着物の種類

2021.10.8

着物の種類・TPOに合わせた、着物の格をわかりやすく解説

着物の種類・TPOに合わせた、着物の格をわかりやすく解説

夏祭りでの浴衣や、成人式での振袖、卒業式の袴などを着てみて、「もっと着物を着てみたい!」と思った事はありませんか?一着用意しておくと、七五三から卒・入学式まで使えて便利、と聞いて興味を持った人もいるのではないでしょうか。
ところが、いざ、実際に買ったりレンタルしたりするとなると、「種類がたくさんあって分からない」と感じる人も多いはず。

そこで今回は、代表的な「着物の種類」を軸に、TPOに合う着物の「格」を解説します。

まずは大まかに「着物の格」を押さえよう

着物には、着ていくシーンに見合う「格」というものがあります。そう聞くと「難しそう」と腰が引けてしまいがちですが、洋装でも、普段着からビジネスシーン、冠婚葬祭など、TPOに合うスタイルを当たり前のように使い分けていますよね。

それと同じように、着物にもTPOに合わせた選び方があるのです。ただ、「帯」や「小物」、「紋の入り方」などの組み合わせによって、微妙に「格」が変化してしまうのが、和装のややこしいところ。

まずは、軸となる着物の種類別に、着物の「格」をざっくりと把握してみましょう。

着物の格 着物の種類
高い 第一礼装 黒留袖、本振袖、喪服、花嫁衣装
準礼装(略礼装) 色留袖、訪問着、付下げ、色無地
外出着 小紋、紬
低い 普段着 木綿・ウールの着物、浴衣

第一礼装は、主に結婚式の主役・親族、または葬儀の時のための着物です。準礼装は主に、正装を求められる儀式などの場で着られるフォーマルな装い。外出着はパーティなどでのお呼ばれシーンでも着ることができる大人の装い。普段着は、その言葉のイメージの通り、最もカジュアルな装いです。

着物の「格」を把握する上で、大切なのは「主役よりも格を下げる」こと。例えば、結婚式であれば、主役の新郎新婦と、その親族の「第一礼装」に比べ、ゲストは「準礼装」を選びます。七五三であれば、主役は子どもたちです。そのため、両親は子どもたちより1ランク下の「格」に合う着物を選ぶのがポイントです。

着物の「紋」はここを押さえて!

また、背中や肩付近に「紋」が入ると、その入っている数が多いほど、着物の格は上がると覚えておくと良いでしょう。また、紋を描く技法にも格の順番があります。

着物の格 紋の入る位置
高い 五つ紋 背中の中心、両胸、後ろの両袖(肩)の5カ所
↑↓ 三つ紋 背中の中心、後ろの両袖(肩)の3カ所
低い 一つ紋 背中の中心の1カ所
紋の例

紋には色々な形がある

着物の格 紋の入る位置
高い 染め抜きの日向紋(陽紋) 最も格の高い紋の入れ方。紋のデザインを白色で染め抜いて入れる高度な技法
↑↓ 染め抜きの影紋 紋の輪郭のみを白い線で染め抜く技法。日向紋の略式にあたり、大抵は一つ紋で使われる
>低い 縫い紋 影紋と同様、紋の輪郭を色糸を使い刺繍した紋。おしゃれな人に支持されており、準礼装(略礼装)で使われることが多い

最も「格」が高い着物=「第一礼装」

第一礼装(だいいちれいそう)は、最もフォーマルな装いが求められる儀式で、主に主役とその親族が着る服装のこと。それぞれの種類別に特徴を紹介します。

既婚女性の第一礼装「黒留袖(くろとめそで)」

黒留袖を着た女性

黒留袖のきもの

主な着用シーン 結婚式・披露宴、格式あるパーティ・式典
着る人 新郎新婦の母、祖母・おばなどの親族、仲人夫人(姉妹やいとこにあたる人は、友人より格上ではあるものの、親族内では格下にあたり、地域や家により考え方が異なるので、確認が必要)
染め抜き日向紋/五つ紋
特徴 黒地の着物に、裾(すそ)を中心に柄を配したデザイン

かつて「黒留袖」を含む「留袖」は、既婚女性が普段着用する、袖の短い着物全般を指しましたが、明治時代以降、「黒留袖」といえば、既婚女性が着る、一番格の高い着物のことを指すようになりました。西洋のブラックフォーマルの概念が影響を及ぼしたともいわれています。

江戸時代に「留袖」といえば、18歳になった、もしくは結婚した女性が、それまで着ていた振袖の袖を短く仕立て直していたもののことで、いろいろな色やデザインのものがありました。袖を「切る」というと縁起が悪いので「袖を留める」という言い回しから「留袖」と呼ばれるようになったのだそう。

江戸時代の後半から、大奥の女中や芸者衆の流行りを真似て、黒く染めて五つ紋を染め抜いた留袖に、裾周りだけ模様をあしらった、現在のようなデザインが広まったという説もあります。

未婚女性の第一礼装「本振袖(ほんぶりそで)」

振袖を着た女性

振袖

主な着用シーン 結婚式、格式あるパーティ・式典(祝儀)
着る人 未婚の女性、新婦
正式には染め抜き日向紋(現代は紋を入れない場合も第一礼装として認められている)
特徴 華麗な総模様で袖が長いのが特徴。袖が長いほど格が上がる。第一礼装に相当するのは、一番袖の長い「本振袖」のみ

縫い合わせた部分も絵柄が一続きになるように入った「絵羽付け模様(えばづけもよう)」を全面にあしらった華麗な着物。

一番袖の長い「本振袖」は花嫁衣装にもなるため、お呼ばれのゲストが着用する場合は、本振袖よりも一つ格が下がる準礼装の「中振袖」を着用するのが無難。洋装と同様、花嫁と色がかぶらないようにする配慮も必要です。

ちなみに、成人式で選ばれる振袖は「中振袖」が主流。本振袖は袖丈=3尺3寸(約115cm)、中振袖は袖丈=2尺8寸(約105cm)、現在はあまり流通していませんが、小振袖は袖丈=2尺3寸(約85cm)が目安です。

花嫁衣装は花嫁専用の第一礼装を着用

白無垢を着た女性

白無垢

色打掛を着た女性

色打掛

引き振袖を着た女性

引き振袖

花嫁衣装の種類 特徴
高い 白無垢(しろむく) 室町時代から登場し、婚礼衣装の中で最も格式が高い花嫁衣装の一つ。掛下(かけした)と呼ばれる着物の上に羽織る「打掛(うちかけ)」、帯、小物に至るまで、全て白で統一する。首から上は文金高島田に角隠しか、綿帽子を付けるのが伝統的なスタイル。色は白であるものの、織りや刺繍といった生地の風合いや、縁起の良い吉祥模様(きっしょうもんよう)が描き出されるなど、あしらいによって雰囲気が変わるのも特徴の一つ
↑↓ 色打掛(いろうちかけ) 着物の上に、華やかな色柄の打掛を羽織るのが「色打掛」。最近では、白無垢で挙式をした後に、白の打掛から色打掛に変えて、祝宴のお色直しとして選ばれることが多い
低い 引き振袖 「本振袖」をおはしょりをせずに裾を引いて着付ける、花嫁のためだけの装い。裾のヘリに綿を入れてふっくらとさせる「ふき」が特徴で、成人式に着た本振袖を花嫁仕様に仕立て直すことも可能。引き振袖の中では、黒が一番格が高く、次いで色引き振袖の順になる。

新婦のために用意される和の花嫁衣装は大きく分けて3種類。広くは純白の「白無垢」がイメージされやすいですが、どの装いでも神社などの神前式で着用することができます。

「和の花嫁といえば綿帽子」「花嫁といえば白」のイメージから、やはり白無垢が一番人気ですが、打掛を替えるだけの手軽さから、お色直しでは「色打掛」も人気。最近では綿帽子の下に専用のフレームを入れることで、洋髪でも綿帽子が潰れることなくかぶれるようになり、お色直しの色打掛で洋髪を披露することが増えています。

また、おしゃれな花嫁に支持されているのが「引き振袖」です。白無垢や打掛に比べ、帯が目立つので、結び方や小物でのコーディネートが楽しく、自分らしさを表現できるのが最大の魅力。

遺族が着る「喪服」も第一礼装に相当

地域や家の伝統によって差が出やすいのが「喪服」ですが、喪主や故人に近い親族が着る「黒喪服」は第一礼装に相当します。

喪服のややこしいところは、着物に「黒喪服」「色喪服」の2種類、帯に「黒喪帯」「色喪帯」の2種類があり、その組み合わせによって格が変わる点。また、祝儀と同様に、参列者は主催者側である親族よりも格を下げる配慮が必要です。

また、通夜・告別式・一周忌・三周忌・七周忌以降と、徐々に格を下げていく必要もあります。レンタルをする場合などは、下の表を参考にしつつ、故人の家の風習も確認しておくと安心です。

一般的な喪服の種類

喪服の種類 特徴
高い 黒喪服 染め抜き日向紋/五つ紋 黒一色の着物に五つ紋を染め抜いた着物。一番「格」の高い第一礼装であるため、一般的に告別式では、喪主・三親等までの親族が着用する
低い 色喪服 染め抜き日向紋/三つ紋か一つ紋 紫や茶、藍色、灰色など、黒以外の暗い色に三つ紋、もしくは一つ紋を染め抜いた無地の着物。一般的に告別式では、友人や同僚など、故人から遠い関係の参列者が着用する

一般的な喪帯の種類

喪帯の種類 帯の種類
高い 黒喪帯 名古屋帯が一般的。袋帯・京袋帯の場合もあり 黒一色で、慶弔(けいちょう)に使われる地紋(柄)などが織り込まれた格式のある帯
低い 色喪帯 灰色や紫などの地味な地色で、流水や雲取り、梵字(ぼんじ)や経文(きょうもん)などが地紋にあしらわれた帯

一般的な喪服と喪帯の組み合わせ

喪服の格 着物と帯の組み合わせ 主に着る立場の人/場所
高い 第一礼装 黒喪服×黒喪帯 喪主・三親等の親族/通夜・告別式・一周忌
重い略礼装 黒喪服×色喪帯 喪主/三周忌
三親等の親族/一周忌・三周忌
その他の参列者/通夜・告別式・一周忌
軽い略礼装 色喪服×黒喪帯 喪主/七周忌以降
三親等の親族/三周忌以降
その他の参列者/一周忌以降
低い 色喪服×色喪帯

二番目に「格」が高い着物「準礼装」

準礼装は主に、正装を求められる儀式などの場では、主催者から一つ「格」を下げた装いに当たり、招待されたゲストが着用します。披露宴や、格式ある茶会・パーティなどから、七五三、卒・入学式などまで、着られるシーンが幅広いのも特徴。4種類ある準礼装を、「格」の高い順から見ていきましょう。

未婚女性も着られる準礼装「色留袖(いろとめそで)」

主な着用シーン 結婚式・披露宴、ドレスコードのあるパーティ・式典、格式あるお茶会
着る人 既婚女性や、振袖を卒業した未婚女性
染め抜き日向紋/一般的に三つ紋もしくは一つ紋
特徴 黒地の以外の着物に、裾(すそ)を中心に柄を配したデザイン

「色留袖」は「黒留袖」と違い、紋の数を変えられるのが特徴。五つ紋だと第一礼装に相当するので注意してください。三つ紋や一つ紋にすることで、着る機会の幅が増えます。

第一礼装の「黒留袖」や「五つ紋の色留袖」は、衿(えり)、裾、袖口(そでくち)などに白い布を縫い付けて2枚の着物を重ね着しているように見せる「比翼仕立て」にしますが、「三つ紋や一つ紋の色留袖」は、白い伊達衿(だてえり)だけを付けて訪問着風や、薄い色の伊達衿を合わせるなど、おしゃれの幅も広がります。

また、「黒留袖」は「一越縮緬(ひとこしちりめん)」という生地で仕立てられることが一般的ですが、「色留袖」の生地には決まりがありません。

未婚・既婚を問わず社交着として着られる「訪問着(ほうもんぎ)」

主な着用シーン 結婚式・披露宴、ドレスコードのあるパーティ・式典、格式あるお茶会
着る人 婚礼や茶会などに招待された女性全般
染め抜き日向紋・影紋・縫い紋/一つ紋
特徴 縫い目にまたがる一枚絵のような「絵羽付け模様」を施した、美しい着物。格調高い豪華な絵柄に、一つ紋をつけることで、準礼装として装うことができる

最も幅広く活用できる着物が「訪問着」。年齢や既婚・未婚を問わず着られるほか、伝統的な古典柄からモダンなデザインまで、バリエーションが豊富です。格調高い古典柄や、豪華な柄の着物は、一つ紋を付けることで、準礼装として着用できます。

「色留袖」との見分け方は上半身の柄をチェック。胸〜肩周りから袖にかけて流れるように柄が入っていたら「訪問着」です。

紋は「格」の高い染め抜き日向紋はもちろん、線の細い控えめなイメージの影紋や、色糸をあしらえることから縫い紋を選ぶことも可能。着物の柄や小物のコーディネートを変えることで、フォーマルにも、少しカジュアルな雰囲気のパーティにも調和させることができる、柔軟性が特徴です。

「紋なしの訪問着」なら、子どもの卒・入学式などの式典、また七五三など着られるシーンが増えるので、最近は紋を入れずに仕立てる場合も増えているようです。

「訪問着」の略式版が「付け下げ(つけさげ)」

主な着用シーン 「訪問着」と同等に着られるが、帯の組み合わせにより「格」を落として、子どもの卒・入学式や七五三、お客様をお迎えする亭主の立場など、「主役を引き立てたい場」で着用されることが多い
着る人 女性全般
入れないことが多い
特徴 縫い目にまたがる「絵羽付け模様」を簡略化した着物。最近では柄が多様化して区別が付きにくいこともあり、模様の格や豪華さで着分ける場合もあり

仕立てた状態では「訪問着」との区別にプロでも迷うことがあるのが「付け下げ」。「訪問着」は白生地を裁断してから、縫い目にも流れるように模様を染める「絵羽付け模様」なので、呉服店などでは、仕立てられた状態になっているのに対し、「付け下げ」は先に染められて反物の状態で売られていることが多いです。

ただし、仕立てた状態では、プロでも「訪問着」と「付け下げ」の区別に迷うこともあり、一見して柄がきらびやかで豪華なものを「訪問着」、比較して地味目だったら「付け下げ」と判断される場合もあります。華やかさは保ちつつ、「訪問着」よりも主役をさりげなく引き立てる気遣いを見せることができるため、装える機会に幅が広いのも特徴です。

紋付きで慶弔の両方に対応可能な「色無地」

主な着用シーン 子どもの卒・入学式や七五三、茶会、葬儀(紫・茶・藍色・灰色などの暗い色に限る)など
着る人 女性全般
染め抜き日向紋・影紋・縫い紋/一つ紋
特徴 地紋のある生地を黒以外に染めた、柄のない無地の着物。染め抜きの五つ紋を入れると第一礼装に「格」が上がるので注意。「格」の高い帯合わせで、準礼装として装える

明るく華やかな色合いなら結婚式のような慶事の場で、紫や茶、藍色、灰色などの暗い色合いなら、色喪服として着用することもできる着物が「色無地」です。

元は江戸時代の末期、庄屋などの主人のお供をする使用人などが多く着用していた着物で、戦後、教育精度の普及に伴い、入学式や卒業式などの参加する母親が増えたことにより、「色無地」を着用する人が増えたといわれています。

最近では、国際的なビジネスシーンなどで活躍する女性にもおすすめで、紺や緑、灰色や茶といったスーツのような色合いの色無地なら、商談などの勝負所にもぴったりの着物です。一つ紋の「色無地」であれば、かなり丁寧な印象に。

パーティから普段の趣味まで応用範囲の広い「外出着(洒落着)」

「第一礼装」「準礼装」と「礼装」と呼ばれる装いが、儀式や公の場で着用するのに対して、「外出着」は私的なパーティなどで華やかに装いたい場合に選びます。少し「格」のある場から、趣味として楽しむ場合まで、TPOに合わせて細かく調整やコーディネートが楽しめるのが特徴です。

観劇やカジュアルな会合には「小紋(こもん)」を

主な着用シーン お稽古事、観劇、友人との食事会、カジュアルなパーティ、軽いお茶会
着る人 女性全般
なし
特徴 全体に模様が繰り返されている「型染め」の着物

元々は江戸時代、武家の礼装「裃(かみしも)」に用いられ、遠目には無地に見えるほど細かく連続性のある単色の柄「江戸小紋」として発達し、幕末に入ってきた化学染料によって、染め技法が近代化した明治・大正時代に、多色のものや大胆な図柄の「小紋」が誕生します。「大正浪漫(ろまん)」を感じる柄、と聞くとイメージしやすいかもしれません。

現代の「小紋」は、繰り返し「型染め」されたものとされ、細かいものから大柄、総柄、飛び柄など、さまざまな柄が存在します。その模様により、微妙に「格」が上下するので、例え格式張らない場であっても、パーティやお茶会などには古典柄を選ぶなどの配慮は必要。

商談のようなビジネスシーンには格のある「江戸小紋」、通常の「小紋」でも、落ち着いた柄であればビジネス交流会などにもおすすめ。また、柄やコーディネートを演目や役者のテーマに合わせて歌舞伎鑑賞の際に装うなど、大人の「外出着」として、幅広い場所で、自分らしいコーディネートを表現できます。

日本各地で伝統柄が受け継がれる織りの着物「紬(つむぎ)」

主な着用シーン お稽古事、観劇、友人との食事会、カジュアルなパーティ、軽いお茶会
着る人 女性全般
なし
特徴 白地の反物に後から色や柄を入れる「後染め」の着物に対し、先に絹糸に色を染める「先染め」で、何色かの糸を織って模様にする「織り」の着物。
日本各地で得意とする模様や柄が受け継がれている。代表的な所で、鹿児島県・奄美大島の「大島紬」、沖縄県・久米島の「久米島紬」、茨城県・結城市の「結城紬(ゆうきつむぎ)」など。
後染めに比べ、糸の染色には時間がかかるほか、比較的生地が厚めで丈夫なのも特徴

絹糸を作る養蚕(ようさん)農家の普段着から始まった「紬」は、商品としては使えなかった、あまりのくず繭(まゆ)を使ったため、糸に節があったり、織り上がりに凹凸があるのが特徴でした。一方で、光沢のある上質な糸で織った「大島紬」や「結城紬」なとの反物は献上品としても収められていたため、高級な絹織物と、農家の普段着としての織物の二種類がそれぞれに発展していきます。

最近ではその生地自体の独特な風合いが好まれ、食事会やパーティなど、ちょっとした会合の場や、歌舞伎観賞など広く活躍することから、「紬」は着物を良く着る人に重宝されています。また、シンプルな紬地に「絵羽付き模様」が染められているものや、織り表したものは軽い訪問着とされ、無地の紬は、もう少し、改まった装いにもすることも可能です。

最もカジュアルで自由度の高い「普段着」

洋服でも街中へ出かける時はおしゃれを楽しむように、ちょっとした外出の時に着られる着物が「普段着」です。洋服と同様、コーディネートの自由度も高く、最近では自宅で簡単に洗える着物も多く登場。価格も手を出しやすい商品が増えてきています。

洋服感覚でカジュアルに楽しむ「木綿」「ウール」

主な着用シーン 街着
着る人 女性全般
なし
特徴 安価で丈夫、家庭で簡単に洗濯もでき、普段着の代表格ともいえる着物

普段着の着物といえば「木綿」ですが、昭和の頃から登場した「ウール」も同様に普段着の代表格。裏地のない単衣(ひとえ)の着物で、ワンピース感覚で着られる着物です。

「木綿」は、コットン素材のワンピースと同様、春〜秋にかけて着るもの。色や柄もその時期に合うものが多いです。浴衣と同じ素材のため、「浴衣は着られたから、次は着物にチャレンジしてみたい!」と考えている人にも選ばれています。

一方で「ウール」は、原料が羊毛ですから、木綿よりもシワになりにくく、暖か。そのため、春・秋・冬の3シーズンに渡ってきることができます。寒い季節は厚手のウールを、気温が上がってきたら「サマーウール」と呼ばれる薄い生地の着物を選びましょう。毛織物の「ウール」は、100%だと手触りにザラつきが出る場合もありますが、最近では、絹糸と織り交ぜて高級感のある光沢が出る「シルクウール」や、素材に温かみの出る「木綿」を織り交ぜた「コットンウール」なども登場しています。

盛夏限定のくつろぎ着&遊び着「浴衣(ゆかた)」

主な着用シーン 夏/祭り・花火大会・旅行・小さな集まりや食事会・街着
着る人 女性全般
なし
特徴 木綿や麻の生地を使い、夏だけに着られる最もカジュアルな装い

浴衣の歴史は意外と長く、始まりは平安時代、貴族たちがサウナのような蒸し風呂に入る時に、汗取りと肌を隠すために麻の単衣を着たのが始まりとされています。

江戸時代に銭湯が登場すると、庶民の間に木綿の浴衣が定着。風通しが良く、吸水性にも優れるため、寝巻きや夏の日常着としても愛用されるようになりました。生地で簡易に仕立てた和服の略装で、生地は木綿が主流。本題は長襦袢を着けず、素肌に直接まとう和服です。

現代では、木綿のほか、風通しが良くより涼しく着られる麻を使った浴衣、木綿と麻を織り交ぜた綿麻の浴衣、さらに速乾性に優れたポリエステル素材の浴衣も登場。木綿・綿麻・ポリエステルであれば、洗濯機で洗うこともできます。麻の場合は、手洗いするのがおすすめ。着用シーンは、夏祭りや花火大会のほか、軽い街着としても着られるようになり、コーディネートの自由度も広がっています。

まとめ

いかがでしたか? 代表的な着物だけでも種類が多く、混乱してしまいそうですが、基本的な考え方としては「場と、周りとのバランスを考えて選ぶ」というのが軸になっています。それは、私たちが普段、洋服を選ぶ時にしているのと、基本的には同じこと。

「どういう場であるか」ということに加え、そこに参加する周囲の人たちの立場を考えながら、着物に帯や小物を組み合わせていくのは、大人ならではの嗜み(たしなみ)とも考えられます。分からないことはぜひ、気軽に呉服店のスタッフなど、専門家に相談しつつ、「選ぶ楽しみ」を体験してみてくださいね。