着物は、一枚の生地(反物)を余すところなく使って作られます。
大人一人分の着物を作れる長さの生地を1反といい、37cm前後 × 約12mの反物を裁断し、着物として仕立てます。
1反の生地が、「袖」「前身頃・後身頃」「衽(おくみ)」それぞれ左右1枚ずつと、「衿」、「掛衿(かけえり)」の8つのパーツに裁断され、それらを縫い合わせることで着物はできています。
このように、着物には独特の各部位の名称や仕立て方があります。
そして着物には、洋服ほど厳密に着る人の体のサイズにとらわれない自由さがあります。
ですが、それぞれの部分の幅や長さなど、ご自身のサイズの目安を知っておくととても着やすく、またきれいに着ることができます。
着物を仕立てる際には、自分の基本サイズを一通り知っておき、慣れてきたらちょっと外しておしゃれの幅を広げるのも楽しいものです。
ここでは着物をあつらえる前や着付けを始める前に是非知っておきたい、着物の各部名称や読み方や意味など、基本知識をご紹介します。
着物の構成
着物は、衿、左右の衽、身頃、袖から成り立っています。
衿(えり)
首元から胸下にかけての細長い部分を指します。
「襟」とも書きます。
身頃(みごろ)
身頃と呼ばれる部分は、左右共に、前身頃と後身頃に分けられます。
身頃は両肩から両脇裾までを覆う部分で、体の前に来るのが前身頃、背中に来る部分を後身頃と呼びます。
とはいっても、前身頃と後身頃は1枚につながっていて、縫い目はありません。これが洋服とは大きく異なる点です。
2枚の身頃の布を背中の中心(背中心)で縫い合わせるため、左右対称となります。
衽(おくみ)
前身頃には、衿の下(胸元あたり)から「衽」という独立したパーツが付けられています。
この部分によって、着物を着る際に左右の打ち合わせの幅が取れることになります。
袖
着物の生地は基本的に伸縮性がないため、袖はゆったりと、丈を長くとっています。
袖も身頃と同じく1枚の布でできています。
着物を仕立てる際には、その人のサイズに合わせて裁断、仕立てが行われます。
着物の各部位の名称
着物の各部位の呼び方は独特なものが多く、また、どこを指しているのかわかりにくいことが多いものです。
その名前や部分について、主なものを解説します。
衿(えり)まわりの名称
地衿(じえり)
着物の本体に付いている衿です。「本衿」、または、シンプルに「衿」と呼ばれることも多くあります。後ろは後ろ身頃に、前は前身頃と衽にかけて付けられています。
洋服とは違って衿の長さは190cm前後と長く、首周りだけでなく腰のあたりまであるのが特徴です。
この衿の長さも、きれいな着付けのためには重要なポイントとなってきます。
掛衿(かけえり)/共衿(ともえり)
そしてさらに地衿の上、首周りに付けてあるのが「掛衿(かけえり)」または「共衿(ともえり)」です。
時代劇で町人の女性の着物の衿に黒い布が使われているのをご覧になったことのある方も多のではないかと思われますが、その部分です。
衿の汚れを防ぐためにつけるもので、現在の着物では地衿(本衿)と同じ布を使うために共衿とも呼ばれます。
おしゃれのために、この掛衿だけを別布で仕立てることもあります。
掛衿(かけえり)/共衿(ともえり)
衿先は、地衿の先端から上に向かって20cmくらいまでの部分を指します。
着付けの際には「衿先ひと手幅分くらいを持って体に合わせる」などといった言葉も聞かれますので覚えておきたい主な部分の一つです。
衿下
前身頃で、衿先から褄先(つまさき)までの間を指します。「褄下(つました)」とも言われます。
基本的には身長の約半分ほどの長さとなることがほとんどです。あまり短いと着崩れしやすく、また長すぎるとバランスが悪く見えることがあります。
衿幅(広衿/バチ衿/棒衿)
衿の形には3種類あります。
広衿:
現在、女性の着物の多くは広衿で仕立てることが多くなっています。
広衿とは、衿の幅を2倍として仕立てたもので、着る時に半分に折ります。広衿の幅はほぼ3寸(12cm弱)です。
衿を折る際に着やすいよう、首の後ろにあたる部分にスナップボタンや「引き糸」という糸をつける場合があります。
スナップボタンは金属製のことが多く、保管状態によっては錆が出て生地に付着することがありますので注意してください。
引き糸といって、糸を引くだけで衿が二つ折りになるような加工の仕方もあります。着物や裏地を傷めることが少ない点がメリットですが、強く引っ張らないようにしましょう。
広衿では、好みや体形によって衿の折り幅を調整して着ることができるので、その人の個性を表現することもできます。
また、幅を出すことによって、体形がふっくらした方にもバランスがとりやすくなっています。
そのため、常に広衿仕立てを指定する方もいます。
バチ衿:
背中の中心から左右両側の衿先に向かって徐々に幅が広くなっていて、三味線のバチに形が似ているため、このように呼ばれる衿の形です。
衿元は1寸5分(約5.7cm)、衿先は2寸(約7.6cm)になっています。
衿は最初から半分に折って縫ってありますので、着る際に自分で折る必要がなく、広衿に比べて手早く簡単に着ることができます。
広衿仕立てにすると衿裏に生地を付けてその分が厚くなってしまうため、木綿の着物や浴衣などは最初からバチ衿仕立てにすることが普通です。
ただ最近では下に長襦袢を着て、着物風に着ることのできる高級な浴衣も増えてきています。
そういった浴衣では、あえて広衿仕立てにすることもあります。
棒衿:
棒衿もバチ衿と同じく、最初から衿幅を折って仕立てた衿です。
ですが、バチ衿が衿先に向かって広くなっているのとは違い、棒衿はその名の通り棒のようにまっすぐであり、衿の幅が変わりません。
衿の幅は1寸5分(約5.7cm)で、主に男性や子供の着物や浴衣に用いられます。
身頃(みごろ)まわりの名称
前身頃(まえみごろ)
身頃の前の部分です。
着物の身頃は体の前と後ろ部分が1枚の布となっていて、1枚につながっています。
左右の裁断は同じ方法となり、左右同じ形となります。
このため、落ちない汚れや傷みが付いた場合には、仕立て直して左右を入れ替えることが可能となります。
着物は、男女共に左側の身頃を上にして着付けます。
体の前で両方の身頃を重ねた時に、必ず右側の前身頃が下(体に近い方)、左側の前身頃が上に来るように着ます。
上に来る左身頃を「上前」、下に来る右の身頃を「下前」と呼びます。
さらに覚えておきたい言葉が、「左前」と「右前」です。ここでいう「前」とは「先」という意味があります。
着物は右前、つまり右を先に重ねて着ます。右の身頃を体に沿わせ、左身頃は後からその上に重ねるということです。
男性は着物も洋服も同じですが、女性は洋服と逆ですから、特に注意が必要です。「左前」では死装束になってしまいます。
SNSに投稿しようと鏡に映した自分の写真が左前になっていて、見た方がギョッとしないよう、ここもちょっと注意したいですね。
とにかく、着物は基本的に「左が上!」と覚えておきましょう。帯締めや帯揚げを結ぶときも、いつも左が上になるようにして結びます。
後身頃(うしろみごろ)
前身頃と後ろ身頃の境目を「肩山」といいます。ここには最初から折り目が付いているのでわかりやすいでしょう。(この折り目をアイロンで取ってしまわないようにしてください)
肩山から後ろの部分を後身頃と呼びます。
また、仕立てた時に前身頃と後身頃が縫い合わされている横の部分を「脇」または「脇線」と呼びます。
衽(おくみ)
身頃だけでは、左右片方ずつの半身分しか生地が無く、前で重ね合わせるのには少し足りません。そこで、前身頃の重ねる部分に、衿から裾まで半幅(約15cm)の布が付けられています。これが衽です。
衽線(おくみせん)
前身頃と衽の境の縫い目を「衽線」と呼びます。
女性の着物は通常、身長より長く作られていて、裾線を床すれすれに合わせたところで腰紐を締めると、上半身の生地が余ります。
この腰周りに余った部分を「おはしょり」と言いますが、このおはしょりの衽線と、下半身の衽線が一直線になるように着るのが体に合っていてしかも美しい着付けになります。
身八つ口(みやつぐち・みやつくち)
身八つ口は、袖と身頃が縫い付けられている箇所から下の、脇縫いが開いている部分です。
女性の着物と子供の着物に特有で、男性の着物にはこの部分がありません。
元々は、女性の帯の幅が広くなり、帯の位置が上になってきたことから腕を動かしやすくするためにできたと言われています。
現在では、主にここから手を入れて衿や上半身の布を整えるために多く使われます。
また、この部分が空いていることで通気性が良くなるメリットもあります。
内揚げ
帯で隠れて見えない部分(胸周り)に、身頃の布を数センチ折り込んである部分があります。これが内揚げです。
前後を変えて仕立て直しをする、左右の丈を同じにするなど色々な理由で、少し折り込みがなされています。
ですが着物が作られた時代や、仕立て方によっては内揚げがほぼ無いこともあります。
最近の仕立て方では、内揚げをできるだけ取っておき、丈の調整がしやすくなっているのが主流です。
また、長く着て裾が擦り切れてしまった時にはこの内揚げを出し、裾を伸ばすことによって傷んだ部分をずらして隠せるため、きれいな状態にすることができます。
裾
洋服と同じく、着物の一番下の部分です。下のラインを「裾線」といい、きれいな着付けのために「裾線を〇〇に合わせて……」と言うことがよくあります。
また、「裾さばき」「裾合わせ」など裾にまつわる言葉があり、着付けには大切な部分となります。
袷(あわせ)の着物の場合には、裏地が付いています。
通常、袷では袖口と裾に、裏地が表地より少しはみ出るように作られます。これを「ふき」と呼びます。「ふき返し」と言うこともあります。
ふきがあることにより、表地が汚れたり傷んだりすることを防げます。また、ちらりと見える色によってお洒落感や高級感を楽しめます。初めて袷の着物を仕立てる時には、この「ふき」の色や分量を、呉服屋さんや仕立て屋さんと相談してみてください。
褄先
衿下(褄下)と裾の出会う、角の部分です。
褄先を少し上げて着付けると、いわゆる裾つぼまりの美しい着姿になります。
袖(そで)まわりの名称
「袖の下」「他人の振り見て我が振り直せ」など、昔からのことわざにも現れる部分です。
肩山
前身頃と後身頃の中心で、肩の一番高い部分です。
実際には、衣紋を抜いて着物を少し後ろにずらして着るため、体の肩の一番高い部分とは一致しません。
袖山
袖の一番上、肩山と同じライン上にあります。
袖も身頃と同じく一枚の布でできており、縫い目は下にありますので袖山には縫い目は無く、肩山から続いて折り目が付いています。
袖口
袖の手首側の開いた部分です。
ここにも「ふき」があり、裏地の色が少し見えるのがおしゃれです。裾と同じく、表地の汚れや傷みの防止を兼ねています。
表地との兼ね合いで、好みによって色を変えると個性が活かせます。
袖付け
身頃と袖が縫い付けてある部分で、標準寸法では21~23cm程となります。
袖付けが短いと身八つ口の長さは長く、逆に袖付けが長いと身八つ口は少なくなります。
一般的に、帯を高い位置に結ぶと袖付け部分は少なくなります。帯位置を下げるご年配の方は、袖付けは長くなります。
帯を高めに結ぶ方が袖付けの長い着物を着ると、身八つ口の開きが少なくなるため着にくくなります。
袖丈
袖山から袖下までの長さです。
振り
袖の袖付けの下、縫っていなくて開いている部分を「振り」と言います。
身八つ口が無く、袖と身頃に開きの無い男性の着物には振りはありません。
この開いた部分から、襦袢がほんの少し見えます。
襦袢の色や柄に凝って、あえてちらりと見せるおしゃれもあります。着物との色の調和やコントラストなど組み合わせは多数あり、ここでも個性を見せることができます。
そのほかの着物の名称
身丈
着物全体の着物の丈、つまり着物の縦の長さです。着物を着る時と仕立てる時に一番重要ともいえる部分です。
着丈
身丈と似ていますが、「着丈」とはその名の通り、着た時の丈です。
特に、長襦袢やロングコートをあつらえる時や買う時によく出てくる言葉です。
また、男性の着物の場合には、身丈=着丈となります。
裄(ゆき)/裄丈(ゆきたけ)
どちらも同じ意味で、背中の中心線(背中心)から袖口までの長さで、身頃の肩幅と袖の幅を足した長さとなります。
少し前までは袖は若干短めが主流でしたが、現在ではやや長めが好まれる傾向にあります。
胴裏
袷(あわせ)の着物の裏地で、身頃の腰から上や袖の裏についている白い生地です。
最近では、表地が正絹でも、胴裏にポリエステル製を使うこともあります。
八掛(はっかけ)、裾回し
同じく袷の着物の、裾周りや袖口の裏地です。
普段着では表地とコーディネートされた色が使われますが、訪問着や色無地などでは表地と同じ生地が使われることも多く、その場合には「共八掛(ともはっかけ)」と呼ばれます。
着物の表地の色が薄い場合、八掛は裾から上に向かってぼかしが入っているものにすると良いでしょう。
自分に合った着物のサイズの選び方
「着物のサイズ選びはどうしたらいいの?」と思っていませんか。
デザインだけ見てつい仕立て上がりの既成品を買ってしまい、いざ着てみたらうまく着ることができない……、ということもあります。
ですが逆に洋服とは違って、ある程度の範囲内ならサイズが大きくても小さくても着られるのも着物の魅力のひとつです。
着物のサイズ選びについては、まず以下のポイントを押さえておけばOKです。
着物の長さと単位
着物の寸法には、cm(センチメートル)の他に「尺」「寸」など昔ながらの単位が使われます。
元々は手を伸ばした長さを1尺としていましたが、現在、和裁には鯨尺という物差しを使います。鯨のひげを使っていたことから、鯨尺と呼ばれるようになったと言われています。
鯨尺の1尺は37.9cm≒38cmです。
1尺=38cm
1寸=3.8cm
1分=3.8mm
1m=2尺6寸3分
1cm=約3分
寸法の計り方
着物のサイズ選びでは、このポイントを押さえておけば、すっきり美しく、また楽に着こなせます。
・身長と身丈
・腕の長さと裄丈
・ヒップサイズと前幅/後幅
プレタ(仕立て上がり品)の場合:
身長:
Sサイズは身長が155cm±5cm、Mサイズは160cm±5cm、Lサイズは165cm±5cmのユーザー向けとなっていることが一般的です。
ただ、身長のみで選んでしまうと、裄が長すぎたり短すぎたり、または身幅が足りなかったり余ってしまったりすることがあります。
一般的には、身丈が身長と同じくらいだと着やすいと言われていますが、腰紐を結ぶ位置を少し上下させることで調整できます。
身長±5cmくらいまでは、腰紐の位置で調整できますので、プレタの着物で「どうしてもこれが欲しい」というものがあったとき、まずは身丈を見てみましょう。
身丈を測る方法は2種類あります。
この違いで、2cmほどの差が出ます。どちらで測っているかについても気をつけたい点です。
どちらかはっきりしない場合には尋ねてみましょう。
- ①肩身丈:肩山から裾までの長さです。「肩から」と言われたら肩山からです。
- ②背身丈:背中の中心の「衿肩あき」(後身頃で衿の一番深いところ)から裾までの長さです。その場合には「背から」と言われます。背中心の衿の付け根は肩山より数センチ下がっているため、ここから測ると、肩身丈より短くなります。
裄:
身丈の次に見たい長さは、裄です。
Sサイズでは64cm以下、Mサイズは67cm前後、Lサイズは69cm前後であることが一般的です。
「どうしても欲しい!」と思った着物に自分ぴったりのサイズが無い場合、2~3cmくらいの差でしたら問題なく着られるので大丈夫です。
たとえば実際の裄丈が66cmの人にとって、64cmや67cmのサイズの着物はOKです。
ただ、69cm超にまで長くなってしまったり、61cmなどと短くなったりしてしまうと、少しバランスが悪くなる場合がありますので、サイズ直しができる着物かどうかを確認した方がベターです。
腕までの測り方は、洋服とは違います。
洋服の採寸では腕を下した状態で測るのに対して、着物の場合は、体に対して肩の高さ~斜め45度に上げ、首の付け根からまっすぐに測ります。
腕を下した状態で洋服のような採寸をすると、7cm前後も違ってきてしまいますので要注意です。
前幅/後幅:
また、できれば前幅、後幅にも気をつけると、特に初心者の方にとっては着やすくなります。
前幅があまり大きいと脇がもたついて着づらくなります。
反対に前幅が少なすぎると脇が見えやすくなったり、下半身の生地が足りなくなってめくれやすくなったりします。
一般的には、以下のサイズが目安となります。
- 前幅(前身頃の幅)…ヒップサイズ÷4 + 約1cm
※両手を自然に下ろした時に、右手の中指が上前の衿下の線、左手の中指が左の脇線になるとジャストサイズです。 - 後幅(後身頃の幅)…ヒップサイズ÷4 + 約6cm
※着付けた時に下半身の背縫いの位置が、背中心かやや右寄りになるくらいがジャストサイズです。
反物からあつらえる場合:
呉服屋さんなどであつらえる場合は、まず身長を聞かれます。
身長と同じくらいの長さが身丈として決められます。
そして、背中心(首の付け根)から手首のぐりぐりまでの長さを計られます。このとき、袖をやや長めにしたいのか、それとも標準でいいのかの希望があれば相談しましょう。
腕が長い人の場合、裄が70cmを超えることがあります。反物の幅が短めだとギリギリのところまでしか出せないこともあります。ですが、最近では「キングサイズ」といった幅が広めの反物も多くなってきています。
次に、胸周り、胴回り(ヒップサイズ)が計られます。
これらから自動的にサイズが割り出されます。
そのほかの箇所のポイント
袖幅と肩幅
裄の長さは、袖幅+肩幅の長さです。
裄の半分~やや広めが袖幅となります。
一般的には裄が64㎝未満の人の袖幅は32㎝、裄が64㎝以上の人は33~35㎝が目安です。
袖丈
裄の長さは、袖幅+肩幅の長さです。
袖丈は、自分の身長の3分の1程度だとバランスが良いと言われます。
袖丈の長さで印象が変わりますので、少し凝ってみても良い個所です。
一般的に、若い方ほど袖丈は長めで年配の方になるほど短め、また、訪問着などはやや長めで普段着は短めにという傾向があります。袖丈が長くなるほど若々しく、華やかな印象になります。
しかし既製品も多くなった現在では、49cm前後の袖丈が標準丈として普及しています。
袖丈が短いと活動的で軽快な印象となります。また、普段着では少し短め(45cmくらいなど)です。
逆に袖丈が長めだと優雅な印象になるため、訪問着や色無地などの礼装や華やかな小紋などのおしゃれな着物は、やや長め(52~55cm程度)にすることもあります。
また、身長が低めの方は標準よりやや短め、身長が高めの方はやや長めの方が、バランスがとりやすくなります。
長襦袢のあしらい
トータルバランスを考えて着物をきれいに着るためには、着物と合わせて、長襦袢もそろえたいものです。
着物の振りからちらりとだけ見える襦袢も、おしゃれの一環です。
押さえたい基本はこちらです。
衿
襦袢の衿には、「半衿(はんえり)」という別布の衿をつけます。「半襟」とも書きます。
着物が汗や皮脂で汚れないよう、首には襦袢の衿をまず沿わせます。
そこで襦袢本体を汚れから守るためにつけるのが「半衿」です。
その際には「半衿を付ける」、または「半衿をかける」と言うことが一般的です。
「襦袢の半衿」と、「着物の掛衿」は間違えやすいので要注意です。「半衿」と言われたら襦袢の衿を指します。
半衿の中には衿芯を入れて形を整えます。
また、この半衿は体の中心、顔の真下に来るためによく目につく部分です。
刺繍や色柄の入った半衿を合わせることで、おしゃれや豪華な印象を演出することもできます。
袖(袖丈、裄丈)
着物の袖丈をあえて長くした場合やアンティーク着物、またお母様から譲られた着物などの場合、一般的な長襦袢の袖丈や裄丈と合わないことがあります。
着物や襦袢を買う時には、サイズを統一するか、サイズ直しができるものを選びましょう。
・袖丈
長襦袢の袖丈が長い場合は、着物に合わせて袖下を折りたためばOKです。
逆に袖丈が短い場合には、振りから長襦袢の袖が飛び出てしまうことがあります。袖の丸みの中に10円玉などちょっとした重しを入れる等の工夫をされる方もいます。
ただし、袖丈のバランスが取れていないと見た目にもあまり良くないため、できる限り合わせたいところです。
・裄丈
基本的に、長襦袢の裄の長さは着物の裄より3分(1cm)ほど控えめにします。
着物の袖口から襦袢の袖口が出ないようにします。
襦袢の裄が長い場合は、数センチ程度の差でしたら、袖の中央あたりを少しつまんで縫い留めることなどで応急対応ができます。
ですが襦袢自体が着物のサイズより大きい場合には、襦袢の袖付け部分が着物の身八つ口から出てしまい、外に見えてしまいます。
逆に裄が短い場合、着物の振りから襦袢がはみ出てしまうことがあります。
これは特に避けたいポイントです。
着丈
襦袢を着た時に、裾線が足のくるぶし位となる長さを目安とします。
おおよそ、身長-30cm程度となります。
色
襦袢の色は着物の表地や八掛の色とのコーディネートを考えて、お好みで選んでください。
一般的には、色が濃いほど、趣味性も高くなります。
初心者の方は、まず白~淡い色からトライしてみると、様々な着物と合わせやすく便利です。
まとめ
知っておくと便利な、主な着物の部位の名称や意味と、サイズの測り方について解説しました。
着物や襦袢の部位の呼び方、気をつけたいポイントを知っておくと、着物を選ぶときや着付けの際に、着物に詳しい方とのコミュニケーションがとりやすくなります。
また、呉服屋さんへのハードルも低くなるでしょう。
着物独特の言葉や言い回しもありますが、まずは基本を知っておくだけで随分違います。
あとは着付けやお出かけの回数を重ねることで、自然と身についてきますので大丈夫。
気後れせず、一歩踏み出しましょう!