着物を着る習慣のない方でも、挑戦しやすい浴衣。
浴衣はその着心地の良さから、寝間着や部屋着として昔から愛用されてきました。
「どうやって着たらいいのかわからない」
「浴衣の選び方がわからない」
といった理由で、挑戦できずにいる方もいるのではないでしょうか。
浴衣を着る前に知っておくと役に立つ、浴衣の特徴や着物との違いをご紹介します。
この記事の目次
浴衣ってどんな着物?
浴衣は「夏用の薄手の着物」として位置付けられています。
現代では、夏の風物詩になっている浴衣。
その成り立ちや特徴をご紹介します。
浴衣の歴史
浴衣は、平安時代に貴族が着ていた「湯帷子(ゆかたびら)」が原型となっています。
湯船に浸かる文化がなく蒸し風呂が主流だった当時、汗を吸わせ、裸を隠すために着られていたのが麻生地の浴衣です。
バスタオルの文化がまだ入ってきていない安土桃山時代には、湯上り後、汗を吸わせるために用いられていました。
そして、江戸時代に入り銭湯が普及すると、木綿生地のものが庶民にも広がり、寝間着や夏の日常着として着られるようになったのです。
浴衣の特徴
素肌にそのまま着ることができる浴衣は、湯上り着として用いられていました。
生地も軽く、風通しの良い素材のものが使われており、動きやすくできています。
浴衣を着る相応しい時期
浴衣は軽くて風通しの良い、素材で作られているため、汗をたくさんかく、夏の特に暑い時期に着るのが相応しいとされています。
着物を着る時期に明確な決まりはありません。
ですが、夏祭りが多く開催される7~8月は、浴衣を着ている人が増える時期でもあるので挑戦しやすい時期だといえるでしょう。
男女の違い
男性用と女性用の浴衣には、5つの違いがあります。
・丈の違い
女性は着付けをする際、腰のあたりでたくし上げる必要があり、これを「おはしょり」といいます。男性は「おはしょり」をする必要がないため、女性用に比べて丈が短く作られています。
・くりこしの有無
襟の深さのことを「くりこし」といいます。
女性は襟の後ろを少し開けて着るため「くりこし」があり、男性は首に襟を付けて着るため「くりこし」がありません。
・袖付の長さ
男性用は身ごろと袖が下まで縫われているため、内側が閉じており、女性用は身ごろと袖の縫い合わせ部分が狭いので、内側が開いています。
・衣紋を抜くか抜かないか
男性は首に襟を付けて着ますが、女性は襟の後ろを少し開けて着付けます。
・帯の広さ
男性用の帯は狭いものを骨盤の辺りで、女性用の帯は幅が広いものを胸の辺りで締めます。
浴衣と着物の違い
近年浴衣は、身近なショッピングモールやファストファッションブランドでも目にする機会が多くなりました。
着物よりも手に入りやすい浴衣は、「浴衣」として認識されていることが多くありますが、しっかりとした着物の一種です。
しかし、まったく一緒、という訳ではなく、異なる点もあります。
用途の違い
浴衣と着物は、着ていく場所や場面が異なります。
着物はフォーマル着としても着用することができ、格式が定められています。
浴衣は着物の中でも格が低く自由に着ていけるため、カジュアルな装いです。
着物は場所や場面によって相応しくないものがありますが、浴衣は基本的に場所選ばずに着ていくことができます。
素材や生地の違い
浴衣と着物、それぞれに使われているメジャーな素材は、
浴衣 | 木綿、麻、ポリエステルなど |
着物 | 綿、麻、ウール、ポリエステルなど |
です。
同じ素材であっても、浴衣は薄めの生地が使われています。
仕立て方の違い
浴衣と着物には、それぞれ仕立て方に種類があります。
着物 | 単衣 | 裏地が無い |
袷 | 裏地があり、二重になっている | |
浴衣 | 単衣 | 裏地が無い |
着付けの違い
着物は、肌着、長襦袢、着物の順で着付けをしますが、浴衣は肌着や長襦袢を着る必要がなく、素肌のままでも着ることができます。
そのため、洋服から浴衣への着替えもスムーズです。
外出先で浴衣を着たい時も、着物に比べて少ない荷物で着ることができますよ。
帯の違い
浴衣と着物は、帯の幅に違いがあります。
着物は名古屋帯、袋帯などの分厚い帯で、浴衣は半幅帯や兵児帯などの薄い帯が用いられ、着物の帯と比べ、自分でも結びやすい利点があります。
半幅帯は夏らしい柄の帯が多く、兵児帯よりも落ち着いた印象に。
少しでも涼しくしたい方、着付けを簡潔にしたい方には兵児帯がおすすめです。
履物の違い
浴衣と着物では、足袋の有無が大きな違いになります。
浴衣は素足で下駄を履き、着物は足袋の上から草履を履くのが一般的です。
下駄は木、草履は革でできているものが多く、浴衣には下駄を履くのが主流ですが、「草履を履いてはいけない」といった決まりはありません。
浴衣に合っているもの、自分の足に合っているものを選ぶようにしましょう。
浴衣の上手な選ぶために、抑えたいポイント
浴衣選びで抑えたいポイント、「素材」「織り」「トレンド」の3つです。
素材について
浴衣の生地として主に使われている素材を、4つ紹介します。
素材 | 説明 | 洗濯の可否 |
木綿 | 浴衣の代表的な素材で、織り方や染め方の種類が豊富にある。洋服にも多く使われているため、扱いやすい素材。 | 可 |
化繊 | 人工的に作られた繊維。発色が良い。 | 可 |
麻 | 盛夏に適した代表的な素材。通気性がよく、吸水性・吸汗性も優れている。 | 否(シワになりやすい) |
絹混 | 綿や麻との混じり織りが一般的で、高級な素材。 | 否 |
着物の保管に慣れていない方には、洗濯可能な素材がおすすめです。
洗濯できる浴衣は、ショッピングモールやファストファッションブランドに多く、価格の安いものが多く流通しています。
織りについて
「織り」とは、糸と糸の合わせ方のことを指します。
浴衣で使われている主な織りの種類は4つ。
それぞれの特徴をみていきましょう。
・綿絽
糸と糸の間に隙間も持たせ、透け感が出るように織られています。
・綿紅梅
太さの異なる糸で織ることで、ワッフル地のような凹凸ができます。
凹凸を表す「勾配」が転じて「紅梅」になったと言われており、梅とは関係ないのでご注意を。
・綿紬
節があり、しっかりとした厚みのある生地が特徴です。
・縮み
表面にシワや凹凸を感じられる特徴があります。
トレンドについて
近年流行中の柄と色について紹介します。
・トレンドの柄は「アンティーク柄」「レトロ柄」
明治から昭和にかけて作られた着物は、欧米の文化を感じさせる鮮やかな色合いと華やかな柄が特徴で、現代では「アンティーク柄」「レトロ柄」として愛されています。
特に『鬼滅の刃』の影響で、「大正ロマン」と言われる独特な色使いの柄が人気です。
・トレンドの色は「パステルカラー」
優しい色合いが特徴のパステルカラーは、洋服にも近い感覚で着られるため、若い世代に多く選ばれています。
また、淡いピンクやレモンイエローは年齢問わず着ることができ、肌なじみも良い色です。
浴衣を着るときに気をつけたい4つのこと
近年浴衣は洋服の一種であるかのように親しまれています。
しかし、洋服と同じように着ていては、浴衣ならではの良さが半減してしまうのです。
浴衣は「3つの首」と言われる、首、手首、足首をすっきりさせると、より美しく見えるといわれています。
「3つの首」を美しく見せる方法をご紹介します。
髪型はアップまたはハーフアップに
「3つの首」の一つである「首」を美しく見せるには、髪型はアップにするか、ハーフアップがおすすめです。
おくれ毛を出すこともポイント。きっちり結ばず、柔らかめに結ぶと程よい抜け感を演出できます。
アップの場合、お団子は低めに作って重心を下にもってくると、大人っぽい雰囲気に。
ハーフアップは、ボブの人や上の方にお団子を作りたい人におすすめです。編み込みでまとめるだけでも華やかになります。
アクセサリーは少なめに
首、手首をすっきりさせるためには、ネックレスやネックレスは控えると良いでしょう。
アクセサリーも楽しみたいのであれば、ピアスや指輪がおすすめです。
歩くたびに揺れるような動きのあるピアスは、首元を美しく見せることができます。
下着は和装用のものに
下着は和装用のものを用意すると、より美しいシルエットになります。
また、ワイヤー入りのブラは着崩れにつながることも。
和装用のものでなくても、ノンワイヤーで凹凸が出ないブラで代用することができます。
例えばmジムに着ていくような運動用のものもおすすめです。
サイズ選びは身長=身丈に
身丈は、自分の身長と同じくらいのものが良いとされています。
S、M、Lなどのアルファベットでサイズ表記がされている場合は、自分の身長に対応しているか確認しましょう。
また、自分の身長の前後10cmまでの身丈なら、おはしょりで調整することができます。
浴衣のQ&A
浴衣を着る人が抱える代表的な疑問を、4つ紹介します。
着崩れ対策は?
ある程度の着崩れなら、自分で直すことができます。
よくある着崩れパターンの直し方を覚えておくと安心です。
・襟元が乱れたら
右側の襟が乱れた場合は、左手を脇のあき口に入れて、襟を下に引きます。
左側の襟は、帯の下から襟先を引き、帯に挟むようにして整えましょう。
襟が重なっている部分を顎のラインと直線状に合わせるようにするときれいに直せます。
・帯が下がってきたら
背中と帯の間にタオルなどを詰めます。
帯が下がってきた時用に、タオル地の厚手のハンカチを持っていきましょう。
厚みを調整しやすく便利です。
・裾が下がってきたら
おはしょりの下にある腰ひもに、下がった分の生地を挟み込み、おはしょりを丁寧に整えます。
浴衣で出かける前準備は?
下駄は靴擦れしやすいイメージが強く、抵抗がある方も多いのではないでしょうか。
しかし、前準備をしておくことで靴擦れや歩きにくさを低減させることができます。
・下駄をならしておく
鼻緒をかかと、つま先、上方向にぐっと持ち上げ伸ばしておきます。
・絆創膏を持っていく
靴擦れの前兆があれば、すぐに絆創膏でカバーしましょう。
・股割りをする
まず、肩幅に足を開き、前傾姿勢になります。
股の間を上から手でぐっと押し込み、布が少し緩ませましょう。
そうすることで足が前に出しやすくなります。
浴衣に限らず、着物は足を動かせる領域が限られています。
そのため、小股でこまめに歩くイメージをしておきましょう。
着崩れの予防にも繋がります。
スニーカーを合わせても良い?
近年、浴衣にスニーカーを合わせるコーディネートが増えており、結論からいうと「あり」です。
下駄を合わせる方が好ましいとされていますが、ファッションの「外し」としてスニーカーを合わせる方が多くなっています。
但し、マナー的にはグレーなところもあるので、目上の人がいる場では避けた方が良いでしょう。
浴衣に合わせるスニーカーの色は、白か黒がおすすめです。
白なら浴衣の柄を邪魔することなく合わせることができます。
また、ハイカットの黒のスニーカーは、袴の時に履くブーツのようにも見えるため、違和感なく合わせることができるのでおすすめです。
スニーカーは賛否両論ありますが、快適に過ごせますし、周りと差をつけることも。
せっかくの浴衣なので、自身のファッションとして楽しんでみても良いかもしれませんね。
購入とレンタルはどちらがいい?
購入とレンタルには、それぞれメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット | |
購入 | ・何度でも好きな時に着られる | ・費用がかかる |
レンタル | ・いろいろな浴衣を着ることができる ・購入に比べ、費用は安く済む |
・セットレンタルが多いため、自分らしさに欠けてしまう |
まとめ
浴衣はカジュアルな着物であり、近年そのあり方も変化しています。
「着物だからマナーに厳しい」という認識は薄れ、着付け方法も簡単に、価格も安く変化しつつある浴衣。
「気軽に着られるファッションの一部」として、気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。