着物のクリーニングを解説。お店選びのコツから、万が一の時の応急処置まで

着物のクリーニングを解説。お店選びのコツから、万が一の時の応急処置まで

着物に袖を通すと必ず必要になるのが、着物のクリーニングです。
「洋服と違い気軽に洗濯機で洗うものではない、という認識はあるけど実際どうしたらいいのかわからない…」という声もよく聞きます。
着物の素材が綿やポリエステルの場合は洗濯機でも洗えるのですが、正絹の着物はそうはいきません。
多数ある洋服クリーニング店でもいいのか、はたまた専門店に持っていくべきなのか、お店も数多くあり悩みますよね。
着物は洋服以上に繊細なため、クリーニングひとつでも様々な特徴に合わせて方法を選ばなくてはいけません。
専門知識がないクリーニング店に任せると生地の縮みなどのトラブルになる場合もありますので、お店選びが重要です。
この記事では着物のクリーニングの種類や、すぐに洗いに出せない状況で役に立つ一時対応の方法も合わせて紹介しますので、今後着物を大切に長く着ていく上で是非参考にしてみてください。

着物クリーニングの方法と相場

着物のクリーニングの方法には「洗い張り」と「丸洗い」の二種類があります。
それぞれどんな違いがあるのか把握していないと、知識の少ない業者に当たってしまいきちんとした説明もないまま適当に選んでしまう…そんなケースもあるようです。

クリーニングであるからには「洗い張り」も「丸洗い」も着物を綺麗にすることに変わりはありませんが、効果や価格にかなりの差が出てきます。
着物の素材や状態によって適切な洗い方法が変わりますので、まずはその違いから説明します。

洗い張りとは

洗い張りとは、着物を一度すべて解き、反物の状態に戻してから洗う方法です。
水洗いをして湯のしや張りで反物の幅を整えて、新しい糊を引いて生地の風合いを蘇らせます。

洗う際の工数が多くなるため丸洗いよりは費用が上がります。
洗い張りの流れは厳密にはかなり細かくなりますが、わかりやすく洗う工程に着目して簡単に説明します。

①解く
着物の縫い糸をすべて解き、反物の状態にします。

②糸くずを取る
細かい糸くずやごみを取り除きます。

③水洗い
反物全体を専用の洗剤等を使用して水洗いします。

④板張り
着物の素材に合わせて、一番綺麗な状態に仕上がる方法で「張り」を行います。

⑤仕立て
反物の状態で完全に乾ききったら、再度着物の形に仕立てていきます。

「洗い張り」は④の工程までを指します。
仕立てまで行う場合が多いのでプロセスに含みましたが、「洗い張り」と「仕立て」は別料金で設定している業者が多いです。

洗い張りのメリット

完全に着物を解いて水を通すため、全体の汚れがきちんと取れます。
反物の古い糊を取り除き新たに糊を張りなおすため、生地の風合いが新品のように生まれ変わり光沢感なども出ます。

解いた後は仕立て直す為、寸法の変更や八掛や胴裏などの裏地の取り換えができます。
また、着物によって寸法が足りない場合は見えない部分に生地を足したり、デザイン性を重視しながら見える部分に足していくこともでき、仕立て方を相談することで全く違う雰囲気の着物に仕立て替えたり、落ち切らない衿汚れを目立たなくさせるために見えない部分と生地を変えて仕立て直すことも可能です。

こういった提案は着物の構造に対する知識や経験がなくては出来ませんので、仕立てに詳しいスタッフさんがいる着物屋さんや着物クリーニング専門店を選ぶのがおすすめです。

また、昔の着物の八掛はほとんどが赤や赤茶でしたが、八掛を変えることで着物の雰囲気を現代風にすることもできます。
八掛の色はその人のセンスが出る場所でもあるので、信頼できるスタッフさんに相談しながら色を決めるとお気に入りの一枚になります。

洗い張りのデメリット

デメリットは、丸洗いと比べて専門知識が必要なため業者が少ないこと、
また工数が増えることによってどうしてもかかってくる費用です。

【洗い張りの料金相場(税別)】
・振袖13,000円~20,000円
・留袖16,000円~24,000円
・訪問着10,000円~13,000円

【洗い張り→再仕立ての料金相場(税別)】
・振袖40,000円~70,000円
・留袖50,000円~75,000円
・訪問着35,000円~50,000円

以上のように、仕立て代がかかってくることで高額になっていきます。
また、裏地を変える場合はその裏地の代金も加算されますので、仕立て替える場合でも特に裏地の汚れが気にならない場合は同じものを使用しても大丈夫です。

工数が増えれば当然工期も長くなります。
洗い張り、仕立てまで行って大体2~3か月くらいです。
業者や時期によっても変わりますし、仕立てが海外か国内かでも金額を含め変わる業者が多いので、間に合わせたい日程がある場合は相談してみてください。

丸洗いとは

丸洗いとは、文字通り着物を丸ごと洗う方法です。
イメージとしては通常の洋服クリーニングのように、着物の中では一番基本的なクリーニング方法になります。
特に目立つ汚れやシミがなく、シーズン終わりに箪笥にしまう前はこの丸洗いに出してからしまうのがおすすめです。

丸洗いの流れは業者によってかなりの違いがありますがここでは一例を紹介します。

①汚れのチェック
着物全体にどの程度の汚れがついているのかを確認する工程です。

②ブラッシング
専用のブラシを使い、汚れが目立つ個所を重点的に手作業でブラッシングしていきます。

③ドライクリーニング
一点ずつ専用のネットに入れ、着物専用の有機洗剤でドライクリーニングを行います。

④乾燥
真空低温乾燥機で着物を干し、乾燥させます。

⑤仕上げ
しっかりと乾燥させ、溶剤の匂いなどを揮発させたのちアイロンでふっくらと仕上げます。

丸洗いのメリット

洗い張りに比べて工程が少なく仕立て直しもない簡易的なクリーニング方法のため、期間が短く2週間~1か月ほどで仕上がってきます。
急ぎの場合は相談すれば対応してくれることもあるようです。
また、工数が少なくなる分価格が安くなり通常のお手入れには十分な方法です。

【着物丸洗いの料金相場】
・振袖:8,000円~12,000円
・留袖:8,000円~13,000円
・訪問着:6,000円~8,000円

業者によって価格の差は出ますが、上記の金額を相場として考えておきましょう。
また、丸洗いでは落ちないシミがあると別料金かかりますので見積もりを事前にもらうと安心です。

丸洗いのデメリット

丸洗いは着物の表面についたばかりの油性汚れを落とすことを目的としたクリーニング方法です。
石油系の揮発性有機洗剤を使用したドライクリーニングで、ファンデーションや皮脂汚れはある程度綺麗になりますが、飲み物や食べ物、雨や汗などの水性の汚れは綺麗になりません。
別途汗抜きやシミ抜きの工程が必要になりますのでご注意ください。

.洗い張りと丸洗いの比較

「着物のクリーニングが主に洗い張りと丸洗いの二種類から選べることはわかったけど、どんな選び分けをしたらいいのかわからない…」

自分では中々適したクリーニング方法を見極めるのは難しいですよね。
どう判断したらいいのか迷った場合は下記を参考にしてみてください。

期間 費用 メリット デメリット
洗い張り 2~3か月 40,000円~70,000円 繊維の奥まで水を通して汚れを出し切り、経年劣化で浮いてくる目に見えない汚れの元なども落とすことが可能 工程が多いため、費用や期間が高くなる
丸洗い 2週間~1か月 6,000円~13,000円 比較的安値で期間も短く、着用時期が迫っている時などに対応しやすい 皮脂汚れなどの油汚れは落とせるが、汗などの水溶性の汚れは落とせない

上記の違いから、
・最終着用日から年数が経っている着物
・貰い物で保存状態が不明、ずっと仕舞いっぱなしの着物
・カビっぽい、埃っぽい、など明らかに汚れっぽい…と感じる着物
・貰い物で寸法が合わない着物

このような着物は洗い張りがおすすめです。
水を通した洗いになるため、汚れをごっそり落とせることに加え、仕立て替えの際に寸法の調整や裏地の取り換えも可能です。

・毎シーズン着物を着用している人のシーズン終わり
・特に目立つ汚れがなく、定期的に虫干しをしている着物
・仕立て上がってからのクリーニングや、洗い張りをした後のクリーニングをきちんと行っている着物の通常のお手入れとして
・ついたばかりのファンデーションなどの皮脂汚れを落としたい着物
・着用期日が迫っていて、とりあえず綺麗にしたい着物

このように、比較的きちんと着物の手入れを行っていて風を通していたり定期的に着ている着物を箪笥に仕舞う前に行うクリーニングとして丸洗いはおすすめです。
ただし、丸洗いは油性の汚れしか落とせないため、雨に濡れたり汗を多めにかいたと感じた場合は汗抜きを一緒に行いましょう。
※特に雨に濡れた場合は早急にクリーニングに出しましょう。シミになったり、正絹は雨で縮む性質がある為、放置しておくと型崩れを起こす危険性があります。

価格の兼ね合いですべての着物を洗い張りに出すことは難しいかもしれませんが、
長く大切に着たい着物や思い入れのある着物、普段着として汚れても特に気にならない着物など自分の中でも仕訳して方法を選べるといいですね。

また、一度きちんと洗い張りをした着物はガード加工(撥水加工)をかけることで汚れもつきづらくなりおすすめです。
その後のクリーニングも無料で何年間かサービスしてくれる業者もありますので、長く大切に着たい着物は検討してみるのも一つです。

着物クリーニングの頻度

「クリーニングの違いはわかったけど、どのくらいの頻度で洗いに出せばいいんだろう…?」
着物を仕舞いっぱなしにしてはいけない、というのはよく聞きますが具体的にはどの程度、どんな手入れが必要なのでしょうか。

基本的には洋服と同じ考え方です。
冬物コートは暖かくになったら、スーツは入学式が終わったら仕舞う前にクリーニングに出しますよね。
ただし着物はデリケートなので放置しておくとカビが生えたり、思わぬ汚れが浮き出てくる可能性がありますのでこまめに状態を確認するようにしましょう。

シーズン毎に洗う

洋服のコートなどと同じように基本的にはシーズン毎にクリーニングに出します。

単衣 夏単衣(薄物)
洗い張り 10月~5月 裏地の付いた仕立て
洗い張り 6月、9月 1枚生地の仕立て
洗い張り 7月、8月 1枚生地で透け感がわかるものもある(羅、絽、紗など)

着物の衣替えは上記のシーズンと言われていますので、
袷の着物は5月末に、夏物単衣は8月末など仕舞う前に洗いに出しましょう。
単衣に関しては間が2か月空きますので、6月の段階で特に気になる汚れがなければ9月末にまとめてクリーニングで良いでしょう。
ただし気候によって着る時期も幅が増えていますので10月でも単衣を着る場合があります。

「もう今シーズンは着ないな」と思った時にクリーニングしましょう。

イベント毎に洗う

普段着る着物は着用機会が多いのでシーズン毎のクリーニングが良いですが、
振袖や留袖など、着用機会が限られている着物は着用後必ずクリーニングに出すようにしましょう。

気を付けたいのが、普段着ない着物にありがちな
「明日着用するから久しぶりに出したらカビ・虫食い・黄ばみの汚れを見つけてしまった!」
というトラブルです。

そうならないように着用する際は余裕をもって確認するようにしましょう。
クリーニングに出していたとしても長年仕舞いっぱなしの場合は着用前にもクリーニングに出すと気持ちよく着られるのでおすすめです。

シミ・汚れ・汗がついたときに洗う

上記以外にクリーニングに出す必要があるのは、着用後に着物をチェックした際にシミがあった場合です。

確認するべき箇所は
衿元:ファンデーションや日焼け止めなどの皮脂汚れ
胸元・帯の上・上前:食べこぼしなど
裾~お尻部分:泥はねや経血汚れ
袖口:日焼け止めなどの皮脂汚れや水はねなど
袖の裏側:食事のお皿についている場合あり

汚れがつきやすい箇所を確認して、シミがついていた場合はすぐにクリーニングに出しましょう。

また、汗をたくさんかいた時は注意が必要です。
着物を脱いだ時に帯周りなどに湿気を感じる場合は汗を吸い取っています。
多少であればシーズン終わりのクリーニングで問題ありませんが、あまりにもぐっしょりと濡れている場合はクリーニングで汗抜きをしてもらいましょう。

カビ・虫食い・黄ばみの原因と対策

着物以外にも言えることですが、汚れは染み付いてしまう前に落とすことと
汚れがつかないように対策することが大切です。

着物にありがちなトラブルの原因を知ることで悪化することを防ぐようにしましょう。

・カビ

湿気が大好きなカビが生える原因は、風通しの悪さからくるものです。
湿気対策に除湿剤を箪笥に敷いたり、定期的に日陰に干す虫干しをきちんと行うことで対策可能です。

・虫食い

正絹の着物が虫食いに合っている場合は保存環境を見直してください。
虫が好むのはウールの着物で、正絹の着物は虫に食われるものではないと言われています。
同じ箪笥の中にウールと正絹を一緒に収納していると、虫が間違えて正絹を食べてしまうようです。
防虫剤を箪笥に入れる方が多いのですが、期間が経った防虫剤が正絹の着物にシミをつくることもありますので、ウールと正絹は別の箪笥に仕舞うようにしましょう。

・黄ばみ

衿元や胴裏によく見られる黄ばみの原因は、着用時の皮脂汚れや汗です。
特に昔の古い着物の裏地などが黄色や茶色に変色していることが多く見られます。
これは黄変と呼ばれる汚れで脱いだ直後は目に見えなかった汗や汚れが、酸化して黄色く変わっていくことをいいます。
表面についた状態の汚れはすぐに落とせば綺麗になりますが、酸化すると繊維の奥まで汚れが入り込み、シミ抜きとは別の「黄変抜き」という工程が必要になり、さらに色差しなどの技法を行うため料金が上がります。
シミと黄変の見分けは業者さんに相談してみましょう。

着物クリーニングの依頼方法

着物のクリーニングを依頼する場合は、店舗への持ち込みと郵送での依頼の2つの方法がありますが、今回は丸洗いでどのような違いがあるか見ていきましょう。
いずれにしろ洋服とは違い時間がかかりますので、早めに依頼するのが大切です。

持ち込みでの依頼

洋服のクリーニング屋と同じように、店舗へ持ち込みする方法が基本的です。
費用は4,000円~8,000円が相場で、別途シミ抜きなどがなければ2週間~1か月ほどで仕上がってくることが多いです。
やはり顔を合わせて直接の依頼ができるため、汚れの状態などを一緒に見てもらえるので安心感があります。

移動や持ち運びの手間がかかりますので車で来店する場合は駐車場の有無も事前に確認しておきたいですね。
店舗によっては着物を専門でやっておらず、デリケートな着物ではトラブルが起きやすいのでお店選びが大切です。

郵送での依頼

郵送は集荷依頼をすれば自宅まで着物を回収しに来てくれるため移動の手間がありません。
業者によっては自宅に梱包道具を送ってくれる場合もあるので、準備する手間もかからず簡単です。

費用の目安は5,000円~9,000円が相場です。
配送の手続きなどで時間を要するため、期間は約1か月以上かかると想定していた方が良いでしょう。

適切に選ぶことで専門性の高い業者に対応してもらえますが、顔を合わせずメールなどでやり取りをするため信頼できるか見極めが大切です。
また、送料や手数料で持ち込みに比べて割高になる可能性がありますので自身の環境に合った依頼方法を選びましょう。

持ち込みと郵送の比較

期間 費用 メリット デメリット
持ち込み 約2週間~ 4,000円~8,000円 直接状態を見ながらの説明で安心感がある 移動や持ち運びが手間
郵送 約1か月~ 5,000円~9,000円 自宅まで回収があり移動の手間がない 送料で割高になる場合がある・梱包でのシワの可能性あり

・実際に一緒に状態を確認してほしい
・どのようなお手入れが適しているのかも含めて相談したい
実際にモノを見て説明してもらえる専門性の高いお店だと、自分が思ってもいなかったベストなお手入れ方法を提案してもらえることもあります。
馴染みのクリーニング店ができると月によって割引があったり、コーディネートの相談などもしやすくなりますので人と関わりながら着物を楽しみたい人は持ち込み依頼がおすすめです。

・近所にクリーニング店がなく、持ち込みがしづらい
・自宅から出たくない
このような方は、郵送依頼がおすすめです。

価格の違いは大きくはありませんので、地域のクリーニング店と比較して選ぶのが良いでしょう。

着物クリーニング店の選び方

着物は高価なもので一点ものも多いです。
クリーニングもきちんと対応してもらえる専門店に依頼したいですよね。
特殊な技法や知識が必要なため、着物専門店に依頼するのが安心です。

クリーニング店の違い

そもそも洋服と着物では洗い方が異なる上に、
着物は洋服と比べ、高価で繊細なものが多いです。

絞りなどの特別な技法を用いている着物にシワを伸ばすアイロンがけをしてしまうと絞りが潰れて台無しになってしまうなどのトラブルも起きます。
金箔や刺繍など、繊細な着物は気を使うべき部分が多くあるのです。

このように着物の中でも適したクリーニング方法が異なるため、知識のない業者に出すと思ってもいない状態で戻ってくる可能性があり、一度台無しにになった着物は二度と元には戻りません。

最近では着物屋さんでもクリーニングを受けている場合がありますので、近所に着物専門のクリーニングがない場合は、着物屋さんに相談してみましょう。

選ぶときにおすすめの質問

大切な着物を大切に長く着るためにクリーニングをしたいわけですから、
「知識が豊富で技術の高くて、丁寧に対応してくれるお店にお願いしたい」と考えるかと思います。

ですが着物をクリーニングしてくれるお店は数多く存在するので、どのように見極めればいいのか悩みますよね。

コツは、前もって電話で質問をしてみることです。
専門用語を交えて質問した際にどのような返答が返ってくるかである程度お店の姿勢がわかりますので試してみてください。

質問1:丸洗いしてほしいのですが、金額を教えてください。

意外と答えやすい質問かな?と思われがちですが、こういったシンプルな質問にこそお店の姿勢が問われます。
着物の種類を確認してその値段を答えるのが一般的ですが、その際にシミの有無や最終着用時の状態などの事前確認をきちんとできる店舗はシミの値段などもきちんと見積もりをとってくれる傾向があるので、トラブルになりづらく安心です。

質問2:衿元にファンデーション汚れがついているのですが、丸洗いで落ちますか?

基本的な知識があれば答えられる質問ですが、安易に「落ちますよ!」という店舗は避けた方がいいでしょう。
これはついた時期によって丸洗いで落ちるかが変わるからです。
場合によってはシミ抜きでも落ちない場合もありますので実物を確認したり、実際丸洗いをしてみないとわからないこともあります。

こういった説明がきちんとあったり、「シミ抜きが必要な場合500円玉くらいのシミのサイズで1000円~5000円くらいが相場です」というように、きちんと値段の提示があるお店は安心です。

質問3:30年前くらいの黄色いシミですが、落ちますか?

この質問に対して、ただ「落ちますよ!」という返答は論外です。
また、「落ちませんね」という店舗は、丁寧な対応は期待できません。

そもそも30年前のシミは黄変化しており通常のシミ抜きでは落ちないことがほとんどです。
また、古い生地では弱っていてシミ抜きのダメージに生地が耐えられない場合もあります。

黄変は糸の繊維の奥まで変色しているため、黄変抜きという工程が必要になります。
着物の種類や状態によっては黄変抜きができない場合もあります。

仮に落ちない場合でも、上から柄を足したり、箔をかけて汚れを隠すことも可能ですので、そういった提案があるかどうかで知識量やお店の姿勢をみることが可能です。
ただし、こういった技法は職人の手作業とセンスが問われるもので、金額も手法によって大きく変わりますのでよく相談しましょう。

以上のような質問をしてみて、納得のいく返答があれば相談してみましょう。

また、当然のこととしてどんな組織にも新人さんは存在します。
そういった方がベテランの方と同じような返答ができないのは当たり前ですので、そんな時はきちんと
「加工(お手入れ)に関して詳しい者・担当者に確認して折り返しご連絡いたします」
など、その場しのぎの返答をしないかどうかで判断してみてくださいね。

こんなときどうしたらいい?

クリーニングに出したくても、すぐに頼めない場合はどうしたらいいのでしょうか。
日中忙しい方や、近所にクリーニング店がなかったりですぐに頼めないこともあるかと思いますので、そういった時の対処法をご紹介します。

ただし、いずれも応急処置にしか過ぎませんのでなるべく早く専門のクリーニング店へ持ち込むようにしてください。

しみがついてしまった

着物は大体がシルク=正絹でできています。
絹は水や摩擦に弱いため、汚れがついたときにおしぼりなどで擦ると逆効果です。
生地が傷むうえに、汚れが広がりその後に専門店に持ち込んでも悪化させて治らなくなる場合もありますので、基本的には触らず持ち込むようにしてください。

応急処置としては、表面の水分や汚れを移すようにタオルやティッシュで優しく抑えること。

畳んで持ち込む際に別の個所に汚れがつかないように、汚れの部分にタオルやティッシュを当てて畳みましょう。

着物の胴裏が黄ばんでいる

胴裏というのは、袷の着物の裏側にある白の裏地のことです。
着た時に背中にあたる部分が汗を吸いやすく、変色しやすいため、対策として汗抜きを行うことが大切です。

胴裏が変色していた場合、まずは黄ばみの状態を確認してください。

①全体がうっすら黄色
酸化が原因。急速に進むことはないため、通常の丸洗い・汗抜きのお手入れで様子を見てください。

②斑点のような黄色
カビが原因の可能性あり。カビを除去しなくてはならないため、胴裏の変更を検討する必要があります。

③全体的に濃い黄色
リサイクル品や貰い物など、古い着物に多く、酸化に加えて増量剤が原因の可能性あり。
表地にまで影響が出る可能性が大きいため、速やかに胴裏の取り換えをしてください。

以上のように黄ばみと言っても段階があります。
特に③の場合は洗い張りをして仕立て直しをすることになり値段との兼ね合いがありますので、すぐに対処するのは難しい問題ですが気づいたら専門店で相談するようにしましょう。

汗をかいたとき

着物は洋服と違い、手軽に自宅で洗濯することはできません。
しかし、汗などの水分には非常に弱いため、対処が必要です。

自宅に帰って、着物に汗が染みこんでると感じた場合は簡単な汗抜きを行ってください。
①霧状に細かく出るタイプの霧吹きで、着物に軽く水を吹きかける
②タオルで挟み込むようにして水分をタオルに移し替えるように、軽くたたく
③着物用ハンガーで陰干しをする

上記はあくまでも自宅でできる応急処置です。
シーズン終わりには必ずクリーニングに出し、汗抜きを行いましょう。

着物を着た後の簡単お手入れ

着物は繊細なため、お手入れをするにもこんなに大変なのか…と思われた方がいるかもしれません。
しかし、日ごろのお手入れをきちんと行っていれば黄変やカビに悩まされる可能性は限りなく低くなります。
何事もそうですが日々の積み重ねが大切ですので、着物を着た後の簡単なお手入れ方法をご紹介します。

①着物を脱いだら、必ず着物用ハンガーにかける
着物用がなければ通常のハンガーでも代用はできますが、型崩れに気を付けましょう。
帯や小物類も一緒に陰干しして湿気を取ります。
室内でも陽が当たる場所では色褪せしますので、必ず陽の当らない場所に干すよう注意してください。

②シミや汚れがないか要確認
衿や袖口など、汚れがつきやすい箇所を確認してください。
汚れがついていた場合は⇒5-1.しみがついてしまった

③一晩陰干ししたら畳んでたとう紙に包み、桐の箪笥へ
ハンガーで干しっぱなしにすると、袷の着物の場合裏地がたるんでしまい着付けがしづらくなってしまいます。
最低でも2日以内には畳むようにしましょう。
保管は桐の箪笥が理想的ですが、ない場合は形が崩れない風通りの良い場所に安置しましょう。

以上が着物を脱いだ後に行うお手入れ方法です。
とにかく湿気を取ることが目的です。

注意点として、クリーニング上がりに、ビニールや移送の際のシワ防止に間に紙が挟まっている場合がありますが、保管の際は紋・箔の部分の薄い紙以外の厚紙は外すようにしてください。
そのままにしておくと風通しが悪くなりカビの原因になります。

まとめ

簡単な応急処置も紹介しましたが、すぐにクリーニングできない場合は自分で対処した上で、専門家であるクリーニング店へ依頼することが大切です。

着物はきちんと着物に合ったお手入れをすることで、長く大切に付き合っていける衣服です。
着物の状況をきちんと判断し、適切なお手入れを施してくれる店舗を見つけて、継続的にお手入れをしていきましょう。