帯の種類・TPOに合わせた帯の格について徹底解説

帯の種類・TPOに合わせた帯の格について徹底解説

着物について興味をもって調べるうちに、「帯って一体どんな種類があるんだろう?」または「帯の格って何?」といった疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。
実は着物というのは、その格(グレード)によってそれぞれ合わせる帯が異なるのです。
帯の種類は大きく分けて3つ、細かく分けると8つに分類することができます。
さらには柄や長さ、素材によっても微妙に名称が変化してきます。
そこで今回は、帯選びで失敗しないために、その種類や格の最低限のルールついて一緒に学んでいきましょう。

帯の種類の決め方

冒頭でもお伝えしたように、着物によって合わせる帯は変化します。まずは格に合わせて候補を絞り、そこからさらに詳しく種類を選択していきます。
ここでは、帯の候補を絞る段階の決め方や目安についてご説明します。

長さと幅で決まる

まずは帯の長さや幅には、種類によってある程度の決まりがあるということを押さえておきましょう。
ここでは代表的な3種類の帯を例に見てみます。

長さ
袋帯 約4m40㎝ 約31.2㎝
名古屋帯 約3m70㎝ 約30.4㎝
半巾帯 約3m80㎝ 約17㎝

どの帯も仕立てたときの状態により若干表の長さを前後することはありますが、平均的な数値がこちらです。
長さや幅の起源や理由ははっきりとはしていませんが、種類ごとの違いはその結び方の違いと大きく関係しています。
例えば、フォーマルなシーンで活躍する袋帯は二重太鼓結び、カジュアルなシーンで活躍することが多い名古屋帯は一重太鼓結びといった結び方が主流になるため、それに合わせて必然的に必要な長さが決まってくるのです。

着物と合わせる帯の目安

次に、着物と帯の組み合わせを考える際の目安を見てみましょう。
例として、上記3つの帯の場合を示すと、

袋帯 留袖、訪問着、振袖など
名古屋帯 小紋、紬など
半巾帯 小紋、紬、浴衣など

ざっくり分けると袋帯は礼装に、名古屋帯や半巾帯は洒落着や普段着などに合わせることが多いと言えます。

帯の種類を細かく分けると8種類

ここからは、いよいよ帯の格やその種類について詳しく見ていきましょう。
まずは帯の格(グレード)を一覧で確認してから、それぞれの特徴についてご紹介していきます。

帯の格一覧

3種類 細分化 合わせる着物の範囲
最上格 袋帯 丸帯 第一礼装

袋帯/角帯 第一礼装/準礼装
準礼装/お洒落着/普段着
名古屋帯 名古屋帯 準礼装/お洒落着/普段着
京袋帯 お洒落着/普段着
半巾帯 半巾帯 お洒落着/普段着
小袋半巾帯 お洒落着/普段着
最下格 兵児帯 お洒落着/普段着

丸帯|広幅の帯地で仕立て、表裏同柄の帯

女性用の帯の中では最も豪華で格の高い「丸帯」。
幅約70㎝の布地を半分に折って端を縫い合わせることで、表と裏の柄が同じになります。
素材には錦織や金襴、緞子など、豪華な織物が使用されています。
江戸時代半ば、ボリュームのある髪型とバランスを取るために誕生したこの丸帯は、その帯地が中国から運ばれる際に厚い板の芯に巻かれていたことから、近年まで厚板とも言われていました。
戦前までは正装(礼装)の帯として一般的に使用されていたものの、和装の軽装化に伴い、現在では舞妓さんの衣装や花嫁衣装に用いられることがほとんどです。
着物に合わせる場合には、振袖または留袖などに用いられます。

袋帯|表に柄、裏地は無地や地紋の帯

「袋帯」は明治以降に丸帯に代わって考案されたもので、現在では礼装用の帯として最もよく知られているものです。
その特徴は表に金糸や銀糸、色糸を使った格調高い織り文様があり、一方の裏は無地や地紋といったシンプルなつくりになっていることです。
現在では表地と裏地を別々に織って両端を縫い合わせたものが主流になっていますが、当初は袋状に織られていたことからこの名前が付きました。
また、袋帯でも金銀糸の使用が控えめなもの、あるいは色糸だけ使用するものなどがあり、これらは「洒落袋帯」とも呼ばれます。
袋帯を着物に合わせる場合には、振袖や留袖、訪問着などの礼装用に、洒落袋帯は紬や小紋、付下げや色無地の着物に合わせます。

名古屋帯|袋帯より短く、利用範囲が広い帯

大正時代、名古屋で考案されたことからその名が付いた「名古屋帯」。
長さ約4m73㎝の帯地のたれ先を、約144㎝ほど折り返して柄のメイン部分であるお太鼓裏にし、残りを半幅に折り帯芯を入れて仕立てます。
考案された当初、名古屋帯は染め帯だけしかありませんでしたが、現在では織り帯も見られるようになりました。
普段着用の着物を想定してつくられたため、帯の長さは袋帯よりも短く軽いのが特徴です。
その結びやすさから、活用範囲も広範囲にわたります。
金銀糸を使用しているものは、付下げや色無地などの準礼装用の着物に、それ以外のものは紬や小紋といった洒落着に合わせて用います。

半巾帯|帯結びが楽にできる、幅が狭い帯

帯の幅は、明治以降の標準サイズが約30㎝であり、それ以下のものは細帯と呼ばれます。
細帯の中でもさらに狭い、約15.2㎝~17㎝でつくられるのが「半巾帯」です。
その幅の細さから、帯結びが簡単にできるという特徴があります。
合わせる着物を帯の素材で見ると、丸帯や袋帯と同じ錦織や緞子、唐織などであれば礼装用に、博多織や木綿、麻、化学繊維などでつくられている場合は普段着や羽織下用に用います。
一枚仕立ての単衣であれば、夏の普段着や浴衣用に用いられます。

京袋帯|仕立ては袋帯、長さは名古屋帯と同じ

袋帯と同じく、模様を織った表地と、無地または地紋の裏地を縫い合わせてつくるのが「京袋帯」です。
しかしその長さは約3m60㎝ほどで、名古屋帯と大体同じです。
袋帯よりも短く軽く価格もリーズナブルで、前帯の幅も自由に変えることができます。
表地の模様は洒落袋帯と同じく金銀糸を使用しないものが主流で、そのため色無地や付下げ、小紋や紬など、礼装以外の幅広い着物での使用ができます。

小袋半巾帯|2枚の生地の端を縫い合わせた帯

先にご紹介した半巾帯は、その仕立て方によってさらに2種類に分かれます。
ここでご紹介する「小袋半巾帯」は、2枚の生地の端を縫い合わせてつくるもの。
表地と裏地の柄が異なるため、どちらを表にしても良いという特徴があります。
浴衣や着物はもちろん、袷の季節にも合わせられるため、年間を通して重宝される帯です。

兵児帯|ボリュームのある結びが似合う柔らかい帯

「兵児帯」は柔らかい化学繊維などの布の両端を縫い合わせた帯で、もとは男性や子供が普段着用する着物に使用していました。
現在では女性の浴衣などにも使用されるようになり、その色や柄、素材も多様になっています。
簡単に結べるのにふわっと華やかになりやすいのが特徴です。

男性の帯の格

男性の着物に合わせる帯は、女性の帯に対してたったの2種類しかなく、その使い分けも至ってシンプルです。
格が上の「角帯」はフォーマルなシーンで、カジュアルなシーンでは「兵児帯」を使用します。
以下でそれぞれの特徴を見てみましょう。

角帯|幅広く活用できるオールマイティな帯

男性の着物の場合、兵児帯以外では「角帯」を使用します。
主に袴下などに締めるため、フォーマルなシーンで活躍することが多いですが、現在では色や素材、柄によって浴衣などにも使用されています。
長さは約4m40㎝、幅は約10㎝というのが平均的なサイズで、女性の帯よりも幅が狭いのが特徴です。
一本あれば、どんな場面でも応用の効く便利な帯と言えるでしょう。

兵児帯|角帯よりもカジュアルな帯

女性の帯をご紹介した際にも触れましたが、男性の場合も普段着や浴衣など、カジュアルなシーンで特に使用されるのが「兵児帯」です。
こちらも子供や女性用の兵児帯と同様、柔らかい素材でつくられますが、男性用の場合その色は黒、紺、灰色の3色が主流です。
長さは約3m70㎝、幅は約50~74㎝というのが平均的なサイズで、角帯とは異なりかなり幅が広い帯という特徴があります。
よそ行きや礼装などのフォーマルな着物には使用できない帯です。

柄付けについて

ここまでは帯の格や種類について、合わせる着物と共に詳しく見てきました。
さらにここからは、帯の柄にも注目していきます。
その付け方は3種類の技法及び名称があるのですが、柄についてご紹介する前に、帯の歴史的な流れについて簡単に把握しておきましょう。
帯は元々、衣服の前が開かないように腰に巻くものとして誕生し、その初期の形状は縄状の組帯でした。
そこに装飾性が現れたのは桃山時代の頃。
当時、女性の多くが袴の着用をやめて小袖姿になり、帯の存在が目立つようになったことが関係しています。
そして、帯の装飾性が増すと共に帯幅も徐々に広くなっていきました。
やがて組帯が廃れると、次に裂地の帯が流行し、さらに総柄の帯が誕生します。
江戸末期には、深川の芸者によってお太鼓結びが考案されると、明治にはこの結び方が定着し、それに合わせて柄付けにも斬新な変化が見られるようになりました。
近年では、コストの削減を図るために全体の6割にだけ柄をつける技法が主流となっています。
それではここからは、帯の柄付けについて紐解いていきましょう。

帯の名称について

帯の柄付けにおける技法には、「全通柄」「六通柄」「お太鼓柄」の3種類があり、染めや織りに関係なく用いられます。
以下でそれぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

全通柄|帯全体に柄を入れる柄付け

無地、または帯全体に柄を入れる総模様タイプの柄付け技法、及びその帯を「全通柄」と言います。
よそ行き用には錦織などを用い、普段着用には昼夜着と呼ばれる、片面が模様でもう片面が無地の帯に用いられる技法です。
一面が柄、または無地で統一されていることで締め方の自由度が高くなり、江戸時代には様々な帯の結び方が流行りました。
主に袋帯、名古屋帯、細帯などに用いられる柄付け技法です。

六通柄|帯の6割ほどに柄を入れる柄付け

袋帯が考案された後に誕生したのが「六通柄」です。
着物を着用する際、胴に巻く帯の最初の一巻き部分は必ず隠れてしまうため、そこに柄がなくても良いのではないか、という発想から生まれました。
名称は、柄を着ける部分が全体の6割になることに由来します。
主に袋帯、名古屋帯などに用いられる技法です。

お太鼓柄|ワンポイントで柄を入れる柄付け

深川の芸者によって考案されたお太鼓結びに合わせ、前帯とお太鼓部分にのみ柄を付けたものを「お太鼓柄」と言います。
お太鼓結び自体は江戸時代末期に誕生したものですが、お太鼓柄の帯が商品化され市販されるようになったのは、昭和の初期頃と言われています。
全通柄と比較すると安価であり、当時ワンポイントの柄はファッション的にも斬新で目を引いたことから、瞬く間に浸透していきました。

まとめ

今回の記事では、着物に合わせる帯の基本的な知識についてご紹介してきました。
まず、帯は着物の格(グレード)によって合わせる種類が異なるということ、次に「袋帯」、「名古屋帯」、「半巾帯」の代表的な3つの帯から、種類ごとの平均的な長さと幅について見ていきました。
そして、この3つをさらに細分化して7つに分けた帯の格付けとそれぞれの特徴を捉えながら、男女の帯の違いについても確認しました。
柄付けには「全通柄」、「六通柄」そして「お太鼓柄」の3種類があることも覚えておきたいですね。
最後に、これから帯を選ぶ上で失敗しないために、帯の種類と格について簡単におさらいしておきましょう。
女性の場合、格が高く礼装に用いられることが多い「袋帯」。
準礼装からカジュアルなシーンで幅広く活躍する「名古屋帯」。
最も格が低く、普段着や浴衣に使用することが多いのが「半巾帯」です。
まずはこの基本となる3種類を軸に選んで候補を絞り、そこからさらに細分化された種類の中で、どれが最もふさわしいかを選んでいきましょう。
男性の場合、「兵児帯」はカジュアルなシーンでのみ使用できること、格が上の「角帯」は礼装を中心に幅広く活用できることを念頭に、この2種類を使い分けてみて下さい。