沖縄の伝統的な染物と聞いて、何を思い浮かべるでしょう。
おそらく「紅型」と答える方がほとんどではないでしょうか。
紅型はとても色鮮やかで、南国らしい独特の模様が特徴の染物です。誰でも一度は目にしたことがあるほど、有名な伝統工芸品です。
ですが、今回は紅型ではなく、藍型という染物を紹介いたします。
あまり知られていませんが、実は沖縄にはたくさんの伝統工芸品があり、藍型もそのうちのひとつです。
「藍型って何?」
「紅型と名前が似ているけど、何が違うの?」
「藍染とも違うの?」
この記事では、藍型に関する疑問や誕生に至った歴史的背景、紅型との関係性などについて解説していきます。
藍型とは一体どういった染物なのか、紐解いていきましょう。
また、紅型に関する記事もございます。
こちらも併せてご覧ください。
この記事の目次
藍型(イェーガタ)とは?
藍型は「あいがた」と読みますが、沖縄の方言で「イェーガタ」と読むこともあります。
せっかく沖縄の染物について触れているので、この記事では藍型「イェーガタ」と読んでいくことにしましょう。
では、藍型とはどういった染物なのでしょうか。
一般的には型紙を使用して染めた沖縄の藍染のことを言います。藍型は日本本土で生産されてきた藍染同様、庶民に愛されてきた染物です。
紅型ほどの目を見張る華やかさはありませんが、深い海のように落ち着いていて、私たちを包み込んでくれるような温かさを感じられます。
沖縄の代表・琉球藍型
紅型には2種類あり、一つは私たちが一般的に連想する色鮮やかな紅型、そしてもう一つが藍型に分類されます。
つまり、紅型と藍型は種類としては同じものになるのです。名前が似ているのはこのためでもあります。
藍型は紅型同様、諸外国との貿易が発展していた14、15世紀ごろであると言われています。近隣諸国の絹織物や布製品の影響を受けながら、沖縄独自の藍染が誕生しました。やがて色鮮やかで豪華な紅型は王族や士族に、控えめで落ち着いた色合いの藍型は庶民の着物へと別れていきました。
紅型との違いは?
紅型との大きな違いは、何と言っても色使いにあります。
紅型は何色もの色を使用しとても華やかに仕上げますが、対して藍型は藍の濃淡と墨の縁取りで模様を表現します。色鮮やかな紅型のモノトーン版、といったところでしょうか。それぐらい色味がはっきり分かれており、明確に違っています。
また染め方にも違いがあります。
紅型は色を染める際、糊を伏せていないところに色を挿していく技法で染めていきます。藍型は何回も漬け込むことによって濃淡を出しながら染めていきます。
こうした染色方法の違いも、両者を分ける大きな特徴となっているのです。
藍染との違いは?
ところで、日本本土には藍染という染物がありますが、藍型と藍染は何が違うと思いますか?
と言っても、どちらも言葉が似ているので、いまいちピンと来ない方も多いでしょう。
それぞれ説明していきます。
両染めの定義としましては、
沖縄に自生している琉球藍を使用して染められたものが「藍型」
日本本土で生産されている蓼藍を使用して染められたものが「藍染」
となります。
大きな違いは琉球藍を使用しているか、蓼藍を使用しているか、というところで判断します。
ですので、沖縄は藍型、日本本土は藍染と覚えておくと良いでしょう。
琉球藍と藍型の関係
藍染と藍型の違いは上記項目で説明してきましたが、ここからは琉球藍から藍型の染料になるまでの具体的な過程を説明していきます。
藍型の美しい色合いを出すためには、さまざまな工程を経て丁寧に作業しなければなりません。
如何にして藍型の染料が制作されているのか、見ていきましょう。
原料は沖縄特有・琉球藍
藍型の原料となる琉球藍は、キツネノマゴ科と呼ばれる多年草植物です。東南アジアの原産の植物で、日本では主に沖縄県北部で栽培されています。
染め上がりの色は蓼藍で染めた物よりも赤みが強いのが特徴で、藍型独特の色合いとなっています。日本本土の藍染同様手作業で1枚1枚染めていくので、同じ色の物は一つとして出来上がりません。
また、この琉球藍で染めた布は消臭や防虫効果の効果があると言われています。沖縄では藍畑や琉球藍染めをしている工房には、ハブが寄り付かないという話まであります。
消臭、防虫効果の他に蛇除けの効果もあるとは、天然染料の偉大さを感じずにはいられません。
参考、引用 美らSUN 天然素材の布地に美しい藍色が乗る、沖縄の伝統工芸「琉球藍染め」とは!? – 美らSUN
独特な琉球藍が染料になるまで
藍の葉を染料にするには、まず藍の葉を浸水し発酵させ、色素を取り除きます。色素が沈殿すると成分がペースト状もしくはおから状のものが出来上がります。これが藍型の元となる「泥藍」と呼ばれるもので、ここからさらに変化させます。
泥藍に泡盛やはちみつなどを加えて栄養を与え、さらに発酵を進めさせるのです。やがて藍花と呼ばれる灰汁のような泡が表面に盛り上がってきたら、染液の完成です。これを「泥藍を建てる」と表現し、泡盛やはちみつの他に工房ごとに違う材料を入れるため、仕上がりに違いが出ます。
また漬け込む回数なども工房によって差が出るため、同じ藍型でも雰囲気が違うものになることが多いのが特徴です。染料を完成させるために泡盛を使用するところも、沖縄らしくてとても趣があります。これは日本本土の藍染ではできない技法です。
藍型の色合いが独特なのも、もしかしたら泡盛の影響があるかもしれませんね。
参考、引用 美らSUN 天然素材の布地に美しい藍色が乗る、沖縄の伝統工芸「琉球藍染め」とは!? – 美らSUN
琉球藍型の制作工程
染料が出来上がったら、いよいよ着物に染めていきます。
製作工程自体は紅型と同一のため、流れを簡単に説明していきます。
手順としては、
「型彫り(カタフイ)→型附け(カタチキ)→色差し(イルジヤシ)→隈取り(クマドウイ)
→糊伏せ→地染め→水洗」
この流れで進められます。
この「地染め」の工程で、制作した藍を漬け込んでいきます。
漬け込む回数や揉みこむ回数によって濃淡を表現するので、大変な手間と労力を要するとても重要な作業になります。
そうした工程を経て、やっと藍型は完成するのです。
工程の詳細は紅型の記事内でも紹介していますので、気になる方は併せてご覧ください。
琉球藍型の工房
藍型は紅型に比べると知名度も低く、工房自体も少なくなっているのが現状です。また職人不足による影響もあり、藍型は危機的状況を迎えています。
現在では琉球藍型の魅力や伝統を伝えるべく、職人でなくても藍型に触れることができる工房があります。
沖縄に構える工房をそれぞれ紹介していきますので、旅のプランに入れてみてはいかがでしょうか。
藍風
沖縄県本部町にある、琉球藍染の工房です。
敷地内に藍畑を所有しており、染料を一から作っている本格的な藍染工房でもあります。カフェも併設されていますので、体験が終わった後はコーヒーやスイーツで一息つくこともできます。
営業時間:11時~17時(藍染体験は前日までの予約必須)
定休日:火曜日、水曜日(不定休ありなので確認してから行きましょう。)
体験メニュー:お気軽コース(手ぬぐいorハンカチ)2,500円
沖縄藍染 工房
藍風https://t.co/hrHig2SoQh pic.twitter.com/IrkS3UAxxH— okinawamiyage (@okinawamiyage1) September 7, 2019
琉球藍染ちょく工房
沖縄県名護市にある工房です。こちらは自宅に併設して作られており、とてもアットホームな雰囲気が伺えます。
店主自ら製作した作品は実店舗での販売の他、オンラインでの販売も行っているので、いつでも藍型を楽しむことができます。
営業時間:記載なし(ホームページのお問い合わせ欄から問い合わせてみてください。)
定休日:記載なし(こちらも要お問い合わせのようです。)
体験メニュー:ハンカチ1,500円
おきなわワールド
おきなわワールドは、沖縄のテーマパークとしてとても有名です。沖縄旅行の際、一度は行ったことがあるという方も多いのではないでしょうか。
おきなわワールドは伝統工芸品の体験にも力を入れており、藍型も体験することができます。赤瓦屋根の古民家で体験を行うので、昔の沖縄にタイムスリップしたような感覚も味わうことができる貴重な工房でもあります。
営業時間:9時~17時30
定休日:記載がないので、確認してから行きましょう。
体験メニュー:1,300円~(詳細はお問い合わせか現地で確認してくださいね。)
沖縄おみやげ第2弾🎉
藍染に手描きシーサーTシャツが気に入りすぎて、2日後にTシャツを買うためだけに おきなわワールドに行きマングローブ染めのをゲットです😁ダンナチャンのはサイズが無くて予約注文して来た☺️#おきなわワールド #藍染工房 #Tシャツ pic.twitter.com/5HEe6EVJDc— みぃしゃん。🦊🦈 (@miixiang_darts) November 1, 2020
藍型風・紅型風って?
藍型や紅型に触れてみたいけど、値段が高価で手が出せないという方も多いのではないでしょうか。
どちらも大変手間のかかる制作工程を経て完成される伝統工芸品のため、どうしても手が届きにくい価格設定になっています。
そこで考え出されたのが藍型風、紅型風の模倣品です。
模倣品と言うと聞こえはあまり良くありませんが、もっと気軽に藍型や紅型を楽しむことができるため、より生活に取り入れやすくなるのです。本物だと高価で手が出せないけど、藍型を生活に取り入れて楽しみたいとお考えの方におすすめの商品を紹介していきます。
竺仙の藍型風浴衣
竺仙は、天保13年創業の老舗呉服店です。
浴衣の製作にも力を入れており、百貨店などで販売すると即日完売の商品も出るほど根強い人気があります。
伝統的な引き染めの技法を使用し、江戸の頃より伝わる中形の柄を染め上げてあります。また、綿紅梅に生地は独特のシャリ感があり、夏の着物として楽しむ方も多くいます。半衿を合わせて夏着物風に着れば、ぐっと粋になること間違いなしです。
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琉球藍型風の浜松注染浴衣
こちらは伝統的な伊勢型紙を使用した藍型風浴衣です。
浜松地方の染色方法である注染染めで藍型風に仕上げた、いわば各地のいいところどりをした、ある意味贅沢な浴衣となっています。
白地に紅型風の流水模様がとてもさわやかで、年代を問わずお召いただけます。
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手拭いや小物も
もっと気軽に楽しみたい方には、手拭いがおすすめです。
ハンカチの代わりや食事用のナプキンなど、幅広く使用できる手拭いは何枚か持っておきたい生活の必須アイテムです。
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手拭いはもうたくさん持っているという方には、藍型風バッグをおすすめします。
涼しげな色合いのバッグは、夏の装いのアクセントとして活躍してくれることでしょう。この夏は是非取り入れてみてはいかがでしょうか。
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まとめ
藍型は紅型と同種類であることを説明しました。ですが、琉球藍を使用した染色方法は唯一無二であり、一つの独立した染物と言っても過言ではありません。
日本本土の藍染とは違う美しさをもった藍型は、沖縄でしか出会うことのできない貴重なものとなっています。(オンラインショップ等で手軽に入手できる時代にはなりましたが…)
また気軽に楽しめる藍型風の小物もたくさんあるので、是非日常に取り入れて沖縄を楽しんでみてはいかがでしょうか。