着物の種類

2022.8.31

ウール(毛)の着物は洋服感覚で着られる?歴史や見分け方、流行のシルクウールとは

ウール(毛)の着物は洋服感覚で着られる?歴史や見分け方、流行のシルクウールとは

ウールとは?

ウールと毛の違い

ウールと毛の違い

一般的に、ウールは「羊毛を使用した織物」、「毛」は羊だけでなく、アルパカやカシミヤヤギなどの動物全般の毛織物を指します。
いずれも化学繊維とは異なる、動物の毛ならではのぬくもりが特徴です。

ウールの見分け方

ウール着物の特徴として、
・手触りがゴワゴワしている
・シワになりにくい
・保温性が高く、あたたかい素材
・単衣仕立てであることが多い
などが挙げられます。

動物の毛を使用しているため、ウールには毛羽立ちがあり、肌に触れるとゴワゴワ、チクチクとした感触です。化繊(ポリエステルなど)の着物はサラサラ、あるいはツルツルしたものが多いので、ウールの質感とはかなり異なります。

また、木綿はウールよりもシワになりやすく、麻はどちらかというと風通しが良くて涼しい素材です。

さらに、ウール着物の多くは単衣仕立てなので、そこも見分けるための大きなポイントです。「単衣仕立て」とは、裏地がまったくない、あるいは一部(居敷当て)のみしかついていない仕立て方のことです。

そして、素材を見分ける最終的な手段は「燃やしてみる」という方法です。

例えば、木綿や麻は早く燃え上がり、ふわっとした灰が残ります。
化繊はゆっくりと燃え、燃えかすが糸のようになってほとんど残りません。
ウールは、動物性たんぱく質でできているため髪の毛が燃えたような独特のにおいがして、ゆっくりと燃えて炭のように真っ黒な灰になります。

糸の切れ端や余り布があれば、火をつけて燃やしてみることでより明確に見分けることができます。
燃焼実験をする際は、火の扱いに十分注意して行ってください!

ウールの見分け方

着物におけるウールの歴史

明治時代に西洋から伝わる

江戸時代まで日本では羊毛工業が発達しておらず、南蛮貿易によって羊毛を輸入するしか入手方法がありませんでした。
明治時代に入り、洋服の需要が高まった影響で毛織物工場が開設され、ウールが広く出回るようになったのです。

昭和に大流行したウールのアンサンブル

時代が進むにつれ、安くて手軽な洋服を選ぶ人が増え、着付けに手間がかかる上に値段の高い和服を着る人はだんだん減ってきてしまいました。

しかし、そこで昭和時代に流行したのがウールのアンサンブル着物。
ポップで可愛らしいデザインのものも多く、カジュアルかつリーズナブルに着られるウール着物が大人気となりました。

「ポーラ」という、今はほとんど作られていない夏向けのウールが流行したのもこの頃です。

特に、着物と羽織を同じ布で仕立てた「アンサンブル」は、昭和の定番スタイルとして広まりました。
当時は戦時中で質素倹約が重視されたこともあり、羽織の丈が大正時代や現代よりも短く(昭和丈とも呼ばれる)、腰くらいまでの長さしかありませんでした。羽織丈を節約した結果、アンサンブルの反物が広く浸透したという背景があるのです。

新たな火付け役『シルクウール』

そして、最近のウール製品に多いのが「シルクウール」。

羊毛に絹糸を交ぜて織り上げた素材で、ウールよりもざらつきが少なく、光沢があり高級感が演出されます。
カジュアルさとドレッシーさの融合により、人気の素材となりました。

新たな火付け役『シルクウール』

普段着物におすすめ!ウールの特徴

ウール着物の長所

ウール着物を選ぶ最大の利点の一つは、ずばり、お手入れがしやすいことです。
ウールは人間の髪の毛と同じく、表面にキューティクルの薄い膜があり、汚れが付きにくくなっています。洗濯機で洗うこともできるので、汚れやにおいが気になる場所へのおでかけにも安心です。
また、丈夫で弾力のある素材のためシワになりにくく、熱や湿気を伝えにくいので多少の暑さ・寒さにも対応できます。

ウール着物の短所

ウール素材は動物の毛を使用しているため、虫食いが発生しやすいのが難点です。
また、ゴワゴワ・チクチクする肌触りは好き嫌いが分かれるところであり、敏感肌の方や赤ちゃんが触れる場合には注意が必要かもしれません。

ウール着物のお手入れ・保管方法

ウール着物は、ご自宅でのお手入れが可能です。
着物用洗濯ネットを用いて、洗濯機の「おしゃれ着洗い」コースで洗うか、中性洗剤を使って手洗いで汚れを落とします。

ただし、シルクウールは絹糸が交ざっているため、着物洗い専門店かクリーニング店にてお手入れを行います。

さらに、虫食い対策として、絹ものとは場所を分けて保管し、防虫剤を置くことをおすすめします。
危険な化学反応を防ぐため、防虫剤は複数種類を混ぜて使わないよう注意が必要です。樟脳など、においが強いものもあるので、気になる方は無臭のものを選ぶようにしましょう。

着物におけるウールの種類

ウール

「ウール」と一口に言っても素材の種類はさまざまですが、一般的には保温性が高く、しっかりとした生地感のものが多いです。
特に冬は体温を逃がしにくく、ほっこりとした質感であたたかそうな見た目が重宝します。

サマーウール

「サマーウール」は、英国基準で夏向きとされているウールのことです。通常のウールよりは薄い素材で、サラリとして汗を吸いやすいため、暑い時期の着用に向いています。
とはいえ、あくまで「英国基準」なので、日本の夏に着用する際は特に透け感の強いものを、猛暑日を避けて着るなどの心掛けが必要です。
夏向けの男性用スーツのようなイメージで、初夏や9月頃などのやや暑さが気になる時期に着るのがおすすめです。

シルクウール

絹をタテ糸に、ウールをヨコ糸に使って織り上げた「シルクウール」は、ウールの気軽さにシルクの光沢と上品さを掛け合わせたような素材。
ちょっとしたイベントやカジュアルパーティーにも着用できる、オールマイティな表情が魅力です。

ウールの着物の代表と特徴

西陣ウール

国内最高峰と言われる、和装の本場・西陣のブランドによるウール着物。
織りや風合いの品質は抜群で、現在も毛織物を扱っている数少ないメーカーの一つです。

浜松ウール

先染め(糸を染めてから織る製法)と後染め(布を織ってから色を染める製法)の両方があるウール着物です。

三勝染シルクウール

シンプルな無地感覚のものから、チェックやストライプなど、ポップで現代的なデザインまで幅広く揃ったシルクウール。
艶のあるしっとりとした質感が人気となっています。

紋ウール

「紋ウール」は、紋紙を用いてジャカード機で地模様を織りだしたもの。
昭和30年代より西洋化が進んだ影響で、洋服感覚で着られるウール素材の着物が人気となり、紋ウールが開発されました。温かく丈夫で、仕立てやお手入れもしやすいのが利点です。

ウールの着物に合わせる帯や襦袢

半幅帯や名古屋帯で楽しくコーデ

ウール着物はカジュアルな素材なので、袋帯などよりは半幅帯、名古屋帯が向いています。
個性的な柄の帯で、遊び心のあるコーディネートを楽しみましょう。

洋風のデザインもしっくりと馴染みやすいのがウール着物の楽しいところ。
シンプルな無地や幾何学のウールをワンピース感覚で羽織り、洋風の柄をアクセントに差し込んでみても◎。

また、ちょっと変わったデザインや存在感のある帯も、ポップなウール着物コーデにはぴったりです。

簡易的な筒袖の半襦袢が楽ちん

カジュアルな着物コーデは、長襦袢も気楽に着たいもの。
上下に分かれた二部式の襦袢や、筒袖の半襦袢などもウール着物に合わせられます。
「筒袖」は、袖のふりがなく、シャツのようにストンと筒状になった袖の形。
動きやすく簡易的な襦袢を選ぶも良し、柄物の長襦袢でおしゃれ心満開にするも良し。
あるいは、ブラウスやパーカーを襦袢代わりに着る和洋折衷のコーディネートも、ウール着物ならではの楽しみ方の一つです。

小物は柄物で盛大に遊びましょう

あらゆる「遊び」を受け容れてくれるウール着物の魅力を、最大限に発揮!
半襟や足袋など、小物にもたっぷり柄を取り入れてみるのも素敵です。

また、足袋×草履の組み合わせにこだわらず、スニーカーやブーツをあわせて洋服感覚で着こなしてみるのも楽しいですね。

ウールの着物に関するQ&A

Q.ウールの着物はどこで買う?

呉服店でも取り扱っている場合がありますが、数は少ないので、リサイクルショップやネットで探すのがおすすめです。
和服コーナーのあるリサイクルショップか、あるいはリサイクル・アンティーク専門の着物ショップであれば置いてある場合が多いです。また、楽天をはじめとするネットショップや、フリマアプリなどでも入手できます。
中古であれば、比較的リーズナブルな価格で入手できるのもウール着物の強みです。

Q.ウールの着物を保管する時に気を付けることは?

虫食いの影響を受ける可能性が高いので、絹の着物と同じ場所に収納しないようにしましょう。
ウールの着物はウールだけでまとめて、防虫剤を一緒に入れるなどの対策をすることをおすすめします。

Q.ウールの着用時期が知りたい

真夏以外の3シーズン(秋~翌春)に着用できます。

Q.ウールの着物でパーティーに参加してもいい?

艶のあるシルクウールの着物に、華やかな帯や小物をあわせたドレッシーな装いで、身内のカジュアルなパーティーであれば問題ありません。

まとめ

ウール着物の最大の魅力は、なんといってもその手軽さ!
普段着として日常的に着物を着たい方や、はじめて着物に触れるという初心者の方にもおすすめの素材です。
雨や汚れにも強く、お子様がいらっしゃるご家庭でも安心して着用できます。
また、年代や流行にもとらわれず、あらゆるシーンで末永く着ていくことができます。

一枚あれば重宝のウール着物の世界、ぜひその扉を開いてみてはいかがでしょうか?