着物の種類

2022.6.16

木綿着物とウール着物の特徴、選び方、着用シーンについて解説

木綿着物とウール着物の特徴、選び方、着用シーンについて解説

着物の仕立てには様々な生地が用いられており、反物の種類によっても適切な着用シーンや着用シーズンは異なります。
今回紹介する、木綿着物とウール着物もその中のひとつ。現在、ウール着物や木綿着物の購入を検討していたり、これから着てみたいと考えている方々は、木綿着物・ウール着物の存在や大まかな特徴は知っているものの、実際には何処で購入すればいいのか、それぞれどの季節に着られるものなのか、通年で着られるのかそうではないのか、今買って果たしてこれからの季節に適しているのか……? といった疑問を抱えている方も多いようです。
購入前に、これらの基礎知識を抑えておくと、スムーズに準備が出来るようになるかもしれません。
また、木綿着物やウール着物を購入したものの、着用後の手入れに悩んでいたりと、扱いや管理に困っている場合もあるのかもしれませんね。
この記事ではそういった方々向けに、木綿着物・ウール着物の基礎知識や、コーディネート方法などをご紹介いたします。

木綿着物とは

木綿着物とは、その名の通りに、木綿の生地を仕立てに用いて誂えられた着物の総称です。木綿着物は、正絹の着物よりも格段に扱いやすく、ご自宅でお洗濯してお手軽に手入れしていただけるため管理も楽で、これから着物のおしゃれをはじめたいビギナーさんにも、非常に適した着物と言えるでしょう。真夏以外であれば、ほぼ通年でどの季節にも着用できるのも嬉しいところで、こちらもまた、初めての着物に適している理由のひとつです。

日常着としての普段着物のひとつ

基本的に、木綿着物は普段着物に数えられる、カジュアルな日常着のひとつです。上述のように木綿は正絹より扱いやすく、また価格も控えめのため、木綿着物は特に初心者向けとも言われています。また、会津木綿や伊勢木綿などの伝統工芸品を用いて仕立てた木綿着物などもあり、これらは特産品としても有名で、多くの方々に愛好されています。木綿着物は、普段着として着用するのが一般的ですので、基本的にはちょっとしたお出かけ着程度までの位置づけで、フォーマルシーンに着用されることは基本的にありません。

木綿着物の特徴

木綿着物は、扱いが楽なのが嬉しいポイントで、ご自宅で洗濯が出来るためお手入れが非常に簡単です。ポリエステル製の洗える着物などと比べると、木綿着物にはアイロンがけの手間は生じますが、それでも、基本的に自宅で洗濯できない、正絹の着物に比べると格段に扱いは楽です。また、木綿は汚れが目立ちにくいため、外出先でもあまり神経質にならずに済むのも、レジャーなどに集中したいシーンでは重宝します。木綿生地は汗をよく吸収してくれて、肌にも優しいので、厚着になりがちな着物のおしゃれではそれも嬉しく、また木綿は日本の風土にも合っているため、快適にお過ごしいただけます。柔らかで着心地も良く、また、正絹の着物と比べると生地が丈夫で滑らないので、着付けの練習にも適しています。これから着物を始める際には、ぜひ候補のひとつにしてほしい着物が、木綿着物です。

他の着物との違い

木綿は正絹と比べると生地が厚いため、単衣の着物に仕立てるのが一般的です。本来であれば、単衣の着物は夏場を中心に身に着けますが、木綿は生地が厚いので、袷の仕立てではなくとも通年で着用出来ます。単衣の仕立てを活かして長襦袢を着ずに浴衣として着こなしたり、長襦袢を着こんで着物として着付けたりと、木綿着物一枚で幅広い和服のおしゃれを楽しめます。着物としての最大の特徴は、自宅で洗濯出来るという点も挙げられるでしょうか。最近ではポリエステル製の洗える着物も数多く流通していますが、ポリエステルが存在しなかった正絹が基本の時代においては、木綿着物は飛びぬけて手入れが楽でしたので、日常着として非常に重宝されていました。

木綿着物はどんなシーンで着用するの?

着物は種類によっても、推奨される着用シーンが違いますので、木綿着物はどういったシチュエーションで着用できるのかについても、事前に抑えておきたいところです。下記にて、木綿着物の主な着用シーンについて紹介します。

基本的にはカジュアルな日常着の着物

基本的にはカジュアルな日常着の着物木綿着物の基本的な位置付けとしては、カジュアルシーンで着る普段着物です。お友達とのショッピングや食事会、観劇や美術館鑑賞など、ちょっとしたお出かけ程度までのシチュエーションでの着用が推奨されます。フォーマルシーンで着用する機会は少なく、日常着や外出着といった感覚で身に纏える、お気軽なカジュアル着物であると言えます。

木綿着物はどんな季節に着用するの?

木綿着物は、基本的に秋から春にかけてほぼ通年で着用出来ます。生地が厚い木綿は、裏地のない単衣の仕立てのため、木綿着物は夏場にしか着られないと思っている方もおられますが、これは誤解です。逆に、木綿着物は、基本的には盛夏には着用出来ないものが多く、盛夏の着用は木綿の種類や生地感に左右されます。盛夏用の生地とされる阿波しじら織などは、非常に通気性が良いため盛夏にも着用出来ます。これから木綿着物を購入する場合には、どの時期に着用したいのかも加味した上で反物を選ぶといいでしょう。

フォーマルなシーンでの着用は?

木綿着物は、基本的にはカジュアルシーンの着用を推奨される着物です。種類によっては、セミフォーマルまでなら着られる場合もありますが、基本的に木綿着物は礼装には該当しません。そのため、式典や結婚式の御呼ばれなどのTPOを問われる場や、その席に適切かどうか不安がある場合などには、木綿着物は避けるのが無難であると言えまるでしょう。

ウール着物とは

ウール着物も、木綿着物と同様に、カジュアルな普段着として着用できる、お気軽な普段着物のひとつです。紬や木綿の代わりに着用される場合も多く、あたたかなウール素材を用いた着物は、寒い冬にもぴったりで、温かみのある可愛らしい絣柄のウール着物が多いのも特徴のひとつ。こちらも木綿同様に、ご自宅での洗濯などのお手入れも簡単で、じゃぶじゃぶ洗っていただけますので、着物ビギナーさんにも適しており、安定した人気があります。

日常着としての普段着物のひとつ

上述のようにウール着物は、普段着物のひとつです。洋服で言うところのセーターのような位置づけで、カジュアルな日常着として着用するのが一般的です。

ウール着物の特徴

ウールは羊から取れる動物繊維で、セーターなどニットにもよく使われる素材です。保温性に富んでおり非常に暖かいのが特徴で、正絹と比べると、ウールは比較的にお手頃な価格で購入することが出来ますので、これから着物一式を買い揃えたいビギナーさんにも、特におすすめな着物であると言えます。正絹と比べた際の違いとしては、ウール着物は皺になりにくく、破れたりもしにくいのでアクティブに動き回れて、レジャーを楽しむ際のカジュアル着としても適しています。また、ウールは毛織物ですので、ザラついた手触りがあるため、ウール100%の着物は肌に触れるとチクチクします。そのため、昨今のウール着物には絹糸を織り交ぜた、「シルクウール」を仕立てに用いたものが増えてきています。シルクウールの着物は、ウール100%の着物と比べると、非常にしなやかな生地感で肌触りがよく、また、適度な光沢もあり、高級感があるのが特徴です。他にも、木綿が織り込まれている、「コットンウール」などもあります。

他の着物との違い

ウールは正絹と比べて生地が厚いため、単衣の着物として仕立てるのが一般的ですが、生地が厚いため、袷の仕立てではなくても、通年で着用出来ます。また、ウールは動物由来の天然素材ですので、化学繊維などと比べると遥かに蒸れづらく、また保温性にも優れています。他にも、ウール着物はご自宅の洗濯機でお気軽に洗濯出来るので、手入れが非常に楽なのも嬉しいところです。しかしながら、ウールは天然素材のため、他の着物と比べると虫に食われやすいため、保管時には注意が必要です。ウールに絹糸を織り交ぜたシルクウールの場合には、絹には虫食いが生じない都合で虫食い被害の防止にもなります。そのため管理に不安のある方は、シルクウール着物を選択すると、尚のこと管理の上ではお手軽ですね。

ウール着物はどんなシーンで着用するの?

ウール着物はどんなシーンで着用するの?ウール着物の購入を検討している場合、着用できるシーンについても事前に確認しておきたいところ。下記にて、ウール着物の着用シーンについてご紹介いたします。

基本的にはカジュアルな日常着の着物

ウール着物は、基本的にカジュアルシーンでの着用が推奨される普段着物です。ちょっとしたお出かけやお買い物など、着物の格を問われない場での着用が適していると考えられます。

ウール着物はどんな季節に着用するの?

ウール着物は基本的に、初秋から春までの涼しい季節に着用します。ウール着物は裏地の付いていない単衣の仕立てのため、夏にしか着られないと思っている方や、またセーターなどと同様に、冬にしか着用出来ないと思っている方もいますが、そういったことは決してありません。また、夏場に着用できるウール着物も存在します。夏季に着用する、少しだけ透け感のある「サマーウール」という生地には化繊やシルクが混紡されており、ウール100%ではない交織の生地が主流になりますので、夏場でも快適に過ごすことが可能です。夏場に身に着けられるウール着物をお探しの場合には、サマーウールの着物を探してみるのが良いでしょう。

フォーマルなシーンでの着用は?

基本的に、ウール着物はカジュアルシーンでの着用に適した着物であり、フォーマルシーンに着用するケースはありません。ただし、絹が混織された光沢のあるシルクウール生地を用いたウール着物であれば、食事会程度までのセミフォーマルな席では着用できる場合もあります。しかしながら、シルクウール着物も礼装には該当しないため、式典やパーティー会場など、格が問われる場での着用は避けるのが無難です。

購入する際に気を付けたいポイントは?

ここまでは、木綿着物とウール着物の各特徴や着用シーズン、着用シーンなどについてご紹介してまいりましたが、実際にそれぞれの着物を購入する際には、具体的にどういった部分に気を付ければいいのでしょうか? そこで、購入時に抑えておきたいポイントについても、下記にて紹介してまいります。

木綿着物を購入するポイント

木綿着物を購入する際にまず気を付けたいのは、事前に着用日やシチュエーションが決まっているのであれば、その席に木綿着物が相応しいかどうかです。ここまでご案内した通りに、木綿着物はカジュアルシーンでの着用が推奨される着物ですので、事前に当日の着用シチュエーションが、結婚式や式典などのフォーマルな場であることが決まっているのであれば、木綿着物の購入は避けるのが無難です。逆に、お友達とのお出かけなど、着物の格が問われないシーンでの着用を考えているのであれば、木綿着物の購入は理にかなっていると言えるでしょう。他にも、着用する季節に適しているかどうかも、確認しておきたいポイントです。

ウール着物を購入するポイント

ウール着物を購入する際のポイントも、上述した木綿着物のそれと同様で、あらかじめ着用日やシチュエーションが決まっているのであれば、その席に相応しいかを事前によく確認しておきましょう。他にも、季節に適しているかどうかは非常に重要です。ここまでに解説してきたように、ひとえにウール着物と言ってもサマーウール、シルクウールなどは生地感や通気性、保温性などがそれぞれ異なりますので、例えば「冬に着るからウール着物を買おう!」といった漠然とした選び方は、少々危険です。気になっている着物と着用したい季節の気候が、しっかりと噛み合っているのかどうかについても、事前に確認してから購入するようにしましょう。

店舗や通販で購入する

さて、ここからは実際に、木綿着物やウール着物を購入する際のポイントについても、見ていきたいと思います。まず考えられる購入先は、呉服屋さんなどの実店舗でしょうか。店舗での購入のメリットは、そのお店の店員さんと相談しながら着物選びが出来るところで、事前に知識がなくても選びやすいのが、初心者さんには嬉しいポイントです。デメリットは、基本的に店頭にある商品の中から選ぶことになるため、ネット通販などと比較すると品数が遥かに限られることです。具体的に何色が欲しい、何柄が欲しいというイメージが固まっている場合には、ネット通販で理想の着物を探してみた方が良いかもしれません。また、店舗によって価格の相場も変わってくるので、あらかじめ予算が決まっている場合に、その店舗の相場を事前に知っておきたいところです。ネット通販であれば、予算に合ったメーカーを探して購入できますが、実店舗の場合には、実際に見に行ってみないと、分からない場合もあるかと思いますので、店員さんにおすすめされた際に断るのが苦手……、という方は通販を選んだ方が、気持ちの上では楽かもしれません。

リサイクルショップで購入する

他にはリサイクルショップや、アンティークショップでの購入も選択肢のひとつです。リサイクル品のメリットは、比較的安価に手に入れられる場合が多いことで、着物一式を揃えたいビギナーさんであれば尚のこと、価格を抑えられるリサイクルショップの着物は嬉しいところ。また、アンティーク着物は、現代ではなかなか見かけないような色柄に出会える場合も多いので、周囲とは一味違うおしゃれを楽しめるのも楽しく、一期一会の出会いがあるのも楽しいですね。一般的なリサイクルショップでは難しいものの、アンティーク店など着物専門のショップであれば店員さんに相談できる場合もありますので、近場にそういった店舗があれば相談してみるのもいいでしょう。そんなリサイクル着物・アンティーク着物ですが、リサイクルやアンティークのデメリットは、基本的に中古品になること。誰かが袖を通したり、店舗に並ぶ以前に素人が管理していた着物である場合が多いため、虫食いやシミなどの劣化が進んでいる場合も少なくはなく、商品の見極めが初心者には少々難しいのが難点です。ウール着物は特に、虫食いや汚れなどに気を付けたいところ。購入時には、明るい所で隅々まで確認するなど、傷みがないかをよく確認してから購入するようにしましょう。

まとめ

紬、銘仙アンティーク羽織を着た女性木綿着物やウール着物は、自宅で洗濯出来るものが多くて、管理の上で非常に楽なので、着物ビギナーさんが最初に選ぶ着物としても適しています。その反面で、木綿やウールには、正絹やポリエステルの着物とはまた違った特徴があるため、管理の上では気を付けたいポイントも。また、木綿着物もウール着物も洗濯後には、生地全体に皺が寄りやすいという特徴もありますので、洗濯後にしっかりとアイロンがけなどのケアが出来る方に適しています。そのため、洗って干すだけで管理を終えたい方は、ポリエステル製の洗える着物などを選んだ方が無難、という場合もあるかもしれません。木綿着物、ウール着物共に、単衣の仕立てながらも長いシーズンに着用できるのは魅力のひとつで、安価に手に入る場合も多く、全体的に初心者向けの着物としてもおすすめできると言えるでしょう。これから着物のおしゃれをはじめたい方に、是非手に取ってみていただきたい木綿着物とウール着物、これを期に是非選んでみてください。