和装小物

2022.10.1

着物に必要な「帯締め」って?振袖や留袖、浴衣など種類による違いや格式、お手入れ方法などを解説

着物に必要な「帯締め」って?振袖や留袖、浴衣など種類による違いや格式、お手入れ方法などを解説

「帯締めって、どうやって選べば良いの?」
「着物に合わせる帯締めと、浴衣に合わせる帯締めって、何が違うの?」
「帯締めのお手入れ方法が知りたい」
着物を着るときに、一度はこう思ったことはありませんか?

帯締めと言えば、着物を着るときには欠かせない小物のひとつです。現代ではおしゃれ着から礼装まで、さまざまな帯締めがありますね。
ところで、帯締めにも格式の違いがあるのをご存知でしょうか?
実は、着物と同様に帯締めにも合わせていい種類や、格の違いがあります。帯締めなら何でも締めていいという訳ではないので、注意しましょう。

この記事では、帯締めの格の違いや種類について解説しています。
また、気になるお手入れ方法の説明もしているので、是非最後までご覧ください。

関連小物として帯揚げについて解説している記事もあります。こちらもご覧ください。

帯締めとは?

帯締めとは、帯を着付けた後に帯の中央に締める紐のことを言います。
帯を固定するだけでなく、コーディネートのポイントにもなるとても重要な小物の一つでもあります。
現代では色や形のバリエーションも豊富なので、さまざまなコーディネートが楽しめます。

江戸後期からはじまる帯締めの歴史

帯締めは奈良時代から始まったとされていますが、一気に広がったのは江戸時代後半だと言われています。

当時人気があった歌舞伎役者が衣裳の着崩れを防止するために、帯の上に締めた紐が始まりでした。それを真似して装った女性たちに流行し、その便利さから庶民にも定着していったのです。

当時は丸ぐけ紐が主流でしたが、明治時代に廃刀令が出された後、刀の下緒に使われていた組紐が帯締めに使用されるようになりました。その後、丸ぐけ紐はほとんど使われなくなり、組み紐の帯締めが主流となりました。

また、紐の長さも徐々に長くなっていきました。現在は150cm前後の長さが一般的となっています。

こちらの記事も併せてご覧ください。

現代の帯締めの役割

帯の着崩れを防ぐためのものという役割は以前から変わらないのですが、現代は装飾としての意味合いが強くなってきています。
半幅帯に合わせる飾り紐やレースのように透かしが入った帯締めなど、いわゆるオシャレアイテムとしての要素がとても強くなっています。現代の感覚を取り入れた帯締めが増えているので、コーディネートの幅も増え、洋服のようにオシャレを楽しめるようになってきました。

帯締めの技法と見分け方

帯締めは一見するとシンプルな紐ですが、実はさまざまな技法が練りこまれているとても複雑な小物なのです。
大きく分類すると、帯締めの技法は手組、機械組の二種類に分けられます。パッと見ただけではどちらが手組でどちらが機械組か分からない方も多いでしょう。
ここではそれぞれの特徴を解説していきますので、一緒に見ていきましょう。

こちらに詳しい記事もありますので、ご覧ください。

手組

まず帯締めと言えば、伝統的な手組のものを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
手組の帯締めは、しなやかで上質な手触りが特徴です。それでいて伸縮性もあるため、締めていても苦しくならず、緩みません。
一方で、手作業で制作していることもあり、比較的高価な価格帯にあります。
手組かどうか分からない場合は、半分にした状態で輪になっている方を短めに持ってみてください。次に、帯締めを曲げてみてください。
そうすると、手に持った時に曲がった状態がキープされます。これはしっかりと組まれているので、組織の密が高く、形状記憶されるのです。
代表的な手組のブランドに「五嶋紐」と、「道明」があります。
店頭で見かけた際は是非手に取ってみてください。柔らかくしなやかで、しっかり締まるこれらの帯締めは、一度使うと他のメーカーの帯締めが使えなくなると言われています。

こちらが五嶋紐です。
江戸組紐の職人であった故・五嶋敏太郎氏により確立されました帯締めです。皇室に献上する草履の鼻緒に使われた組紐として有名です。

続いて、こちらが道明です。
創業から300年経った現在も不動の人気を誇る帯締めのブランドです。道明の組紐は、糸の染色から組みまで、全て手作業で行われています。

機械組

機械組はその名の通り機械を使って製作するので、量産が可能です。
価格帯も安価なものが多く、カラーバリエーションも豊富なので練習用やたくさん揃えたい方におすすめです。
手組の帯締めは絹を使用していますが、機械組は化繊を使用することもあります。ですので、手組に比べるとハリが少なく、しっかり締めないと帯が緩んでしまうこともあるのです。
また化繊を使用しているものは自宅での手洗いが可能となりますので、手組に比べるとお手入れがしやすいのも特徴です。
機械組かどうか分からない場合は、上記の手組のように帯締めを持ってみてください。そうすると、手に取った時にだらんと垂れ下がってしまいます。これは手組ほどしっかり組めないので、組織の密が低く、形状記憶ができずに下がってしまうのです。

 帯締めの種類と結び方

続いて、帯締めの種類について解説していきます。
帯締めと一口に言っても、さまざまな種類があります。
また、格によって合わせられる着物が異なりますので、少し注意しましょう。

組紐

組紐は大きく分類すると「丸組」、「平組」、「角組」の3種類に分けられます。
更に平組の中で「冠組」、「高麗組」、「三分紐」と分けられています。同じ組紐でも、組み方によって細かく分けられるのです。
また格式の順は、平組>丸組>角組となっています。
結び方としては基本的に本結びを行います。三分紐などの細い帯締めは、本結びの後に余った紐を帯の中に隠してしまいます。

こちらにも帯締めの記事がありますので、参考にしてください。

丸組/丸打ち

その名の通り角がなく、丸く組まれた組み方のことを言います。
裏表がないので着物初心者にも結びやすく、とても扱いやすいのが特徴です。
現在は飾りがついていたり枝分かれしたりしているものがあり、どちらかと言うとカジュアルな場面で使用されることが多いです。

平組/平打ち

平組は格式が一番高い組み方で、金糸や銀糸が入った帯締めは礼装用として活躍します。
組み方や色使いなどデザインが豊富なので、礼装だけでなくカジュアルな装いにもピッタリです。
平らに組まれているので安定しやすく、初心者でもしっかりと締めることができます。金、銀糸の有無やデザインにもよりますが、一般的に幅が広いほど礼装向きとされています。

冠組(ゆるぎぐみ)

冠組は元々、貴族の冠の紐に使用していました。
真ん中に1本の線が入っており、伸縮性があるのが特徴です。とても柔らかく締め心地も良いので、初心者でも扱いやすく人気がある組紐です。
冠組は角組の帯締めで使うことが多い組み方ですが、金糸が入ったものを選べば附下げや訪問着など、略礼装に使用することもできます。

高麗組

高麗組は刀の下げ緒に使われていたと言われている組紐です。
厚みと幅が適度にあり、また結び上がりの形が綺麗なのが特徴です。文字や文様を表す技法を用いるために利用される組方になります。
平組みの一種である高麗組は重厚感があり、格調ある美しさも備えているのです。
また金、銀糸の入ったものは礼装用に合わせる帯締めとして重宝します。

三分紐

三分紐は、主に浴衣や夏用の着物に用いられることが多い帯締めです。
帯締めは一般的に結び目を帯の中央に持ってきますが、三分紐は結び目を帯にかくしてしまいます。
三分紐は細く少し結びにくいので、結びやすくする金具も販売されています。三分紐が結びづらいとお悩みであれば、こちらも揃えると便利ですね。

角組

角組は帯締めの中で一番格が低い帯締めです。主に木綿や紬などのカジュアルな着物に合わせることが多く、礼装で使用することはまずありません。
四角く組まれているので結ぶのが扱いにコツが必要で、初心者には少し難しいと感じる場合があります。

丸くけ

組紐は絹糸を組んでいるのに対し、丸くけは布の中に綿を詰め、細い紐状に仕立てる帯締めです。以前は礼装にも使用されていましたが、現在はカジュアルな着物に合わせることが多くなっています。
締めるとふんわりした独特の厚みが出て、とても可愛らしい印象になります。

振袖用帯締め

厳密に言うと、振袖用の帯締めという決まりがあるわけではありません。
平組と丸組、それぞれの帯締めが飾りや色使いなどで華やかで、そして豪華なものに変化していったものが振袖用とされています。

浴衣用飾り紐

浴衣には半幅帯を合わせますので、基本的に帯締めは不要です。
しかし、オシャレが進化している現代では浴衣専用の飾り紐がたくさん出ています。これは帯を固定するためではなく、半幅帯にプラスするオシャレアイテムとしての役割が強いです。
他に三分紐に帯留めを通して使用することもあります。夏のオシャレも思い切り楽しみましょう!

TPO別帯締めの選び方

帯締めを選ぶ際には、格式や季節によってルールがあります。
初心者ですと、どう選んで良いのかいまいち分からないですよね。
着物には細かい決まりごとが多いので、以下の解説を参考に帯締めを選んでください。

着物・格式で選ぶ

まず、着物の格式で選んでみましょう。
格式別の選び方を簡単な表にまとめましたので、参考にしてください。
上から格が高い順番になっています。

帯締め 色、柄
留袖 平組 白、金、銀糸入り
振袖 平組、丸組 着物に合った色、吉祥文様
訪問着 平組 着物に合った色、金、銀糸入り
付け下げ 平組、丸組 色、柄は好きなもの
カジュアル 平組、丸組、角組 色、柄は好きなもの

季節で選ぶ

一般的に帯締めを季節によって変えることはまずありません。
ですが、現在は気候に合わせた夏用の帯締めが普及しています。通常の帯締めに比べて透け感があり、とても涼しげな見た目になっています。
レース組と呼ばれており、その名の通りレースのような透け感のある組み方になっています。
色使いも夏らしく、淡くて涼しげな色が多くなっているのが特徴です。  

色合わせやコーディネートで選ぶ

それでも迷ったときは、着物の色や柄から選ぶという方法もあります。
帯締めなどの小物は、着物にあるどれか一色をピックアップすると全体がまとまりやすくなると言われています。
例えば着物の柄に桜の花が入っていたら、同じように桜の柄が入っている帯締めを合わせる、といった具合です。そうすることで統一感が出るので、そうした方法で選ぶのも良いでしょう。

帯締めのお手入れ・保管方法

それでは最後に、帯締めのお手入れ方法について説明します。
帯締めもきちんと手入れをしないと長く使えなくなってしまいます。長く活躍してもらうために、お手入れまで気を抜かないでおきましょう。

自宅で洗う方法

一番お手軽な方法は、自宅でのお手入れですね。
帯締めは化繊のものであれば自宅で洗ことが可能です。正絹の帯締めは自宅で洗うことはできないので、注意しましょう。

正絹はクリーニングへ

正絹の帯締めは自宅で洗えませんので、汚れてしまった場合はクリーニングに出しましょう。
ですが、帯締めは一度着物を着たぐらいではそこまで汚れることはありません。ですので、基本的には毎回クリーニングに出さなくても問題ありません。

帯締めの保管方法

使用した後の帯締めは、放っておくと房が絡まりぼさぼさになってしまいます。
こちらもキレイにまとめて保管しましょう。
房のお手入れ方法は、ティッシュや薄紙等で房を覆い、広がらないようにするのが一般的です。また、房カバーもとても簡単にまとめることができるので、こちらも揃えておきたい小物です。
帯締め専用のケースにしまっておくと、バラバラにならずタンスがスッキリまとまります。

まとめ

これまで、帯締めについて説明してきましたが、お分かりいただけましたか?
さまざまな種類があることや格の違い、お手入れ方法など、帯締めに関する知識が広がったのではないでしょうか。
また、帯締めは帯を締めるだけの道具ではなく、オシャレの幅を広げる重要なアイテムであることが分かりましたね。
帯締めは着物に比べると面積も小さく一見目立たないと思われがちです。ですが、色や柄ひとつで着物の印象をガラッと変えてしまう影の主役のような存在でもあります。
是非、世界に一つだけのコーディネートを楽しんでくださいね。