着物の第一礼装と意味は?結婚式・法要などシーン別・男女別で解説!留袖や振袖の着用時の注意点も

着物の第一礼装と意味は?結婚式・法要などシーン別・男女別で解説!留袖や振袖の着用時の注意点も

着物の種類はさまざまで、種類によって格式が違います。
「結婚式は第一礼装って聞くけど、何?」「家にある着物で結婚式に行ける?」と思ってはいませんか。

当記事を最後までご覧になれば、第一礼装の意味がわかり、その場に応じた着物で堂々とでかけられるようになるえしょうるえしょう。
第一礼装について詳しく解説していきます。

第一礼装とは

着物には格があり、最上級の格式が第一礼装です。
第一礼装は女性用に留袖、振袖、喪服があり、男性用に黒羽二重五つ紋付、色紋付があります。

着物における礼装の歴史

着物は長い歴史の中で受け継がれ育まれてきた世界に誇れる日本の伝統文化です。
平安時代中期には、襟をたくさん重ねた十二単が身分の高い成人女性の正装として用いられました。

現代の着物は、十二単でいうところの下着である「小袖」にあたります。
留袖で白い襟が重なった比翼襟は、「重ね」で威厳を出していた文化からの格式の流れです。

小袖の肩裾についていた模様の流れから、留袖の下半身には着物を広げたときに一枚の絵に見えるようにおめでたい模様が描かれている絵羽模様(えばもよう)が入っているのです。

江戸時代、女性が18歳になったときや結婚後、着ていた振袖の袖を短く仕立て直す風習がありました。
袖を「切る」と「縁を切る」となり縁起が悪いので、「袖を留める」で「留袖」と呼ばれるようになりました。

日本の伝統文化である着物は、令和になった現在でも冠婚葬祭で着用されています。

準礼装・略礼装との違い

第一礼装は、女性では留袖、振袖、打掛、喪服となり、男性では黒羽二重五つ紋付、色紋付となります。
訪問着や色無地は準礼装、付け下げや江戸小紋は略礼装となり、第一礼装より格下です。

第一礼装の着用がふさわしい場面は、結婚式の主催者、お見合いや結納、公的な式典、成人式、葬儀・告別式などです。
第一礼装は、準礼装・略礼装とは異なり、最上級の格式となります。

礼装と家紋

女性用の黒留袖と色留袖、喪服、男性用の黒羽二重五つ紋付、色紋付には家紋が入ります。
家紋はその家を表す日本独自の紋章です。

家紋の大きさは、女性用の着物で直径約2cm、男性用は約4cmとなります。
紋の数は、女性用の黒留袖と喪服、男性用の黒羽二重五つ紋付は五カ所です。

色留袖と色紋付の紋は、五つ紋、三つ紋、一つ紋とどの数を入れても大丈夫ですが、数が大きいほど格があがります。
家紋は、着物の格を上げてくれる要素です。

女性の第一礼装に該当する着物

着物の中でも儀式や式典などのフォーマルシーンに着用する着物を第一礼装といいます。
礼装には、儀式を尊重し敬意を表現する意味が込められているのです。
第一礼装の着物を詳しくみてみましょう。

留袖

留袖には、黒留袖と色留袖があります。

黒留袖

最も格式が高い第一礼装が黒留袖で、既婚女性が着用します。
家紋が五カ所に入った黒の着物で、生地は地模様のない縮緬、裾に柄が途切れない絵羽模様が入っているのが特徴です。

第一礼装の黒留袖は、西洋のブラックフォーマルの流れから黒となりました。
主に結婚式で、両家の母親が着用します。
黒留袖は、ミセスの着物の中で一番格上です。

色留袖

色留袖は、黒留袖同様慶事に着用される礼装です。
明るい色みでお祝いの席を華やかに彩ります。
未婚既婚の区別なく着用が可能です。

色留袖は紋の数で格式が決まり、紋が多いほど格が高くなります。
五つ紋の色留袖は、黒留袖と同格の第一礼装となり、親族の結婚式や受賞式などにふさわしい装いです。

三つ紋、一つ紋の色留袖は準礼装の扱いになり、親戚の結婚披露宴やパーティーなどに気軽に着用できます。
色留袖はお祝いの席に着ていける礼装です。

振袖

振袖には、主に結婚式で花嫁が着る本振袖と成人式で着る中振袖があります。

本振袖

本振袖は大振袖とも呼ばれ、袖丈(そでたけ)が104〜120㎝前後でくるぶしくらいまでの長さのある着物です。
本振袖は、振袖の中でも最上級の格式になり、主に結婚式で花嫁が着用します。

振袖の呼び名は江戸初期につけられ、当時は18歳までの未婚女性のみが着用でき、長い振袖は若さの象徴でした。
現在でも振袖は独身の女性のみが着用でき、大振袖は未婚女性の第一礼装となります。

五つ紋で絵羽模様が元来の決まりですが、最近は無紋で晴れ着として着用可能です。
本振袖は独身女性の第一礼装で、くるぶしまで袖の長さがある振袖となります。

中振袖

中振袖は、大振袖に比べて袖丈が短い振袖です。
袖丈は100㎝前後になります。
晴れの舞台に着用され、成人式や卒業式で着る着物です。

未婚女性の第一礼装となります。
柄は絵羽模様で、デザインが豊富です。
中振袖は、普段は振袖と呼ばれ、初めての着物として成人式に着用する機会があります。

喪服

葬儀、告別式の弔事で喪主や故人の親族が着る第一礼装です。
喪服は、五つ紋入りの織模様のない無地とされています。

着用時は長襦袢と半衿、足袋は白、それ以外の着物と帯、小物は黒です。
喪服は従来、思わぬきっかけにならないようにという配慮から、晴れ着と合わせて支度したり、嫁入り道具の一つとして持たせたりしていました。

色喪服もあり、準礼装になるので紋は一つか多くても三つです。
色喪服は、黒以外のグレーや紫、茶色や濃紺、深緑などの落ち着いた寒色系の色無地です。

光沢のない無地か、地紋入りでも雲や霧、波や墨流し、花であれば菊や水連などが良いと言われています
合わせる帯や小物は喪の度合いで変わり、通夜や初七日なら黒喪服の帯、一周忌や三回忌などの法事はグレーや黒っぽい無地感の織帯がふさわしいと言われています。
黒喪服は第一礼装になり、色喪服は準礼装です。

第一礼装に合わせる帯や小物と注意点

帯や小物を選ぶ際には着物との格のバランスを考えびます。
格や着物とのバランスが不自然だと、全体の雰囲気がくずれてしまうのです。
一つずつみていきましょう。

留袖

留袖はおめでたい席で着る着物なので、合わせる帯や小物は、白、金、銀が基本です。
留袖には唐織(からおり)や綴織(つづれおり)で金糸、銀糸を用いた礼装用の袋帯を合わせます。

留袖は、帯元にさす末広(すえひろ)と呼ばれる扇子が必要です。
表が金、裏が銀になった末広は、扇の形が「末広がりで縁起がよい」と留袖の必需品となりました。
末広は金紙を正面に向けて、帯と帯揚げのあいだに内側に少し傾けて、さします。

帯揚げには絞りと平ものがあり、格に違いはありません。
留袖の帯揚げは白地に金または銀の配色とし、帯締めも華やかさをプラスする意味でも白、金、銀を選びます。

草履(ぞうり)とバッグは、金や銀を基調とするのが一般的です。
礼装用の草履は、芯が重なっていてかかとが高く、重厚感があり格式高い印象になります。

留袖で外を歩く際には、上物が必要です。
防寒対策だけではなく、汚れ防止の目的もあります。
道行衿(みちゆきえり)のコートが礼装用として用いられ、着物の柄を邪魔しない色無地などの格調が高い雰囲気のものを選ぶと良いです。

留袖には、白色に金銀があしらわれている帯や小物を選んで華やかさを表現します。

振袖

振袖は未婚女性が着られる第一礼装になり、華やかな印象です。
金銀の華やかな袋帯を選び、文庫結びや立て矢結びなどの変わり結びをします。
黒や他の色でも大丈夫ですが、振袖とのバランスが大切です。

帯揚げはほとんどの場合は絞り入りで豪華に見せるため、ふんわり帯にもかけます。
平もので問題はありませんが、きらびやかにアレンジしましょう。
帯締めは丸ぐけ、平組はどちらでも構いませんが、帯揚げとお揃いの色にすると全体が引き締まります。

草履は礼装用が基本です。
かかとは5㎝前後を目安とすると振袖が綺麗に映えます。
エナメルや金糸、銀糸を織り込んだ華やかな草履を選びましょう。

バッグは草履とお揃いにすると見た目に統一感が出ます。
バッグは和装用でなくても、小さめでバランスが取れていれば洋装用でも大丈夫です。

振袖は袖が長く、通常の和装用コートでは袖が入りません。
振袖にはショールやストールを選ぶのが一般的です。
成人式等で人気なのは、ファー素材のショールです。
豪華でアクセサリーとしてもよく映え、防寒にも適しています。

花嫁衣装の本振袖には、筥迫(はこせこ)、懐剣(かいけん)、抱帯(かかえおび)をします。
筥迫は今でいう化粧ポーチ、懐剣は短剣、抱帯は帯の下の位置に巻く細帯です。
本振袖は花嫁衣装になるのでしっかりと基本を守ります。

成人式などで着る中振袖は基本は抑えつつも、デザイン重視で選ぶと良いでしょう。

喪服

喪服は、黒と白のみの色使いになります。
喪服の帯は、黒共帯(くろともおび)もしくは黒喪帯(くろもおび)と呼ばれる名古屋帯です。

喪服の帯は、不幸が重ならないようにとの意味をこめて二重ではなく一重のお太鼓で小さめに結びます。
帯揚げ、帯締め、草履、バッグは全て黒色です。

帯締めの房(ふさ)は、上から下に入れ、悲しみを表現します。

コートの道行は黒、茶、グレーなどの控えめな色を選びましょう。
喪服は黒を基調として、故人への敬意や思いの深さを無言で伝える着物です。

各早見表と注意点

帯や小物選びでは着物との格を合わせます。

留袖 振袖 喪服
白・金・銀 振袖に合う色 
袋帯 袋帯 名古屋帯
帯揚げ 絞り、平もの 絞り、平もの 平もの
帯締め 丸ぐけ、平組 丸ぐけ、平組 丸ぐけ、平組
半衿 白塩瀬羽二重(しろしおぜはぶたあえ) 白塩瀬羽二重
刺繍衿、伊達衿を
つけると華やか
白塩瀬羽二重
草履 かかとが高め かかとが高め かかとは低め
バッグ 草履とおそろい 草履とおそろい
洋装の小ぶりも可
革などの殺生を連想
するものは避ける

上記の他、肌着や紐類も必要となります。
肌襦袢(はだじゅばん)、裾よけ(すそよけ)、足袋(たび)、長襦袢(ながじゅばん)、お太鼓枕(おたいこまくら)、帯板(おびいた)、衿芯(えりえしん)、伊達締め(だてじめ)、紐が4〜5本です。

長襦袢には前もって、衿芯を入れながら半衿を縫いつけておきます。

着物や帯などにシミやシワがないかのチェックも必須となります。
小物や肌着がそろっているか、出席する式の3か月前には一度確認をして、足りないものがあれば買い足しておきましょう。

出番の少ない礼装用の草履は、しまいこんでいると劣化の可能性があるので、事前に確認が必要です。

式から帰ってきたあとはクリーニングに出すなどのお手入れも大切です。

当日にあわてないためにも、事前に着ていく着物と帯、小物の格を合わせ、肌着類も足りないものがないようにしておきましょう。

男性の第一礼装に該当する着物

男性の第一礼装は、黒羽二重五つ紋付(くろはぶたえいつつもんつき)となり和装での最上格の着物です。
男性は冠婚葬祭に着られます。

黒紋付き・羽織・袴

男性の和装の第一礼装は年齢に関係なく、黒羽二重五つ紋付と呼ばれる羽織、袴です。
素材は正絹が一般的となります。
家紋は5カ所にあり、背中、両袖の後ろ、両胸元です。

結婚式の和装で新郎が着用する衣装としても知られています。
男性の着物の第一礼装は、黒羽二重五つ紋付です。

帯・長襦袢

黒羽二重五つ紋付は、博多織や西陣織の角帯(かくおび)を合わせます。
金糸や銀糸を用いた帯です。

長襦袢は白羽二重(しろはぶたえ)か色羽二重(いろはぶたえ)です。
色羽二重の色は白や紫、グレーなど落ち着いた色が良いでしょう。
帯は金か銀の角帯、長襦袢は羽二重です。

小物類

小物類は基本的に慶事は白、弔事は黒です。
半衿は、長襦袢につける衿で、白塩瀬羽二重の半衿をつけます。
弔事の際は黒やグレーの半衿です。

羽織の前部分が開かないように留める紐を羽織紐と呼びます。
羽織紐は慶事でも弔事でも白色です。
房付の丸組か平組の羽織紐を選びます。

足袋は、白足袋です。
弔事の際には黒足袋を合わせる地域もあるのでご家族に確認しておきましょう。

足元は畳表の雪駄(せった)を履きます。
慶事は白い鼻緒、弔事は黒い鼻緒の雪駄です。
小物はほとんどの慶事には白、弔事には黒となります。

既婚・未婚で変わる第一礼装

既婚者は留袖、未婚者は振袖が第一礼装です。
それぞれみていきましょう。

既婚者

既婚者の第一礼装は、黒留袖です。
今では、結婚式の母親が着る機会となっておりますが、格の高い黒留袖での出迎えで、式の参列者へ敬意をあらわし、礼を尽くしています。

黒留袖は正式な場で着られる格式の高い着物です。
黒留袖は、既婚者の第一礼装となります。

未婚者

未婚者の第一礼装は振袖と打掛、色留袖です。
本振袖や打掛は、独身最後の結婚式で着用します。

振袖は、結婚したあとに袖を短く切り、留袖に仕立て直しも可能です。
振袖は絵羽模様であるため、色留袖となります。
色留袖は既婚未婚関係なく着用できるので、未婚者の第一礼装は振袖と色留袖です。

着用シーンで選ぶ第一礼装と文様

儀式や式典などは第一礼装となります。
シーンごとにみていきましょう。

結婚式

主催者側の花嫁は本振袖や打掛、母親は留袖を着ます。
中振袖や色留袖、訪問着の着用は招待者側です。

結婚式には華やかな色柄が喜ばれますが、主役は花嫁であり、花嫁と色柄が被らないものや派手な着物にならないように気を付けます。

着物や帯は、おめでたい模様が入った吉祥文様(きっしょうもんよう)や有識模様(ゆうそくもんよう)などを選びましょう。
結婚式は第一礼装が基本となります。

法要

告別式には遺族である喪主、家族、親族が第一礼装を着ます。
通夜は色喪服として色無地の着物に黒い帯の着用がふさわしいです。

弔問側は、遺族よりも格の高い喪服でないほうがよいとされているので、黒喪服は着用しません。

遺族は三回忌の法要まで黒喪服を着用します。
おめでたい柄は避け、自然模様や幾何学模様などの帯がおすすめです。

通夜や法要に関しては、地域ごとに習わしがあるので失礼のないように、親族や葬儀会社に相談しましょう。
告別式では、喪主は第一礼装となります。

その多式典

格式の高いパーティーや式典には、色留袖や中振袖で参加します。
色使いがカラフルで場が華やぐでしょう。

訪問着も準礼装になるので、格調高い古典柄や豪華な着物を選べば着用が可能です。
格式の高いパーティーや式典には色留袖や中振袖がふさわしい着物となります。

第一礼装のQ&A

第一礼装の疑問にお答えします。

Q.夏の結婚式、袷の着物で参列可能?

会場は冷房が効いているので、袷でも大丈夫です。
会場で着るか、着付けを会場にお願いしましょう。
夏物を着用したいがあまり出番はない、という方にはレンタルがおすすめです。

Q.礼装の着物をレンタルするには?

会場となる式場、着物専門店、レンタル店で借りられます。
式場以外で借りる場合は着付けやヘアセットの手配も必要です。

Q.手元の着物は家紋が違うけど、着用可能?

可能ではありますが、礼装と家紋の意味を理解しておきましょう。
家紋は礼儀をつくすという意味があるのです。
貸衣装では通紋(つうもん)と呼ばれる、誰がつけても問題のない「五三の霧」の家紋を便宜上つけています。
家紋は変更は可能で、シールで貼り付ける張り紋や家紋の入れ替えをしてくれる店舗があります。

Q.ポリエステルの着物は礼装になる?

素材によって格は変わらないので、着用は可能です。
織り方や絵柄によって、並んだ時に周りに比べて見劣りするかもしれません。
特に黒は、高級な品ほど黒く、色褪せなどが如実にわかる色なので、注意が必要です。

まとめ

着物の第一礼装には、礼をつくす、といった日本人らしい美学を大切にする心が込められています。
第一礼装は、自分のためでなく「相手」のために着用するものです。
マナーを逸した個性を出す場ではないため注意をしてください。

着物は場の雰囲気を盛り上げ、着ている人の格が上がります。
フォーマルな場面で第一礼装を着用し、お祝いやお悔やみの気持ちを表現しましょう。