着物ができるまでのまでの製造工程をわかりやすく解説

着物ができるまでのまでの製造工程をわかりやすく解説

成人式や学校の卒業式、結婚式など人生の大きなイベントで着ることの多い着物。でも、着物ってどうやって作られているのか気になりませんか?そこで、この記事では着物ができるまでの流れを紹介します。

着物の製造工程全体

「着物」と一口に言っても種類は様々。そのため製造工程も種類ごとに違いがあります。

糸を作る

着物で使われる糸は「生糸(きいと)」「紬糸(つむぎいと)」「木綿」「麻」「ウール」など様々な種類があります。
成人式や結婚式など、正式な場の装いに使われるのは「生糸(きいと)」でできた正絹と呼ばれる生地です。生糸は蚕(かいこ)が作り出した繭を糸にします。1つの繭から引き出す糸は非常に細いため、数個の繭から糸口を引き出し、撚り合わせて1本の糸として使います。
ただ、全ての繭が生糸になるわけではありません。毛羽立っていて生糸にするのに不向きな糸は真綿と呼ばれる綿に加工され、紬糸の原料になります。紬糸で織った生地は丈夫で、普段着として着回しやすいのが特徴です。他の「紬糸」「木綿」「麻」「ウール」もカジュアルな装いの着物によく使われます。

生地を作る

着物は染めるタイミングによって、2種類に分けられます。まずは「染め」と「織り」の違いを見てみましょう。

染め 白布に織ってから、染色して絵柄をつけるする。後染めとも呼ばれる。
織り 糸を染色してから、糸の色の違いで模様を出す。先染めとも呼ばれる。

「染めの着物」は織りの着物よりも、格が高いのが特徴です。振袖や訪問着に使われます。一方「織りの着物」はカジュアルな着物として使われるのが一般的です。

反物(たんもの)を作る

出来上がった生地は、一度「反物」と呼ばれる、一本の長い布の状態にします。筒のような細長い棒に巻かれて、巻物のような状態にされます。

着物に仕立てる

反物を着物として着られる状態にします。その人の寸法に合わせて生地を裁断し、縫い上げます。

着物に使われる糸について

着物に使われる糸には、主に以下のような素材があります。
・生糸(きいと)
・紬糸(つむぎいと)
・木綿
・麻
・ウール
ナイロンやポリエステル、レーヨンなど化学繊維でできた着物も増えていますが、基本的には上記のような自然繊維がほとんどです。また、着物は使われる糸によって、格や価格が変わってきます。この中で、格や価値が最も高いのは「生糸」です。
糸の太さも素材によって異なり、テックス、番手、デニールと言った単位を用いて糸の太さを表します。

絹の材料になる生糸

蚕(カイコ)の繭を原料にした糸です。光沢があり、フォーマルな場面で使われることが一般的です。蚕は成長の過程で、身を包むために球状の繭を作ります。蚕が羽化する前に、繭のみ取り出し糸にしていきます。
また、この生糸を説明するときに「綛(かせ)」や「捻(ねじり」といった糸を表す単位が使われます。
もっとも小さい単位が「綛(かせ)」です。3~6綛ほど合わせてその綛をまとめた綛の束を「捻(ねじり」といいます。
また、絹糸の太さを表す単位には「デニール」もあります。しかし、絹糸はとても細いため糸の直径ではなく、一定の長さに対する重さを基準にしています。長さ450mの重さが0.05gあるものを1D(1デニール) と決め、同じ長さで0.1g(0.05g×2)あれば2Dとしました。

真綿から作られる紬糸

「真綿」と言われますが、実際には、綿から出来ているわけではありません。紬糸(つむぎいと)は生糸と同じく蚕の繭を原料にした糸です。生糸が細く、長い糸を撚り合わせて、作るのに対し、紬糸は絡まった短い糸を引き出して作られます。生糸の艶のある質感に対して、紬はややマットでふんわりとした質感が特徴です。代表的な紬の着物では、「大島紬(おおしまつむぎ)」「牛首紬(うしくびつむぎ)」「結城紬(ゆうきつむぎ)」が挙げられます。
紬糸の太さを表す単位には、生糸と同じ「綛(かせ)」や「捻(ねじり」に加え、「玉」が使われます。捻をまとめたものが玉です。大きさとしては「綛(かせ)」<「捻(ねじり」<「玉」になります。

綿から作られる木綿や麻

綿はコットンとも呼ばれ、綿花を原料にした糸です。軽く柔らかな生地を作ることができます。また、カジュアルな着物に適しているため、着物が初めての方でも手に取りやすいのが特徴です。
また、麻は苧麻や亜麻などの葉や茎、皮などの植物繊維から作られます。速乾性や吸水性に優れているのが特徴です。肌触りがサラッとしているため、夏の着物によく使われます。
糸の太さを表す単位には、生糸と同じ「綛(かせ)」や「捻(ねじり」、「玉」、「デニール」が使われます。

羊の毛から作られるウール

ウール作り出されます。動物性繊維で保温性に優れており、秋・冬・春の装いに使われます。シワになりにくいため、お家で洗濯できる着物が多く、普段着用に最適です。
また、ウールには紡績の仕方によって「梳毛糸(そもうし)」と「紡毛糸(ぼうもうし)」の2つに分けることが出来ます。梳毛糸は短い羊毛を取り除いて紡績します。そのため太さが均一でなめらかな風合いになります。一方、紡毛糸は短い羊毛はあえてそのままにして紡績します。仕上がりはふんわりしており、保温性が高い生地になります。
さらに「単糸(たんし)」、「双糸(そうし)」という分類もあります。「単糸」は繊維を紡績し作り出された1本の糸のことです。仕上がりはソフトな質感になります。一方、「双糸」は単糸を2本撚り合わせた糸のことです。生地になるのに対して、「双糸」は耐久性があり、適度な光沢感があります。
糸の太さについては、1gあたりの長さで表します。「1/1」なら1g=1mと読みます。

「染め」と「織り」について

前述した通り着物は製造する過程で、どのタイミングで染めるかによって着物の種類が大別されます。タイミングが早い方を「織り(「先染め」とも)」、タイミングが遅い方を「後染め(「染め」とも)」と言います。
製造工程そのものに違いがでますが、価格や着物としての格が違うため、選ぶ際には注意が必要です。また「染め」と「織り」それぞれに、沢山の手法があり、地域ごとに特色があります。
「染め」は先に白い布を織ってから色を付け、その上から柄や模様を描きます。そのため、色彩豊かで細かな絵を書けるため、織りよりも表現できる幅が広いのが特徴です。
「織り」の着物は、あらかじめ染めた糸を使って、布を織ることで柄や模様を出します。織りの特徴は糸からしっかり染まっているため、色味が深いこと、色落ちがしにくいことです。着物であれば比較的安価で格は低くなりますが、帯の場合は逆に、高額になり格は上がります。

白生地を染める「染め」

染めの歴史はかなり古く、日本では、縄文時代から行われていたと考えられています。染色技術が飛躍的に発展したのは江戸時代からで代表的な染めの種類を紹介します。

・手描き染め

・型染め

・絞り

・手描き染め

筆を使って、着物に模様を描き染める技法です。華やかで、繊細な表現になります。

また、手描き染めの中で、最も有名なのが「手描き友禅(てがきゆうぜん)」です。本友禅とも呼ばれます。繊細な絵柄が特徴で、一つ一つ筆で描いていきます。糊を使い隣り合う色同士がにじまないようにし、地の色と模様を美しく染め分ける技法です。輪郭にのりを塗ることで隣同士の色が混ざることなく、一色一色の区別が細かく、はっきりした鮮明な染めが生まれます。また、この「手描き友禅」の中でも人気が高いのが「加賀友禅(かがゆうぜん)」で、写実的な模様や落ち着いた色合いが特徴として挙げられます。

・型染め
模様が切り込まれた型紙を用いて染める技法です。制作に時間がかかるため、この技術が生まれたとされています。型染めの代表的なものには「小紋」があります。小さな柄を生地全体につける染め技法で、柄が細かいほど格が高く、礼装にも用いられます。

・絞り
生地を糸や板でくくりつけて、その箇所が染まらないようにした後、染料で染め上げる技法です。絞り染めの代表的なものとしては「鹿の子絞り」があります。着物だけでなく、帯揚げや小物にも使われる技法です。

色を染めてから織る「織り」

糸を染めてから織るので「先染め」とも呼ばれます。縦糸と横糸を織り合わせて作ります。染めの着物と比較すると、織りはカジュアルで普段着や軽いお食事に行く際に使われます。主に以下の素材があります。

・御召(おめし)
正式には「御召縮緬(おめしちりめん)」と呼ばれます。御召(おめし)の着物は、「高貴な方がお召しになる」ことから名がつけられました。生地の表面にちりめんが入っており、「シボ」と呼ばれる細かな凹凸が特徴です。織りの着物の中では、最も高級な着物にあたります。

・紬(つむぎ)
素朴で落ち着いた風合いが特徴の生地です。蚕の繭を原料にした糸を使用します。江戸時代に、それぞれの町や村にある養蚕農家で商品化できない繭糸を使って、仕事着や野良着として織られたことに始まります。世界一緻密な織物と呼ばれており、現在では、普段着よりも、おしゃれ着として使われる場面多いです。

また、紬の中でも有名なのが「大島紬」で、世界三大織物に数えられるほどの歴史を持っています。鹿児島県南方にある奄美群島の織物で、緻密な染めと織りの技術で知られています。

・木綿
その名の通り、綿からできた生地です。着物で木綿を使う場合、絹と比べると生地が重く厚いので、単衣(ひとえ)に仕立てるのが一般的になります。違う色の糸を使って規則的に織りだす、縞や格子といった柄が多いのが特徴です。

・麻
通気性や吸湿性に優れた生地です。質感はやや固めですが、汗をかいても肌に張り付きにくいので、夏でも涼し着れます。

また、織りにも様々な種類の織り方があります。主に以下の3種類です。

・平織り(ひらおり)
縦糸と横糸を1本ずつ交互に浮き沈みさせて組む織り方です。非常に単純な構造なので、着物に限らず広く使われています。平織りで織った着物は通気性が良く夏用の着物に使われる場面が多くあります。

・綾織り(あやおり)
2もしくは,3本の縦糸を取り、1本の横糸に浮き沈みさせて組む織り方です。平織りと比べて耐久性が低いものの、生地が厚くなるので、冬物の着物にぴったりです。

・繻子織り(しゅすおり)
朱子織(しゅしおり)と呼ばれることもあります。縦もしくは横糸が5本以上で構成された織り方です。一方の糸がほとんど表に出てこないのが特徴です。光沢が強く出るため、なめらかな質感になります。

・捩り織り(もじりおり)
横糸を縦糸が縛るようになる織り方です。糸同士の隙間が大きくなるので、通気性が良く軽い生地になります。夏物の着物である羅(ら)や紗(しゃ)、絽(ろ)に使われることが多いです。

反物(たんもの)について

反物とは着物として仕立てる前の、長い布地のことを言います。反物自体は一反もしくは一本と数えられるのが一般的です。通常、大人用の着物1着を作るのに必要な、生地が一反(いったん)と呼ばれます。例外的に、「胴裏(どううら)」「八掛(はっかけ)」「帯地(おびじ)」などといった一反に満たない短いものも反物と呼ばれています。

反物の用途

着物は全てすぐ着られる状態で小売販売されている訳ではありません。着物として完成された状態で店に並べられているのは「留袖」「振袖」「訪問着」のみです。それ以外は、反物として着物を仕立てる前段階の布を巻物のように巻いて販売しています。

反物のサイズ

着物は着る人によって必要な生地の長さは変わります。そのため、同じ一反でも幅や長さは種類によって様々です。
小紋などの普段着る着物は、幅9寸5分(約36cm)で、長さ3丈(約12m)です。これを「三丈物(さんじょうもの)」といいます。
また、色無地や喪服用の場合は、八掛がついてくるので長さ4丈(約17m)が必要です。これを「四丈物(よんじょうもの)」といいます。

反物と着物の種類

着物の分類にはいくつか種類がありますが「仕立て」の観点からも分けることが出来ます。それが、袷(あわせ)と単衣(ひとえ)の2種類です。
袷とは、生地を二枚縫い合わせた裏地のある着物です。 一般的には、10月~翌年5月ごろの肌寒い時期や、振袖、訪問着、色無地、留袖などの礼装用の着物に使われます。
一方、単衣とは、生地を1枚だけ使った着物を指します。裏地がついていないので、袷よりも軽く、夏など暑い時期に着ることが一般的です。また、普段着として扱われるので、フォーマルな場では着用できないので注意しましょう。

まとめ

この記事では着物の製造工程を紹介しました。着物ができるまでの工程では「織り」と「染め」で着物の種類が大きく分けられます。織りと染めでは、格が違うので、着物を選ぶ際には目的に合わせて選ぶことが重要です。
製造業から日々たくさんの着物が出ていますが、どれも様々な工程を経て、ようやく一着が完成します。着物の製作について知ると、より感慨深く着物を着ることができるのではないでしょうか?