着物の種類

2023.4.15

袋帯とは?名古屋帯との違いやTPO別コーディネート、簡単アレンジ方法など解説

袋帯とは?名古屋帯との違いやTPO別コーディネート、簡単アレンジ方法など解説

現代、礼装の主流になっている「袋帯」。
着物を始めたばかりの時、着物に帯を締めることは知っていてもその種類までは中々判別できず困っている…という声は多く聞きます。

帯の種類として「丸帯」「袋帯」「名古屋帯」「半幅帯」「角帯」などがありますが、種類がわからないとせっかく帯を持っていても箪笥の肥やしになりがちです。

・袋帯の見分け方や特徴
・着用シーンやコーディネート
・袋帯の結び方
・袋帯を簡単に自分で結ぶアレンジ方法
・袋帯を名古屋帯へ加工する方法

など、初心者でもわかりやすく「袋帯って何?」「活用方法が知りたい」といった疑問が解決できるよう解説していきます。

特に迷いがちな、「袋帯なのにカジュアルな帯」は長さだけでは判別できないため礼装に用いる袋帯についても画像や商品を例に挙げながら解説しますので、悩んでいる方は是非最後まで読んでみてください。

袋帯とは

日本の民族衣装である着物ですが、袋帯の歴史が浅いことはご存知でしょうか。
現代に言われているTPOやマナーは着物の歴史全体でみるとつい最近できたものなのです。

袋帯の歴史について振り返ってみましょう。

袋帯の歴史

着物を見かける機会が多い晴れの場で見かける帯のほとんどが袋帯ですが、実はその歴史は意外に浅く、昭和初期頃に生まれた帯とされています。

袋帯の前身は「丸帯」と呼ばれる帯で、江戸時代中期に女性用の最も格の高い帯として使用されていました。
丸帯は地厚で袋帯2本分の重みがあり、締めづらいため現代では花嫁衣裳や舞妓衣装での使用のみとなっています。

丸帯の代わりに明治時代に改良され昭和初期に誕生した「袋帯」は現代の第一礼装に相応しい帯として、最も出番の多い帯とも言えます。

現代の袋帯

改良当時の袋帯は、帯地を袋状に織った形状だったため「袋帯」の名がつきました。
現在は別々の帯地と裏地を縫い合わせて袋状にしたものが多くなっています。

袋帯の仕立てと柄付け

一口に「袋帯」と言っても、袋帯の中で仕立てや柄付けによってそれぞれ分類されます。
TPOなど格式に大きく影響するものではないので、知識程度に頭の隅に入れておいてください。

袋帯の仕立て方

お店で未仕立ての袋帯を見たことがある人はイメージが湧くかと思いますが、帯は袋状に仕上げた後、中に芯を入れて袋を閉じて完成です。
袋帯が店頭に出る状態になるまでの、袋を閉じる前までの仕立て方の違いについて解説します。

本袋仕立て/本袋帯

袋帯の原型ともいえる本袋帯は、表面と裏面を袋状に織り上げた仕立ての帯を指します。
タレと手先の口部分をかがって仕立てます。

縫い袋仕立て

現代の主流の仕立てで、表面と裏面を別々に織り上げてから両耳を縫って袋状に仕立てる帯です。

片縫い袋仕立て

丸帯に最も近い形状である仕立ては、片縫い袋仕立てです。
表面と裏面を合わせて16寸幅に織り上げ、半分に折って片耳を縫い合わせる仕立て方です。

丸帯の場合は表面と裏面を同じ帯地で織りあげていましたが、袋帯では裏面を裏地として無地に織り上げるため軽量化が実現しています。

柄付け

袋帯全体を見た時に、柄の付き方で呼び名が異なります。

全通柄

帯一本通して、表面すべてに柄が入った柄付けを「全通柄」といいます。
柄がたくさん入り、作業工程が複雑化することから袋帯の柄付けで区分すると最も値が張ります。

六通柄

現代の主流である六通柄は、手先部分とタレから胴回り一周分のいわゆる柄の見える部分のみ柄を付け、見えない部分は無地になっている柄付けで、全体の六割程度に柄があることからその名がつきました。

同じ帯を織り上げると仮定した場合、全通柄と比べると糸や色使いが減るためコスト削減となり低価格になる場合もあります。
機織機の関係や、作家のこだわりで六通柄は織らない工房もあるようです。

お太鼓柄

名古屋帯に多い柄付けであるお太鼓柄は、袋帯に用いられる場合もあります。
お太鼓結びをした際に、お太鼓部分となる後ろと前腹の部分にのみ柄が入った帯で、柄の出し方に少々コツのいる柄付けです。

初心者やふくよかな体型は帯の長さや柄の位置をよく留意して選ぶようにしましょう。

袋帯の見分け方と名古屋帯との違い

自宅にある帯の種類がわからず、着用シーンを調べることもできない…そんな経験はありませんか?
結論から言うと、仕立て上がりの長さが4m30cm以上であれば袋帯です。
仕立て上がりとは、反物や口の開いた状態ではなく帯として締められる状態を指します。

自宅にメジャーがない場合や毎回測る手間を無くすために、長さ以外の判別方法も解説します。

ちなみに「キラキラと華やかな帯は袋帯」と説明されることもありますが、キラキラと華やかな名古屋帯もありますし華やかではない袋帯もありますのであくまでもひとつの特徴に過ぎないと頭に入れておきましょう。

長さで分かる帯の違い

形状の似た帯で判断が付かない場合、まず確認するべきは仕立て上がりの長さです。

長さ
丸帯  4m 34cm
袋帯 4m30cm~ 31cm
名古屋帯 3m50cm~ 31cm

比較すると、袋帯はもっとも長さがあることがわかります。
違いは帯の結び方にあり、袋帯は「二重太鼓」という締め方ができるような長さで織られているのです。

現代の袋帯は振袖などで用いる変わり結びの種類が増え、華やかになってきたことに合わせて長さのある帯が増えています。
昔の丸帯ではあまり華やかな帯結びはできませんので、注意しましょう。

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仕立て方で分かる帯の違い

袋帯は通常、タレ先が開いた袋状で販売されています。
先ほど解説した店頭に出るまでの仕立ての違いとは別に、「袋帯」と「名古屋帯」を締められる状態にするまでの仕立て方について解説します。

袋帯は「かがり仕立て」

袋帯の仕立て上がりは、タレ先の袋状の口が閉じた状態が完成です。
縫い合わせることを「かがる」と呼ぶためかがり仕立てと呼ばれますが、帯芯を入れる場合は「綿芯仕立て」「絹芯仕立て」など帯芯によって呼び方が変わる場合もあります。

いずれにしろ完成形は、口の閉じた幅31cm、長さ4m30cm以上になります。
帯芯は好みや帯の質感、硬さによって変わるため、仕立てる前に相談するのがおすすめです。

名古屋帯の仕立ては3種類

名古屋帯にはそもそも「九寸名古屋帯」「八寸名古屋帯/袋名古屋帯」がありますが、今回は仕立て上がりの形状のみ解説します。

・名古屋仕立て

お太鼓部分を並幅に、胴周りを半幅帯に縫い合わせて仕立てる名古屋帯の中では主流の仕立てです。

・松葉仕立て

手先のみ半分に折って縫い、前帯の幅を調整できるように仕立てる方法です。
背の高い方やふくよかな方が全体のバランスを見て帯幅が調整できる便利さがあります。

・額縁仕立て/開き仕立て/平仕立て

すべて開いた状態で仕立てる方法です。一見袋帯と見間違うこともありますが、長さが袋帯より短くなりますので悩んだ場合は長さを測ってみてください。

帯芯を入れた場合手先~前帯部分の帯芯が見えるものと、帯芯が見えない様に別布を付けている場合もあり、いずれも松葉仕立てと同じく帯幅の調整が可能です。

軽装帯/つくり帯の見分け方

簡単に結べるように加工してある帯の種類を判別するには、お太鼓部分が二重か一重かをチェックしましょう。

二重太鼓になっていれば「袋帯」、一重太鼓なら「名古屋帯」です。
軽装帯はつくり帯の他、ワンタッチ帯など様々な名称で呼ばれており、切らずに加工した帯もあれば切ってお太鼓部分と前帯をパーツ分解したものがあります。
今後検討する場合は糸を切れば元の状態に戻せる、切らずに加工する軽装帯がおすすめです。

袋帯の結び方と帯枕の選び方

礼装で締める袋帯は必ず二重太鼓に締めますが、カジュアルな装いであればアレンジした結び方も粋で素敵です。
袋帯の代表的な結び方を3種類紹介します。

【礼装】二重太鼓

袋帯の最も基本的な結び方は、「二重太鼓」です。
お太鼓部分が二重になっていることから名づけられ、「お祝い事が重なるように」といった願いも込められていることから慶事の礼装では二重太鼓を締めるのがマナーとなっています。

お太鼓の大きさや高さ、形は帯枕とタレの位置で調節でき、年齢や体型に応じて変えます。
一般的には年齢が若いほど高めの位置で大きく結び、歳を重ねるにしたがって位置は低めに、お太鼓も小ぶりに結ぶものとされています。
体型によっては、背の高い人はお太鼓を大きめにした方が全体のバランスが綺麗になりますし、逆もまた然りなのであくまでも一般論として参考にしてください。

▼フォーマル、華やかさを出すなら高めタイプがおすすめ

▼お太鼓をまっすぐ、粋に演出したいなら低めタイプがおすすめ

粋な着こなしが好きな人は若くても低めで小さいお太鼓を作りますし、派手な着こなしが好きな人は年齢問わず高く大きいお太鼓を作りますので好みに合わせて楽しみましょう。
礼装として締める場合は一般的なサイズに揃えるのが無難です。

【礼装】変わり結び

主に振袖に用いられる変わり結びは、袋帯ならではの華やかな結び方です。
細かく種類がありそれぞれに名前がありますが、代表的な結び方に「ふくら雀」「立て矢」などがあります。

現代的な変わり結びをするには三重紐という専用のゴム紐が必要になりますので着付けの前に準備しておきましょう。

【普段】角出し結び

きちんとしたお太鼓と対照的に、粋な着こなしを演出するなら角出し結びがおすすめです。
後ろから見た時に左右にツノのように手先が出ていることからその名が付きました。
浮世絵にも多く見られることから江戸時代から人気の結び方だったことがうかがえます。
当時は袋帯や名古屋帯はではなく丸帯で楽しんでおり、結び方も異なります。

現代では名古屋帯で結ぶのがほとんどですが、袋帯でも可能です。
帯枕不要の結び方なので、「帯枕はないけどとりあえず帯結びにチャレンジしたい」という時にもおすすめです。

【普段】銀座結び

角出し結びと同じような完成形になる銀座結びも、粋な着こなしにおすすめです。
違いは結び方の手順くらいなので厳密には同じものといっても良いとされています。

袋帯を簡単に結ぶアレンジ方法

着物に慣れないうちは、帯結びが非常に難しく骨の折れる動作ですよね。
袋帯を一人でも簡単に結べるようなアレンジ方法を紹介しますので、もし「袋帯であること」が敬遠している理由の帯があるようなら参考にしてみてください。

軽装帯に作り替える

袋帯を簡単に締めたい場合は、軽装帯に作り替えるのがおすすめです。
軽装帯はつくり帯の他、ワンタッチ帯など様々な名称で呼ばれており、切らずに加工した帯もあれば切ってお太鼓部分と前帯をパーツ分解したものがあります。

軽装帯のメリットには
・着付けの時間が短縮できる
・一人で楽に締められる
・肩が辛くても締めやすい
・変わり結びの注文もできる
などがあります。

今後検討する場合は糸を切れば元の状態に戻せる、切らずに加工する軽装帯がおすすめです。

【ワンタッチ帯加工 まゆみ帯加工】帯加工専門店

【振袖用 つくり帯加工】

そもそも軽装帯として販売されている袋帯もあります。

【桐生織二重太鼓軽装帯】

【振袖用作り帯】

名古屋帯に仕立て替える

礼装向けの袋帯ではなく、カジュアルにしか締めない袋帯であれば名古屋帯に仕立て替えるのもひとつです。
基本的には二重太鼓よりも一重太鼓の方が締めやすいとされており、袋帯から名古屋帯に仕立て替える人は多いようです。

二重太鼓にする必要がなく、使用頻度を上げたい帯や名古屋帯の方が結びやすい人におすすめです。

【袋帯から名古屋帯へ仕立て替え】

袋帯の種類と着用シーン

「染の着物に織の帯、織の着物に染の帯」とは着物のコーディネートを組む上で基本とされる考え方です。
もちろんデザインによって例外はあり、あくまでも悩んだ時の指標です。

染の着物とはいわゆる「やわらかもの」と呼ばれる着物で、小紋や色無地、訪問着や留袖などの礼装~略礼装で着用できる着物を指します。
織の着物は反対に「かたもの」と呼ばれ、紬や御召、木綿やウールなど張りのある、普段に着る街着の着物を指します。

これらの着物と帯の組み合わせによって格が決まり、礼装で赴く場面では「TPOに沿っている」とされるのです。

「袋帯なのかどうか」の判別ができるようになったら、コーディネートとして正しく選べているかをチェックしましょう。

・この袋帯はどの着物に合わせるのか?
・この袋帯はどんなシーンで締められるのか?

帯の特徴とデザインごとに、TPOを解説します。

【礼装向け】織の袋帯

袋帯の基本は礼装用の着物に合わせる金、銀、箔を配した錦織や唐織、綴織などの織の帯です。
その中でも金銀箔の配分によって合う着物が変わってきます。

留袖に合わせる袋帯

女性の第一礼装である留袖に合わせる袋帯は、やはり金銀箔がふんだんに使われている煌びやかで重厚感のある帯がよく似合います。
留袖の柄や色合いによっては金銀箔に色数が豊富な帯を合わせても素敵です。

訪問着・付下・色無地に合わせる袋帯

留袖に合わせる袋帯と比べると、少々軽めの金銀箔を用いた帯は訪問着や付下、色無地などの準礼装によく似合います。

コーディネートによってはシンプルな帯でも留袖に合わせて差し支えない場合もありますが、基本的には着物<帯の華やかさが美しいとされています。

帯が着物に負けない合わせ方を基準にコーディネートを組むようにしましょう。

振袖に合わせる袋帯

未婚女性の第一礼装である振袖にも、もちろん袋帯を合わせます。
留袖に用いるような重厚な袋帯を合わせるのも素敵ですが、注意したいのは振袖用の袋帯を他の着物に合わせることです。

「振袖用」として販売されている帯の中でも、色無地や付下に合わせて違和感のない帯ももちろんあるのですが、振袖にしか合わない袋帯も多く存在します。
特徴としては、色数が多く派手、柄が大きめ、現代的な図案などで見慣れるとすぐにわかるようになります。

手持ちの帯と着物のコーディネートに不安を感じたら、近くの着物屋さんに相談してみてください。
馴染みの着物屋が無い場合や相談しづらい場合は、オンラインでコーディネート相談にのってもらえるサービスもありますので上手く活用しましょう。

着物のTPO/コーディネートなどお悩み相談承ります

【普段向け】織の袋帯

織の袋帯の中でも、「洒落もの」などと言われるカジュアル向けの帯を紹介します。
金銀箔がない帯は袋帯でも普段向けです。

【礼装向け】染の袋帯・一竹辻が花

染の帯は基本的にカジュアル向けになりますが、中には礼装に締められる染め帯も存在します。

代表的なものが「一竹辻が花」の染め袋帯です。
辻が花とは戦時中に失われた「幻の技法」と呼ばれる絞り染めの技法で、現代によく見かける辻が花は「辻が花風のデザイン」で、厳密には存在しない花で本来の意味とは異なります。

「一竹辻が花」は1937年に初代久保田一竹が出会った古の「辻が花」の小裂に魅了され、40年もの年月をかけ研究に費やしたどり着いた技法です。

一竹辻が花は生地からこだわっており、度重なる重ね染めや重厚な絞りに耐えられる地厚のオリジナル白生地には銀糸が織り込まれているため、染め帯でありながら礼装として遜色ない輝きを魅せる帯なのです。

基本的には礼装に向かない染め帯ですが、作家のこだわりが反映された染め帯であれば礼装に締められる帯はありますので、一概に「染め帯はカジュアル」といえないことがわかりますね。

一竹辻が花について詳しく知りたい方は、是非山梨県の河口湖近くに構える「久保田一竹美術館」がおすすめです。
昨今話題になった嵐の二宮和也さん主演映画「ラーゲリより愛を込めて」の舞台となったシベリア抑留を経験した初代久保田一竹氏がシベリアで見た夕陽を描いた作品『「燦」(シベリアの夕陽)』などの美術作品を見ることができます。

作者の人生や背景を知ってから作品を見るとその荘厳さに胸を打たれます。
山梨県に訪れた際には是非足を運んでみてください。

【普段向け】染の袋帯

染め帯の代表といえば塩瀬の染め帯です。
お太鼓柄が多く、手書きで柄が描かれた上品な帯ですが名古屋帯が多いため袋帯は珍しいです。

型染めの袋帯もモダンで非常に素敵です。
京紅型のはんなりした雰囲気や、東京紅型の粋なデザインなどそれぞれの良さがありますので、お好みに合わせて選べるのが楽しいですね。

染め帯にもさまざまなデザインがありますので、お気に入りの帯を見つけてください。

まとめ

糸や織りによって幅広い顔を見せる袋帯。
自宅に眠っている袋帯の活用方法は見出せましたでしょうか。

手持ちの帯を上手くコーディネートしつつ、新しく帯を迎える際には着物との相性を加味しながら素敵な一本を選んでくださいね。

この記事で紹介したサービス

【ワンタッチ帯加工 まゆみ帯加工】帯加工専門店

【つくり帯加工】振袖用変わり結び

【仕立て替え】袋帯から名古屋帯へ加工

【相談サービス】コーディネートや加工に関するオンライン相談

この記事で紹介した商品

全通柄袋帯

六通柄袋帯

お太鼓柄袋帯

名古屋帯/名古屋仕立て

名古屋帯/松葉仕立て

名古屋帯/開き仕立て

袋帯/軽装帯

袋帯/軽装帯

袋帯/振袖用軽装帯

※着用シーンにて紹介した商品は割愛

帯枕/高めタイプ

帯枕/低めタイプ