式典や祝賀パーティーの着物は何がおすすめ?会社や海外で参加する際の注意点も

式典や祝賀パーティーの着物は何がおすすめ?会社や海外で参加する際の注意点も

「ちょっとしたパーティーにおすすめ!」というキャッチフレーズを、洋服や服飾雑貨の売り場で目にしたことはありませんか?

ドレスやワンピース、あるいはアクセサリー、バッグなど、洋服ならドレスコードもなんとなく理解できるけれど、着物でパーティーに出る場合はどうしたらいいかわからない……そういった方に向けて、パーティーシーンでの着物の選び方やコーディネートのポイントなどをご紹介いたします!

カジュアルなパーティーより少し畏まった場面でも不安になることなく、上品かつ華やかな和装を楽しんで、大人の女性への一歩を踏み出しましょう。

式典パーティーの着物を選ぶポイント

式典やパーティーの代表格といえば、園遊会や祝賀会、受賞式典など…一口にパーティーと言っても、様々な場面が思い浮かぶことでしょう。

同じパーティーシーンでも、出席する立場によってどのような着物を着るかは悩みどころです。
そこで、わかりやすいよう洋装の場合と比較しながら、パーティーのTPOを踏まえた着物の種類と使い分けについて解説していきます。

ホストかゲストかで変わる装い

自分がパーティーの主催者(ホスト)や主役である場合には、最高格の着物を選びましょう。
ゲスト側は主役を立てるため、それよりもワンランク下の格となる着物を選ぶのがマナーです。
ホスト側であれば礼装、ゲスト側であれば準礼装を着用するというふうに覚えておきましょう。

例外として、呉服屋さんなどで開催されるパーティ―の場合は、主催者であるお店ではなくお客様が主役となります。
その場合、お店の従業員はホスト側とはいえワンランク下を意識して、お客様よりも控えめな装いがベストとなります。

着物にもドレスコードがある

一般的に、「ドレスコード」は時間帯によって変わるものも含め、合計7種類存在します。
フォーマルからカジュアルまで、ここでは着物にフォーカスしたドレスコードについて詳しく紹介していきます。

【フォーマル(第一礼装・正礼装)】
その名の通り、最も格式の高いドレスコードです。
主に結婚式での新郎新婦、その両親や媒酌人、あるいは国家式典への参加もこれに含まれます。
結婚式の新郎新婦であれば、洋装の場合はモーニングやウェディングドレス、着物の場合は五つ紋付きの羽織袴や白無垢、色打掛や振袖が相応しい装いです。
また、新郎新婦の母親であれば黒留袖、親ではない既婚女性の場合は五つ紋の訪問着などが第一礼装の着物となります。

【セミフォーマル(準礼装)】
結婚式や披露宴のゲストなど、第一礼装よりもワンランク格下の装いがこれにあたります。
紋の入った訪問着や色無地、江戸小紋、振袖が洋装でいうドレスのような準礼装の装いです。

【インフォーマル(略礼装)】
セミフォーマルよりも気負いのないパーティーシーンでは、紋も必須ではなくなります。
セミフォーマルまでは、洋装の場合アフタヌーンドレスやイブニングドレスなど、時間帯によって着用するものが異なりますが、インフォーマル以下の格式では終日同じ装いでOKです。
「平服」とも表記されることのあるインフォーマルですが、あくまでフォーマルに準じた場であることは忘れないようにしましょう。
上品な色合いの訪問着、色無地や付下げなどがおすすめです。

【スマートエレガンス(略礼装)/カジュアルエレガンス(略礼装)】
結婚式の二次会やお披露目パーティなど、ややカジュアル寄りのパーティーにゲストとして参加する場合は、スマートエレガンスかカジュアルエレガンスの装いが相応しいです。両者の違いは、より礼装に近い装いか、カジュアルスタイルに近い装いかということ。
付下げや小紋のほか、紬訪問着などもこれに含まれますが、どの程度くだけたコーディネートが許されるか不明な場合は、紋なしの上品な色無地などを着用すると良いでしょう。

【ビジネスアタイア(準・略礼装)】
企業主催のレセプションや株主総会など、ドレッシーなスーツで参加したいような場では、カッチリとした印象を演出する色無地や江戸小紋がおすすめです。
紋はなくても良いですが、江戸小紋の場合はできるだけ柄が細かく、無地に近く見えるものを選ぶとスマートです。
単色の着物で着物をすっきりと見せる分、帯は二重太鼓ができる袋帯か金銀の箔入りの名古屋帯で華やかさをプラスしましょう。

【スマートカジュアル(略礼装・小紋)】
はっきりとしたドレスコードがわからない、レストランでの食事やブライダルフェアなどの場では、あまり畏まらず、かといってくだけすぎない装いをしたいもの。
紋の付いていない付け下げや小紋など、上品ではんなりとした雰囲気の着物を選びましょう。
キリリと装いたい時は、御召着物などもおすすめです。

会社関係はより注意が必要

「ビジネスアタイア」とは、企業主催のパーティやレセプションなどでのドレスコードを指します。
わかりやすく言えば、仕事色の強いパーティでの服装のこと。きちんとしたスーツスタイルが基本となりますが、あくまでパーティーシーンであるため、男性も女性も華やかさを意識することが大切です。

着物の場合、カジュアルすぎるコーディネートは適していません。
企業の上役や取引先が出席する場合が多いので、自分の立場に合った装いを意識しましょう。

比較的華やかな交流の場面であれば、訪問着や付け下げなどの華やかな着物や、洒落着である紬の訪問着などを着用しても良いでしょう。

あるいは、厳粛な雰囲気の総会などであれば、華やかさを抑え、きちんとして見える色無地や無地の御召、江戸小紋などが無難です。

海外のパーティーに着物で行く場合

海外のパーティーシーンはドレスコードが細かく分かれていますが、着物の場合、それほど細かく意識する必要はありません。

海外で着物を着る場合、上記のドレスコードに気を配りつつも、型破りすぎたり、不似合いな装いであったりということがなければ「着物姿であるだけで喜んでもらえる」という認識で良いかもしれません。
留袖や振袖、訪問着、小紋など、パーティーの雰囲気に合いそうな着物を選びましょう。特に訪問着や小紋は、留袖や振袖と比べて着付けも難しすぎず、華やかに見えるためおすすめです。また、暑い時期のパーティーであれば、浴衣に華やかな帯を結ぶコーディネートも素敵です。

ただし、ゲストとして招かれた場合に、花嫁などの決まった主役よりも目立ってしまうようなデザインの着物は避けましょう。
着物はただでさえ洋服よりも目立つもの。日本人らしい奥ゆかしさを大切に、派手すぎない上品な装いを意識して参加しましょう。

海外で着物を着る際は、洗濯やお手入れの問題もあります。
日本ほどクリーニング環境が整っていない場合もあるため、自分でお手入れができるよう、洗える素材の着物を誂えていくことをおすすめします。

パーティーにおすすめの着物

ここからはドレスコードを踏まえ、具体的にパーティーシーンではどのような着物を選べばいいかについて解説していきます。

立場によって、控えめな装いが適している場合や、逆に華やかで個性的な装いが似合う場面もあります。
ぜひご自身のシチュエーションに合わせた着物選びを心掛けてみてください。

振袖

振袖は、基本的に「未婚女性の第一礼装」とされている着物です。
10代から20代にかけて、若々しさや瑞々しい雰囲気を魅せたい場合に最適な装いと言えるでしょう。

華やかなコーディネートが好まれる場面では、総柄のものや、デザインが派手なものを選びましょう。
金箔や金の刺繍が施された振袖も、豪華な印象を演出できます。

控えめに装いたいという場合には、無地の振袖や、友禅など、柄が小さく上品なデザインのものを選ぶと良いですね。

色留袖

色留袖は、訪問着などと違って上半身に柄が入っておらず、より格式の高い、畏まった印象を与えます。
既婚女性や、振袖に代わる未婚女性の正装となる着物です。

五つ紋、三つ紋、一つ紋の順に格式が高いとされますが、黒留袖に準ずる格式であるため、たとえ一つ紋であってもカジュアルな印象にはなりません。

華やかなパーティーでは、柄の面積が大きく派手な色柄もの、控えめに装いたい場合は淡い色味で上品な柄行きのものを選びましょう。

いずれの場合も、立場が上の方やパーティーの主役よりも目立たないよう、紋の数や着物のデザインに気を遣うことで、マナー違反を避けられます。

訪問着

訪問着は、生地の縫い目をまたいで柄が繋がっている着物を指します。
黒留袖や色留袖と違って胸元にも柄があり、色味やデザインのバリエーションも豊富なため、あらゆるシーンで使いやすい着物です。

ぱっと華やぎのあるデザインの訪問着はもちろんパーティーにぴったり。
落ち着いた色柄の訪問着なら、ビジネスライクなパーティーや厳かなお茶席にも着用できます。

紋については特に厳しいルールはありませんが、格式高い席では紋付きの訪問着が相応しい場合もあります。
ただ、せっかく幅広い場面で活用できる着物なので、誂える時は紋無しのほうが使い勝手が良いかもしれません。

付け下げ

付け下げは訪問着によく似ていますが、柄が生地をまたいで繋がっていないのが特徴です。
訪問着より格は下がりますが、上品な雰囲気があるため、パーティーシーンにも活用可能です。

特に華やかなパーティーシーンでは、柄が多く入った「付け下げ訪問着」を選ぶと良いでしょう。一つ紋の入った付け下げであれば、準礼装として着用できます。
また、色無地に近いシンプルなデザインの付け下げは、控えめに装いたいシーンにうってつけです。

色無地

色無地とは、その名の通り無地の着物のことです。
生地に直接織りだされた地紋が浮かび上がって見えるものもありますが、染めは一色のみで、模様が描かれることはありません。

シンプルなつくりの着物であるため、生地の特徴や紋によって格式も雰囲気もガラリと変わります。

華やかに装う場面では、ぱっと鮮やかな地色のものや、光沢があって地紋が浮き出ているもの、紋がついているものを選びましょう。
色無地の場合は一つ紋が一般的で、三つ紋や五つ紋が入った色無地は略礼装となり、パーティーよりも結婚式や式典に向いています。
あまり目立ちたくないという場合は、色味や地紋が控えめな色無地を選ぶと良いです。帯や小物を変えれば、普段着にも大活躍しますよ。

江戸小紋

江戸小紋は柄が非常に細かい着物で、遠目に見ると無地のように見えます。
とはどんな着物か。

特に、行儀・鮫・角通しの柄は「三役」、三役に万筋・大小霰を足した五つの柄は「五役」と呼ばれ、紋を入れれば格式高い場でも着用可能です。
また、柄が細かければ細かいほど格が高いとされているため、一つ紋付きの細かい柄の江戸小紋は訪問着のようにフォーマルシーンで使われます。

明るい色目の、遊び心のある柄の江戸小紋や、落ち着いた色目の三役江戸小紋など、場面によって使い分けを心掛けましょう。

御召

基本的に、フォーマル向きなのは染めの着物で、織りの着物はカジュアル向きとされていますが、御召は織りの着物の中でも最上級品です。上質な風合いが魅力の生地を使用しており、スーツのような感覚で男女共にスッキリと装える着物です。

紋は必須ではありませんが、先染めの着物であるため、どうしても必要な場合は縫い紋を入れることになります。

染めの着物と比べて華やかさは少なめですが、地紋がしっかりと浮かび上がるつややかな素材感のものや、目立つ色味のものを選ぶとドレッシーさを演出できます。

地紋が目立たず、無地に近い御召着物はまさにビジネススーツのような、控えめかつスマートな印象になります。

パーティーの着物に合わせたい小物のコーディネート

袋帯

パーティーシーンには、二重太鼓に結べる袋帯が適しています。デザインに決まりはありませんが、吉祥文様が織りだされた帯や、金銀の糸があしらわれた帯であれば、なおいっそう華やかに装えます。同じ袋帯でも、織りではなく染めで模様が描かれた帯や、長さが名古屋帯と同じで少し短い「京袋帯」などは少し格が下がるため、合わせる着物に気をつけましょう。

豪華な訪問着や振袖などの場合は、長さがたっぷりある袋帯で変わり結びをしても素敵ですね。

ハンドバッグ

パーティーのように華やかな席では、粋なハンドバッグでおしゃれに装うのも素敵です。
洋装に合わせるパーティーバッグや、クラッチバッグを合わせても良いでしょう。着物用バッグの場合は、金銀があしらわれているものを選ぶと豪華な印象になります。刺繍やビーズ、パールなどで飾られたバッグもパーティーにはぴったりです。

草履

草履については、基本的に着物や帯の雰囲気に似合うものを選べば問題ありません。
五つ紋のついた格式高い着物にカジュアルな雰囲気の草履を合わせるなど、極端にちぐはぐな組み合わせにならなければOKです。

上品な組紐の鼻緒をあしらった五嶋紐の草履は、華美になりすぎず気品を添えてくれる上、着用シーンも幅広くおすすめです。
低反発のクッションで歩きやすいため、長時間立ち歩く席でも疲れにくいのもポイントです。

髪飾り

着物のヘアアクセサリーといえばかんざしが王道ですが、パーティーの場合はヘッドドレスで華やかさを演出しても良いでしょう。

ゴールドやシルバー、パールをあしらったキラキラとしたものや、コサージュや布地を組み合わせた個性的なものなど、ヘッドドレスのバリエーションはさまざま。
洋装向けのアイテムを上手く活用することが、パーティースタイルのコツです。

アクセサリー

着物に合わせるピアスやイヤリングは一粒パールがおすすめですが、こちらもパーティーシーンであればルール無用。ドレスに合わせるアクセサリーを選ぶ気持ちで、お好みのデザインを探してみてください。

ただし、ワイヤーを使用した長さのあるピアスなどは、襟などに引っ掛かって着物を傷つけることがないよう注意しましょう。

帯留

金銀の箔糸を使った三分紐に、目立つデザインの帯留を合わせると一気にパーティー感が増します。
帯留を使わず、太めの帯締めを結んでも良いですが、着物や帯の柄とリンクさせた小物を選ぶのも楽しいですよ。

ピアスとお揃いのデザインにしたり、小さな帯留めを二つ並べて着けたりすれば、おしゃれ度もグッと上がります。

まとめ

パーティーシーンのコーディネートでは、ドレスコードを意識することが重要です。
格式高くきちんとした雰囲気のお席なのか、あるいは華やかに個性的に装うことが推奨されているのかなど、あらかじめ確認するようにしておきましょう。
カジュアルなお席であれば、洋装ミックスなスタイルや大胆なアレンジも喜ばれることでしょう。

特に、自分以外の方がパーティーの主役となる場合は「礼を尽くす」ことを心掛けましょう。日本人らしい美学を大切に、自分のためではなく相手のために装うという点を忘れなければ、マナーを逸することはありません。

その時その場に合った着物スタイルで、パーティーを満喫してくださいね。