアップ用にも着用していただけますので、近所を少し散歩する際にも、お友達との食事会にも、美術館鑑賞や観劇などの軽いお出かけにも、幅広いシーンで着用していただけます。普段着物という位置付けですので、これから着物のおしゃれをはじめたいと考えている方で、特にカジュアルなお出かけなどでの着用を検討していたり、お気軽に着物を着たいと考えている方におすすめです。

小紋の格は?

小紋は、いわゆるデイリー用の普段着物、という位置付けですので、いわゆる礼装には該当せず、着物の格を求められる場での着用は、避けるのが無難です。中でも式典や結婚式など、フォーマルなパーティ会場での着用は避けるようにしましょう。例外として、江戸小紋は準礼装として着用できます

フォーマルな場で小紋を着てもいいの?

基本的に小紋はカジュアルな普段着ですので、フォーマルシーンで小紋を着用することはありません。小紋にはおしゃれ着としての側面もありますので、着物の格式を問われないような軽いパーティーやお茶会、レストランでの食事会やクラス会、観劇、美術鑑賞までの着用に留めるのが無難です。

セミフォーマルな場で着る場合も

小紋は基本的にカジュアルな普段着物ですが、上述の通り、食事会程度のセミフォーマルな席であれば着用できる場合もあります。さらに、小紋唯一の略礼装である江戸小紋は、基本的にフォーマルな席で着用しても失礼に当たらないので、肌広いシーンで活躍してくれる頼れる味方です。ただし、一部例外として結婚式の格式によっては、江戸小紋では適さない場合もありますので、江戸小紋での出席を考える場合にも、事前に先方へと確認しておくのが無難でしょう。また、江戸小紋に紋を入れることで、さらにフォーマルな席でも着用できるようになります。しかしながら、江戸小紋はあくまでも略礼装で、第一礼装には該当しませんので、その点は留意するようにしてください。

小紋の上手な選び方

実際に小紋を手に取って選ぶ際の基準となるポイントは、いくつか存在します。どこに要点を置いて品定めをするかによっても少々変わってくるため、まずは、ご自身がどういった要素をこだわりたいのかを明確にすることが重要です。例えば、洗える着物が欲しいと決めている方、アンティーク調の着物を探したいと決めている方、予算を事前に決めている方、こんな雰囲気の色柄が良い、と明確なイメージがある方など様々おられることでしょう。下記にて、各ポイントを見ていきたいと思います。

洗える着物を選ぶ

正絹の着物は基本的に自宅で洗濯できませんが、ポリエステル製・ウール製・木綿製などの着物は、ご自宅で洗濯出来るものが非常に多く流通しており、昨今では非常に人気を誇っています。洗える着物の主なメリットは、手入れが簡単で正絹などと比べると丈夫でもあるため、着物の所作や管理が不安な場合にも気軽に取り扱いが出来るといった点で、この特徴は初心者さんにも非常に適しています。また、専門店などのクリーニングに出さなくとも、ご自宅の洗濯機でお手軽に洗っていただけるので、頻繁に着物を着用する上級者さんや、仕事着として着物を着用される方にも適しています。ポリエステル製の洗える着物であれば、大半があらかじめサイズの決められたプレタ着物になるため、比較的に価格が安易で、これから着物一式を揃える方にとっては、お財布に優しいのも嬉しいところです。

アンティーク着物を選ぶ

アンティーク着物を選ぶ、というのも選択肢のひとつです。いわゆるリサイクル品の着物は、新品よりも比較的に安価で購入できる場合がありますので、予算を控えたい方にもおすすめ。また、アンティーク着物として流通しているお品は、値段が張る場合もありますが、現代ではなかなか出回らない、貴重な大正ロマン・アールデコなどのモダン柄などに出会える場合もあります。プレタ着物とは違いアンティーク着物との出会いは一期一会ですので、運命の一枚を探し出すといった楽しみもあるのが、アンティーク着物の魅力のひとつ。逆にアンティーク・リサイクル着物のデメリットは、総じて初心者には品物の状態が判断しにくいことです。虫食いや日焼け、汚れなどが見落とされている場合もありますので、購入時には十分に確認してから購入したいところですが、初心者の時分では少々判別が難しい場合もあるかもしれません。また、昔の日本人は総じて現代人よりも身長が低かったため、現代女性には少々丈が短い場合もありますので、丈感についても購入前にしっかりと確認しましょう。

生地・色柄で選ぶ

他にも、生地や色柄で選ぶというのも選択肢の候補に挙がります。これから着物を始める方も、既に着物を楽しんでおられる方も、新しい着物が一枚欲しいな、と思う際に、例えば、「江戸小紋が欲しい」「単衣が欲しい」など、あらかじめ決めている種類から選んでいく方もおられると思いますが、それと同じように「この色の着物が欲しい」「この柄の着物が欲しい」といった観点から、着物探しをされる方も多いのではないでしょうか。例えば、桜見物に行くのに桜の絵柄の着物が欲しいですとか、猫が好きだから猫の絵柄の着物が欲しいですとか、そういった希望がある場合には、まずはともかく、その観点から着物探しをするのも選択肢です。現代では、ネットショップなども数多く台頭していますので、希望に叶うお品をじっくりと探してみるのもまた楽しいもの。大正ロマン風、アールデコ風などの着物が欲しい場合には、アンティーク着物が選択肢になりますが、これらの品を再現した洗える着物などもありますので、希望に叶うものをじっくりと探してみましょう。

小紋を着るときに気を付けたいこと

小紋の魅力は、カジュアルな普段着物、というポジションでありながらも、小紋の種類や、色柄、帯や帯留め、帯揚げなどの小物との取り合わせによって、幾らでもドレスアップが出来ると言う部分にもあります。そのため、多少であれば格式の高いシチュエーションでも着用できる場合もあります。しかしながら、あまり派手過ぎる絵柄や帯との取り合わせですと、そういったシーンにも適さない場合は度々ありますので、着用シーンと着物が見合っているか、くれぐれもよく考えて検討するようにしましょう。

小物は何を揃えればいい?

小紋に限らず、これから着物のおしゃれをはじめようと考えた場合には、着付けに必要な小物を揃える必要があります。まず最低限で揃えておきたい着付け小物は、長襦袢と肌襦袢、帯、帯締め、帯揚げ、半衿、などが挙げられるでしょうか。帯周りの小物は、お太鼓結びをするのであれば帯枕なども必要になりますが、半幅帯を用いて着付ける場合には、この限りではありません。ビギナーさんですと特に、各道具の区別が上手く付かないなどの都合があるかと思いますので、これから一式を揃えるのであれば、まずは各メーカーから販売されている着付けセットの購入がおすすめ。着付けセットを購入して、他に不足しているものがあればそれを単品買いする、といった揃え方が、ビギナーさんには一番分かりやすいですし、余計なものを購入しないで済むといった観点からもおすすめです。

最低限押さえておきたい小紋のマナー

小紋を着用する際に抑えておきたい最低限のマナーは、原則的に小紋はカジュアルな日常着であり、フォーマルなシーンでは着用しないということです。小紋の種類や、帯や小物などとの取り合わせによっては、フォーマルシーンで着用できる場合もありますが、出席先が着物の格を問われるシーンなのであれば、自分で判断が付かないうちは避けるのが無難です。どうしても着用したい場合には、先方や周囲の人に確認を取るなどして、失礼に当たらないように気を付けましょう。また、小紋は秋~春の間にほぼ通年で着用できる着物ですが、生地が厚いので夏場には基本的に着用しません。熱中症対策の意味でも、夏には、夏着物や浴衣を着用するようにしてくださいね。

購入時に気を付けたいことは?

小紋を購入する際に気を付けたいポイントとしては、あらかじめ着用シーンが決まっているのであれば、その席に相応しいかどうかを確認する必要はあります。上述のように、小紋は礼装には当たらない日常着ですので、着用する予定が明確に結婚式などのTPOを問われる集まりだと決まっているのであれば、小紋の購入は避けた方が無難です。また、花や植物など四季を落とし込まれた柄は、着用時期が限られる場合もありますので、通年で着用したい場合には注意が必要です。デザイン化された草花のモチーフであれば通年で身に纏えますが、写実的な絵柄であれば着用できる期間は限られてしまいます。最初の一枚に選ぶのであれば、通年で普段着として着られる色柄を選ぶのがおすすめですが、とはいえ最終的にはご自身のお好みで選んでいただけた方が、着物を着る機会を増やそうという気持ちにもなるため、趣味として長続きするかと思います。この点は、ご自身の考え方にもよるかと思いますので、軽い参考としてくださいませ。

初めての小紋、何処で購入する?

さて、これから初めての小紋を購入する際に、具体的にどこで購入すればいいのか、どういった選択肢があるのか、下記にて具体的な例を挙げて紹介します。

通販で購入

昨今においてはインターネット通販での購入が、まずは選択肢のひとつに挙がるでしょうか。ネットショップで購入するメリットは、誰かに左右されずに自分のペースでじっくりと納得いくまで、着物を吟味出来るという点にあります。他店と価格帯を比較しながら、ゆっくりと選べるため、予算内での買い物がしやすいので、あらかじめ予算が決まっていたり、小物などを含めて購入したい品数が多い場合などにも、ネット通販は重宝します。既に欲しい着物の色柄などのイメージが具体的に定まっている場合にも、幅広い候補から選べますので通販での購入がおすすめです。逆に、ネット通販で購入する際のデメリットは、着物への基礎知識が多少は必要になるので、知識が一切ないビギナーさんには少々難しいかもしれないところと、購入前に着物の実物が見られないという点です。実際に届いてみたものがイメージと違った場合、がっかりしてしまうことにもなりますので、事前に店舗のレビューをチェックしたり、万が一には返品対応が可能なのかも、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。

店舗で購入

呉服屋さんなどの実店舗での購入も選択肢のひとつです。個人店やデパート・ショッピングモール内の着物店など、近場の何かしらの着物店に心当たりがある方も多いかと思いますので、相談しながら購入したい際には、店舗への来店が候補になります。このように、店舗購入での最大のメリットは、店員さんと相談しながら着物選びが出来るところで、予備知識が少なめのビギナーさんでも決めやすいのが、店舗購入の嬉しいところです。デメリットは、ネットショップでの購入と比較すると、一店舗の店頭のみでお品を選ぶことになるため、品数が非常に限られることでしょうか。また、店舗によって相場は様々ですので、あらかじめ予算がある程度決まっている場合には、その店舗の相場を事前に知っておきたいところです。実際に店頭に足を運んでから予算オーバーだと気付いたけれど、店員さんに勧められると断りづらい……と感じてしまう方にとっては、少々心苦しい場合もあるかもしれませんので、そういった点も加味した上で、来店を検討しましょう。

リサイクル店で購入

リサイクルショップやアンティークショップでの小紋の購入も、選択肢のひとつ。リサイクル・アンティーク店で購入する際のメリットは、ネットショップや店頭などと比較すると、安価に手に入れられる場合が多いことと、現代ではなかなか見かけないような色柄に出会えることにあります。また、総合リサイクルの店舗だと少々難しいものの、アンティーク店など着物専門のショップであれば、店員さんに相談できる場合もあり、大抵のアンティークショップには着物のベテランさんが揃っておられますので、親身になってアドバイスしてくれるのが嬉しいところでもあります。デメリットは、基本的にアンティーク着物・リサイクル着物は総じて中古品になることで、商品の見極めが初心者には少々難しいことにあります。

何を基準に選ぶ?

ここまで小紋の特徴や種類、選び方などを色々とご紹介してまいりましたが、実際に小紋を選ぶ際に何が基準になるかは、人それぞれに変わってくるかと思います。例えば、どんな色柄が欲しいのか。着物のプロの接客を受けながら選びたいのか、自分でじっくりと吟味して選びたいのか。購入前に試着や色合わせがしたいのか、現物を見てから購入したいのか。早急に小紋を購入したいのか、自分の理想の小紋をじっくり探したいのか。……などなど、希望によっても、購入時に基準となるポイントは様々に変わってくるかと思いますが、あえておすすめするとすれば、初心者さんであれば尚のこと、ある程度の基礎知識をつけた上で、ネットショップで吟味するのが、予算の上でも気持ちの面でも安心ではないかと思います。これから着物をはじめたいという方は、何かしらの憧れをもって着物の世界に飛び込む方が多いかとも思いますので、尚のこと初めての一枚は、じっくりと時間をかけてお選びいただいた方が後悔に繋がりにくいのではないかと思います。ネットショップでの購入時には、お店のレビューを参考にすると失敗しにくいので、チェックしてみてくださいね。また、購入を検討しているメーカーの実店舗が近ければ、その店舗に足を運ぶのも選択肢のひとつです。実際に店舗で相談して品物を確認できれば、安心して購入できます。また、古い着物はご自宅では洗えないものが大半ですので、洗える着物が欲しいのであれば、リサイクル着物・アンティーク着物は選択肢からは外れる場合が多いでしょう。

まとめ

小紋の着物は、着物のおしゃれ入門編として、まず最初に触れることも多い種類で、普段着として気軽に着られるカジュアルなおしゃれ着物です。着物というと着付けなどの面から、どうしても敷居が高いように感じてしまう場合もあるかもしれませんが、格式ばった伝統衣装という固い印象を一度横に置いて、普段着の小紋から手に取ってみて、気軽な気持ちで、ぜひとも着物ライフを楽しんでくださいませ。