和装小物

2021.10.29

和装小物の種類、着物との合わせ方をやさしく解説

和装小物の種類、着物との合わせ方をやさしく解説

着物を着る際には、着物と帯以外に色んな種類の和装小物が必要です。

しかし、「色々ありすぎて何から揃えたらよいのかわからない!」そんな方が多いのではないのでしょうか。ここでは基本的な小物と、各用途を紹介していきます。基本の知識をおさえられれば、手に入れる優先順位がつけられ、ゆっくり買い足していく楽しみが得られます。

着物を美しく着こなすにはまず、基本の知識を得ていきましょう。

着物と合わせる和装小物一覧

着物を着て話す女性

着物を着る際には、着物と帯以外にも様々な小物が必要になります。

外側から見える帯締めや帯揚げは全体のコーデイネートに欠かせない役割となり色合わせの楽しさを私たちに与えてくれます。

内側の小物は身体を補正し、着物の着崩れを防ぐ影の役割を果たしてくれます。

和装小物を上手に選ぶことで、着物ライフをめいっぱい楽しめるよう、どんな小物がどんな用途で使われるか覚えていきましょう。

半衿|基本は白。衿もとを彩る重要小物

半衿とは、長襦袢のに付ける取り外しができる衿です。半衿を付けることで皮脂や汗が直接長襦袢に付かず、こまめに手入れすることができます。また、衿元を彩る重要な役目も果たしています。

基本は白で、着物に合わせて素材を変え、衿元でも季節やグレードを演出します。塩瀬(10月~5月下旬)、絽(6月~9月下旬)、縮緬(11月中旬~2月中旬)の3種類の素材の半衿があれば、どの季節のどんな着物でも大体合わせることができるでしょう。また、白の半衿以外に様々な柄や素材の「色半衿」があり、着物と合わせて楽しむことができます。

最近では洋服の生地やスカーフなどを半衿にリメイクして楽しむ方も増えており、自由度の高い小物の一つです。

伊達袴|着物の地色や帯揚げ、帯締めの色と合わせて

伊達衿とは、着物の衿の下に入れ、重ね着をしているように見せるダミーの衿のことです。着物を多く着ているように見せることで、着物の格を上げたり、華やかな印象を与えることができます。

基本的にはフォーマル、セミフォーマルの着物に使いますが、カジュアルな染めの着物を着る際、衿元のおしゃれとして使うこともあります。

伊達衿の素材は塩瀬、縮緬、綸子、羽二重などがあり、無地や地紋入りのものが多いです。

伊達衿の色を選ぶ際には、着物や帯の柄から取ると美しくまとまります。帯締めや帯揚げのどちらかと同系色にするというのも良いでしょう。

帯揚げ|帯の形を美しく整える小物。着物の格と合わせて

帯揚げとは、帯の上に巻かれた薄手で柔らかい布のことです。成人式の華やかな縮緬の帯揚げが印象深い方も多いのではないでしょうか。

基本的に帯は帯枕で膨らみを作り、それを帯揚げを用いて身体に固定します。帯枕は帯の形を美しく整える重要な和装小物の一つで、省略することはできません。絹素材が多く、絞りのほか綸子(りんず)や縮緬があり、着物の生地質に帯揚げを合わせるとよいとされています。薄色でなじませたりアクセントとなる色を選び引き締めるなど、全体のバランスを作る重要な和装小物です。

帯締め|帯の型崩れ防止小物。帯揚げと調和させて

帯締めは帯を身体にしっかり固定し、なおかつコーディネートのアクセントになる重要な役割を持っています。帯筒状の丸くげと組紐の2種類があり、一般的に使用するのは組紐が多いです。組紐は平打ち、丸打ち、角打ちの3種類があり最も使用が多いものは平打ちです。初心者でも帯締めをしっかり締める練習になるので、まず最初は平打ちを手に入れることをおすすめします。

帯締めは着物と異なり、季節を越えて身につけることができますが、夏は涼しげな装いが好まれるので厚みや色に気を配り全体コーディネートがまとまるように心がけましょう。

色を選ぶ際は、帯揚げや衿小物との相性も考え、帯の補色や同系色などがよいとされています。

帯留め|帯締めを彩る装飾小物。TPOに合わせて

帯留めとは、帯の中央部分に帯締めを用いて付ける装飾品です。帯留めなしでも着物は着ることができますが、あると一層華やかでコーディネートのアクセントとなります。帯留めを付ける際は帯締めは三分紐と呼ばれる平たく細くシンプルなものにして帯留めを引き立たせましょう。

帯留めは装飾の意味合いが強く、今では浴衣に合わせて楽しむ方も増えています。ブローチやアクセサリーを帯留めにリメイクすることもでき自由度の高い和装小物となっています。

バッグ|着物・帯の格に合わせて小ぶりのもので

和装バッグは、礼装用と普段用のものがあります。礼装用の和装バッグは着物と帯の格に合わせ、小ぶりなものを選びます。草履の素材感や色味を合わせトータルバランスを整えることが重要です。草履と同じく金・銀・白系のバッグがどの着物にも合わせやすく重宝します。普段用の着物を着る際、バッグは比較的自由度高く選ぶことができますが、レザーやカジュアルすぎるものは避けましょう。

洋装のバッグを持つことも可能です。着物や帯とのトータルバランスでバッグの色や素材を選びましょう。

草履|踵の高さ、台や鼻緒の高さで選ぶ

着物で外出するためにかかせない草履。草履にはフォーマル用と普段用の区別があり他の小物と同様に、着物との調和が重要です。

礼装時の草履はバッグと同じく金・銀・白を基調にしたものを選び、コーデイネート全体の格を合わせましょう。

普段用の草履は、色柄の付いたものまで比較的自由に選ぶことができます。

また、草履のかかとの高さは、礼装用には5cm以上、カジュアルな装いには5cm以下が目安となっており、かかとが草履から1cm出る着姿が美しいとされています。外出先で足が痛くなりにくい草履を選ぶこともポイントの一つです。

足袋|4枚こはぜならどんな着物にも

着物の足元に欠かせない足袋ですが、基本的にしわがなく足にぴったり合っている状態が美しいとされています。足首についている「こはぜ」と呼ばれる金属で足にフィットさせ「こはぜ」の枚数で足首の高さを決めます。その中でも4枚こはぜの足袋を選ぶとどんな着物にも合わせることができ重宝します。

足袋は白の綿が基本ですが、最近では化学繊維の洗濯しやすいものも多く出ています。カジュアルなスタイルには、レースや別珍、色柄ものの足袋を選ぶこともでき、足元のおしゃれを楽しむ方が増えています。

肌着|肌触りが良く、丈夫で吸湿性の高いものを

着物を着る際、長襦袢の下に着物用の肌着を着ることで、汗や皮脂から着物を守ります。肌襦袢と呼ばれ、上下に分かれた2分式のものと、上下に分かれていないスリップタイプのものがあります。上半身部分は吸湿性の高い綿素材、下半身部分(裾よけ)は足さばきの良さを考えてサラサラした素材がよいとされています。

基本的に丈夫で吸湿性の良いものを選ぶようにしましょう。

長襦袢|着物の下に着る小物。着丈に合わせたもので

長襦袢は、肌襦袢と着物の間に着る肌着で、着物が肌に直接触れることを防ぎます。衿部分に半衿を縫い付け、着物の衿元から重ねて見せます。着物の袖や裾からも長襦袢をのぞかせるため、隠れたおしゃれを楽しむ重要なアイテムです。

長襦袢は基本的に白があれば大抵の着物は合わせることができます。

長襦袢にはシルク、化学繊維、木綿、ウールなど様々な素材がありますが、お手入れのしやすい化学素材を選ぶ方が多くなっています。衿部分には衿芯を挿し込めるため、張りを持たせ着崩れを防ぐことができます。

扇子|用途に合わせて種類を選んで

主に、フォーマルな場での必需品に「末広」と呼ばれる扇子があります。帯と帯板の間に挟み末広の端が見えている状態が正式な着姿です。挨拶時に手に持つだけで広げることはありません。末広は骨が黒塗りで、金や銀の地紙のものが一般的です。末広以外では舞台用や茶道用、納涼のための「夏扇子」と呼ばれるものなど様々な扇子があります。

夏扇子は1年中持つことができ、あおいで使ってもかまいません。

素材は紙扇子・刺繍扇・布扇子・絹扇などがあります。

着物ごとに必要な和装小物

和装小物それぞれのアイテムを解説しましたが、いざ着物を着ようとするとどの小物が必要なのかわからないこともしばしば。一覧表を作成したので、自分が着る着物にはどんな小物が必要なのかチェックしましょう。

◎:必須
◯:準必須
△:必須ではない/人による
×:不要
結婚式 成人式 新郎新婦の母
・親族
結婚式親族・仲人
・結納・お茶会
披露宴、入学式・卒業式、お茶会・パーティー お葬式 (3つ紋・1つ紋)訪問着同様のシーン
(紋なし)カジュアルなシーン
外出 街着・普段着 街着・普段着
礼装 礼装 礼装 準礼装 準礼装 準礼装 セミフォーマル/カジュアル カジュアル カジュアル カジュアル
打掛
白無垢、色打ち掛け
振袖 留袖 訪問着 付け下げ 色無地(5つ紋) 色無地 小紋 絣・紬・木綿
・黄八丈・ウール・銘仙
浴衣
見えない 和装ブラジャー
ヒップパッド
ウエストパッド
肌襦袢
襦袢
半衿
コーリンベルト
伊達巻
帯板
帯まくら ×
外装 着物
伊達衿 × ×
帯締め
帯留め × × ×
抱え帯 × × × × × × × ×
扇子/末広
筥迫 × × × × × × × ×
懐剣 × × × × × × × ×
和装バッグ
足元 足袋 ×
草履・下駄
着るときには
必要ないもの
着付けクリップ
着物ハンガー

結婚式・披露宴で着物を着る際に必要な和装小物

結婚式・披露宴を着物で出席する場合、着物の種類に気をつけなければいけません。

新郎新婦の親族や仲人は黒留袖、未婚の親族や姉妹は振袖が適しているとされています。

また友人として参列する場合、振袖・色留袖・訪問着を着ることができますが、会場の規模や雰囲気に合わせて、着物や帯を調整することがマナーとなっています。小規模なハウスウエディングでやカジュアルなパーティーでは自由度の高い小紋で出席される方も増えています。

いずれにしろ、全体の雰囲気を事前に調査し着物や小物の格を合わせることがポイントです。

入学式・卒業式で着物を着る際に必要な和装小物

入学式や卒業式に出席する際、一般的に訪問着の着用が望ましいとされています。

また、訪問着以外では付け下げや色無地を着用することができますが、留袖・色留袖は格が高く豪華過ぎてしまう恐れがあるので着用を避けましょう。

主役は子供ですので、派手すぎる着物は避け格を揃えた帯を選びます。

長襦袢・半衿は白で統一し、目立たない品格を保つことがルールとされています。

着物の裾は長く草履を脱ぐと引きずってしまいますので、ヒールのあるスリッパを持参することをおすすめします。

成人式で着物を着る際に必要な和装小物

成人式は一般的に未婚女性の第一礼装である振袖を着用します。振袖は身体に膨らみをもたせた着姿を目指し若々しさを演出します。身体の補正をしっかり行うため、補正パッドやタオル、綿、ガーゼなどの小物が多めに必要となります。

また、着物・帯だけでなく、伊達締め、帯揚げ、帯締め・髪につけるかんざしや髪飾りなども振袖特有の豪華な小物を選ぶ必要があります。

基本的には着物の柄の色を帯や小物に使用するとよいとされています。

浴衣を着る際に必要な和装小物

浴衣は最もカジュアルな着物ですので、長襦袢・帯揚げ・足袋などが省略されます。涼しげな印象を周りに与えるよう、衣紋は大きめに抜き、くるぶしがでる程度に裾は短くします。

また、半幅帯と呼ばれる通常より狭い帯を合わせます。

一般的にバッグは巾着やカゴの小さめのものを選び、下駄を裸足で履きます。

近年では、浴衣に長襦袢や帯留めを取り入れ、「着物風」に着こなす方や、本来子供が付ける「兵児帯(へこおび)」を選ぶ方が増え着こなしの自由度がとても高くなっています。

告別式・通夜・法事で着物を着る際に必要な和装小物

喪の装いには、黒無地に黒の帯を合わせ、帯揚げ、帯締めなど全て黒で統一します。長襦袢・半衿・足袋のみ白を用います。

セットで販売されていることが多く、帯枕や帯板、コーリンベルトに至るまで小物は全て黒となっています。

バッグは金属が目立つものや革は避け、洋服の喪服とも兼用できるものがよいでしょう。バッグ、草履とも光る素材のものは避け、マット仕上げのものがおすすめです。

パーティ・お茶会で着物を着る際に必要な和装小物

格式の高いパーティーやお茶会には、色留袖や訪問着、色無地、振袖に古典柄の袋帯を付けます。和装小物は基本的に同じですが、お茶会には扇子・出し袱紗・懐紙・菓子切りの持参が必要となります。

また、パーティーやお茶会の際には着物に合った髪飾りをつけ、装いをより華やかに演出します。

お祝いの場で足袋の汚れは厳禁ですので、足袋カバーを履いて行くか、もう1枚足袋を用意して出掛けます。

荷物が多くなりサブバッグが必要な場合は、紙袋は避け、装いに合う華やかな布製のバッグか縮緬の風呂敷を用意しましょう。

そのほかあると便利な和装小物

着用シーン別に和装小物の必須アイテムをご紹介しましたが、ここではあると便利な和装小物を紹介します。

より着物を楽しむために余裕があれば用意したい小物です。

コーリンベルトと伊達締めが一緒になった伊達締めです。襟元を固定するのに適しています。

シャーリングの伸縮があるので、初心者でも着付けしやすいです。

防寒になるストッキングです。

和装ブラジャー

着物は身体を寸胴に着付けることが美しいとされているため、ボリュームのある胸は和装ブラジャーで平たく補正します。ボリュームのない方は何もつけないか、ナイトブラなどワイヤーのない下着を選んでもよいでしょう。

基本的には吸湿性の高い綿系素材、色は着物に透けにくい白や肌色がよいとされています。

帯まくら

帯まくらは、帯の山を作るため着付けに欠かせない和装小物です。大きすぎず小さすぎない標準サイズのものをまず一つ手に入れましょう。好みや結びたい帯型によってロング、薄型、蛤型など使い分けをします。

ウレタン素材の適度な硬さがある帯枕が一般的で、帯揚げから色が透けるので、薄色の無地が無難とされています。

帯板

帯板は、帯の下に入れしわが寄らないようにする和装小物です。帯板の高さは10〜15cmが多く、カジュアルな装いには短めの幅、フォーマルな装いには脇まで回りこむような長めの幅が一般的です。後ろ部分がゴムベルト付きの帯板は、初心者の自装に便利です。

夏はメッシュの帯板を選ぶと涼しく着物や浴衣を着ることができます。

ヒップパッド

着物は寸胴に見せることが美しい着姿とされているため、胸やウエスト、ヒップのデコボコをなくし筒状の身体に補正します。ヒップパッドには、ヒップ上部分の背骨のくぼみを埋め、背中からヒップにかけて身体を補正する役割があります。

タオルで代用することもできますが、ヒップパッドを使用すると、より着崩れにくいです。

ウエストパッド

帯周りをすっきりさせるには、身体を寸胴体型に補正することが大切です。ウエスト部分はただ凹んでいるだけでなく、胸の膨らみからのつながりや、腰骨の出っ張りがあるなど補正が難しい場所です。タオルやウエストパッドでしっかり補正を行うことで帯を美しく巻くことができます。

ウエストパッドは柔らかいタオル地などで、自分の身体を補正できる厚みのものを選びましょう。

帯下は布が重なるので、通気性のよいコットン地がおすすめです。

ウエストパッドだけで馴染まない場合はタオルを足して調整しましょう。

着付けクリップ

着付けクリップは、着付けをする際に必ず必要です。長襦袢と着物の衿を仮止めしたり、帯を巻きつける時に一旦はさんだりなど役割が多いので、3〜5個準備をしましょう。

また、外出先のトイレで裾や袖を留めることもできます。

きものハンガー

着物を着た後は、ほこりなどが着物に付着しています。

すぐに畳まず着物ハンガーに着物をかけ、ほこりや裾の汚れをタオルなどで払いましょう。

その後、着物の汚れがないか全体をチェックし2〜3時間体温を抜いてから畳みます。

着物ハンガーは自分の裄丈の2倍の長さと、耐久性が必要です。伸縮式の着物ハンガーは様々な裄丈に合わせられ、収納の際は小さくなるので非常に便利です。

コーリンベルト

コーリンベルトは着物を着る際に使用する和装小物です。下前と上前を両端のクリップで留め、両端が引き合うので着付けが非常に安定します。コーリンベルトは必ずしも必要ではなく、様々な着付けの方法がある中でのひとつです。

クリップ部分がプラスチックのものは劣化して割れる可能性があるので、金属がおすすめです。

まとめ

着物を着て茶道をする女性これまで、多くの和装小物や着こなし方を紹介してきましたが、基本でおさえるアイテムは大きく変わりません。

基本の着こなしや場面でのマナーを学び、その上で自分らしくカスタマイズした装いにステップアップしましょう。