長襦袢の素材・仕立て・種類別の選び方を解説!衿が決まらない悩みやお手入れ方法まで網羅した完全版

長襦袢の素材・仕立て・種類別の選び方を解説!衿が決まらない悩みやお手入れ方法まで網羅した完全版


着物ライフが楽しくなってくると長襦袢をもっとおしゃれに着こなしたくなりませんか?
素材や仕立てを知るとその時期やシーンによりふさわしい長襦袢を選べる様になります。
着物の着姿は長襦袢が左右しているといっても過言ではありません。
しばらくすると衿が浮いてしまったり、着崩れてしまう事もちょっとした仕立ての違いが原因かもしれません。
長襦袢をもっとおしゃれに着こなしたい方や、長襦袢をよりよく知りたい人はぜひご覧になってください。

下記は着物の名称・寸法についての関連記事です。
どうぞご覧ください。

長襦袢とは

長襦袢は肌襦袢と着物の間に着るものです。
肌襦袢は上下分かれたものやワンピースタイプのものがあります。
汗などを吸い取り汚れから着物を守ってくれたり、裾除けの着付け方次第で補正の役割をしてくれます。
長襦袢は肌襦袢の上に羽織るものとなり、こちらも汚れから着物を守ってくれる役割があります。
また、袖口や衿からチラッと見える部分なのでコーディネートを変えて楽しむ事ができます。

襦袢の語源はポルトガル語

では、襦袢の語源についてみてみましょう。
戦国時代に、渡来したポルトガル人が素肌に着ていた肌着の「ジゥバン(gibàn)のことで、漢字の当て字として襦袢と書いた。と言われています。
当時は首から腰まで覆うのに用いられていました。

※書籍:時代考証家のきもの指南 参考引用

肌襦袢、半襦袢との違い

肌襦袢と半襦袢の違いは、一枚で着物を着られるかどうかです。

肌襦袢はその上に長襦袢を重ねて着る必要がありますが、半襦袢は肌着無しで着用し、その上から着物を着て良いものです。

半襦袢の素材は、肌襦袢と同じ綿100%で汗を吸い取る肌着としての役割があり、さらに長襦袢の重ねとしての役割も兼ね備えています。
半襦袢は名前の通り、丈が短いものとなるので裾除けと合わせて着用します。

長襦袢は江戸の遊郭発祥

意外なことに、半襦袢と比べると長襦袢の歴史は短いのです。
「襦袢といえば半襦袢」と言われるように半襦袢は長く用いられ続けていました。
登場したのは江戸時代中期と言われており、遊郭の遊女が部屋着として来ていたものでした。
吉原を描いた浮世絵などには長襦袢姿でくつろぐ遊女が描かれています。
登場してしばらくはあまり広まりませんでしたが、やはり遊郭の遊女が使うものは緋縮緬や綸子、羽二重など贅沢な生地を使った豪華なものであり真似をする人が出てきて流行り出しました。

※書籍:時代考証家のきもの指南 一部参考引用

規制品と誂え品の違い

着物は洋服とは違い、丸みのある体に合わせて着用するものです。
その為、着物の下に着る長襦袢が着る方の体型に合っているかというのは非常に重要です。
既製品でもサイズが豊富にあり、自宅での洗濯ができるので扱いやすいのですが、気をつけなくてはいけないポイントが2点あります。

・自分の体型と合っているか(特に着物と違い対丈なので、来た時の裾の丈が重要)
・着物と長襦袢の寸法があっているか

このどちらも合っているものでないと、着物を着た時に疲れやすくなってしまったり、着崩れしやすくなってしまいます。
誂え品であれば細かい希望に合わせて作ることができるので、このような問題から解消されます。
また、規制品に比べて生地も豊富で着物に合わせて選ぶ楽しさもあります。
絶妙な着心地の良さを求めて特別な一枚をオーダーしてみてはいかがでしょうか。

長襦袢の季節別仕立て方


次に、長襦袢の季節別の仕立てやおすすめ長襦袢をご紹介します。

春・冬の袷におすすめの長襦袢

春から冬の袷の時期は、一般的な紋意匠や一越などの一般的な織り方の正絹や化繊が良いでしょう。
化繊など素材によっては、静電気が起きやすいので着心地を重視する方は注意してください。

また、春・冬におすすめの長襦袢は無双袖のものを着用します。
無双袖とは、袖部分全体に表地と同じ生地で裏地がついているものです。
暖かいだけでなく、長襦袢の袖や振りなどからちらりと素敵に見せる部分でもあります。
その周りから見える部分だけ裏地をつけ、見えない真ん中の部分は単衣で仕立てる袖のことを「半無双」と呼びます。
仕立ての生地を少なくする事ができ軽いですし、周りからは袷の長襦袢に見せる事ができます。

夏・秋の単衣におすすめの長襦袢

夏場の一番暑い時期には、絽や紗の織り方をされた襦袢地がおすすめです。
絽や紗は隙間を開けた織り方をしていて空気の通りが良い作りになっています。
その為、暑い季節でも涼しげに見えますし、生地の透け感で長襦袢の模様を楽しんだりもできるのです。

また、麻の生地でできているものは吸水性も風通しも良いのでこちらもおすすめです。
ただ麻は正絹の着物とは相性が良くありません。
麻のように涼しく着こなしたいけど、正絹の着物に合わせたい。という場合は生地に触れた瞬間に肌の熱を奪い涼しく感じさせてくれるアイスコットン生地が良いですね。

長襦袢の基本的な仕立て方

それでは、長襦袢の基本的な仕立て方を見ていきましょう。

寸法の見方と測り方

初めて着物を作る場合は身長、バスト、ウエスト、ヒップ、裄の寸法が必ず必要です。
お持ちの長襦袢、着物に合わせて仕立てたい場合は◆印も参照してください。
その場合は下記の点に注意が必要です。

・長襦袢は平らな場所へ置き、しっかりと伸ばした状態にしてください。
・採寸する時は布を引っ張らないようにします。
・斜めに測るのでなく最短距離を直線で採寸するようにすると正しい寸法が測れます。

では、長襦袢の寸法の見方と測り方、ポイントをご説明します。

◇身丈
・見方 頸椎から足のくるぶしまで
・測り方 背筋を伸ばし真っ直ぐに立ち、首の付け根の頸椎からくるぶしまでを測る
・ポイント 長さの目安は着物から出ないくるぶしくらいまでが望ましい

◇裄丈
・見方 頸椎から手首のくるぶしまで
・測り方 腕を斜め45度下に向けた状態で、首の後ろの頸椎から肩山を通って手首のくるぶしが隠れるくらいまでの長さを測る
・ポイント 手のくるぶしが隠れるくらいがおすすめ

◇バスト・ウエスト・ヒップ
バスト・ヒップは一番高いところ、ウエストは一番くびれているところを測る

◆身丈(お手持ちの着物に合わせる場合)
・見方 肩山から裾まで
・測り方 2通りあり、一つは肩山から裾まで、もう一つは衿の下から裾までを測る
     必ずどちらから採寸したのかを明記する
・ポイント 最短距離を直線で測る

◆袖幅
・見方 肩山と袖山の間の縫い目から袖口まで
・測り方 平坦な床に置いた状態で縫い目から袖口までを直線で測る
・ポイント 測る前に布をしっかり伸ばす

◆袖丈
・見方 袖山から袖の裾まで
・測り方 平坦な床に置いた状態で袖山から袖の裾までを直線で測る
・ポイント 袖丸の部分で測ってしまうと正確なサイズではなくなる為、袖丸でない場所で測る

◆袖巾
・見方 肩山と袖山の間の縫い目から袖先まで
・測り方 平坦な床に置いた状態で直線で測る
・ポイント 袖の裾の方でなく山の方で測る

◆前巾
・見方 脇縫いから剣先の縫い目まで
・測り方 平坦な床に置いた状態で直線で測る
・ポイント お稽古などで動きの多い場合は、前巾を5分程度広めにすると動きやすい

◆後幅
・見方 脇縫いから背縫いまで
・測り方 平坦な床に置いた状態で直線で測る
・ポイント ヒップが大きめの方は後ろ巾を広めにとると着易く動きも楽になる

では、既製品を購入する場合はの注意点を見ていきましょう。
・身丈は自分のサイズと合っているか
 長襦袢は対丈の為、おはしょりを作らないで着用しても裾がくるぶしあたりにあると良い
・袖巾、袖丈、裄丈は手持ちの着物と合っているか
 多少大きい分にはほんの少しの補正ができますが、小さいと振りから出てきてしまう

男性と女性の長襦袢の大きな違いは袖付の部分(身八つ口)が開いているかどうかというところで、その他に大きな違いはありません。

三つの仕立て方

関西仕立て

女性がお召しになる長襦袢は、着物でいう衽のある関西仕立てが一般的です。
別衿仕立てとも呼ばれ、堅衿と別衿をつけて仕立てられていて下記の方におすすめです。

・ゆったりした衿合わせでかつ着崩れなく着たい
・腰回りやお腹周り、お胸がある方

身幅が広いのでお胸をしっかりと覆う事ができ、着崩れしにくいように衿も深く合わせる事ができます。

関東仕立て

男性の長襦袢は着物でいう衽のない関東仕立てのものが一般的です。
通し衿仕立てとも呼ばれ、立衿と衿が一緒になった1本の衿を通して仕立てられています。
男性の着用が一般的とお伝えしましたが、下記にあてはまる女性にもおすすめです。

・細身〜普通体型の方で着物を体によりフィットさせて着用したい
・衿合わせを浅くしたい

ただ、普通体型でもお胸や腰回りが大きい場合はおすすめしません
また衽部分の生地がない為、前幅が関西仕立てに比べて狭い仕立てとなります。
着用される方のサイズと合っていない場合は、衿が広がってしまうなど着崩れの原因となる為注意が必要です。

広衿仕立て

2倍の衿巾で仕立てたもので、半分に折ってから着用します。
衿幅を体型に合わせて変える事ができるので、着こなしはゆったりとしながらも着崩れの心配が少ない仕立て方です。
衿裏をつけているのでふっくらとしたした優しい雰囲気の着こなし方ができます。

・衿巾を好みに合わせて変えたい方
・お胸や身幅が大きめの方

お胸や身幅が大きい方は、通常の仕立てだと衿元が決まらない可能性があり、着付けてから時間が経つにつれ衿が広がってきてしまう場合があります。
その場合、仕立ての際に相談すると広衿仕立てや抱き巾広めなど、体型に合った形で仕立ててくれます。

襟芯

襟芯は襟周りや衣紋を凛とした美しい着姿に見せてくれる小物の一つです。
お店に並んでいるものでよく見かけるものは下記の3タイプです。

・メッシュの襟芯
・ポリエステルの襟芯
・綸子の襟芯

ゆかたや夏物の着物用とされる事のあるメッシュの襟芯は、柔らかいものなので衣紋のカーブが優しく首に沿うように出てくれます。
ポリエステルの襟芯は、柔らかすぎず・堅すぎずほどよく衿を整えてくれるものなのでレンタルセットの中でもよく使用されているものです。
薄くてツルツルと滑りが良いので半襟に楽に通す事ができます。
綸子の襟芯は厚みも硬さもあるので、重めの着物をしっかり支える事ができます。
かっちりとした衿が好きな方におすすめです。
ですが、体と衿が沿わず浮いてしまう事があるので細身の方には向いていません。

また、衿芯を入れずに三河芯を半襟の下につける事も衿をきちんと立てられるのでおすすめです。
地衿の上に三河芯を縫い付けてしまえば、半衿だけ外して使い回す事ができますね。

一部式・二部式

長襦袢には一部式、二部式と呼ばれるタイプのものがあります。
それぞれの特徴や良し悪しをお伝えします。

一部式 二部式
特徴 ワンピースタイプ 上下二枚に分かれている
メリット ・着姿がごわつかずスッキリ
・背縫いと衽があり体に添いやすい
・上下別なので身長に関わらず着用できる
・下半身の動きが上半身に響きにくいので動きの多い時に良い
・ご家庭で洗濯ができる
デメリット ・裾除け・長襦袢・着物の三枚を着ないといけないので夏場は大変と感じる方もいる ・裾除けはポリエステルのものが多いので裾周りがひっかかりやすい
・夏物の着物の場合、上の襦袢の線が見えてしまう
着心地 ・安定感がある
・正絹のものはしっとりと包まれるような着心地の良さ
・上下別で動きやすい
・軽くて楽な着心地

長襦袢の素材と着心地


それでは長襦袢のそれぞれの素材別に特徴や価格帯、着心地、着物の素材との相性を踏まえてご紹介します。
ちなみに基本的に着物の相性が良いのは同じ生地同士です。
素材によっては別の生地でも相性の良い組み合わせがありますのでそちらをお伝えします。

正絹

絹特有の気品のある美しい光沢が特徴の生地です。
価格帯は他の生地に比べ高めですが、きめ細かい生地で極上の肌触りなので着心地では正絹が一番良いといえるでしょう。

洗える正絹『ふるるん』

正絹の着物の着心地が良いけれど、お手入れが大変という方はご家庭で洗える正絹『ふるるん』がおすすめです。
特殊防縮技術の為、縮みを最小限に押さえられるのでお手入れが楽になります。
繊維の中の分子レベルまで撥水剤と結合させているので、水や汚れからしっかりと守ります。
汚れがついても落としやすいので安心感がある生地です。
また、スレ・毛玉の原因となる毛羽立ちを防げるよう繊維を特殊な方法で加工してあります。

化学繊維

ご家庭で簡単に洗う事ができ、シワになりにくい事が特徴のポリエステルの生地をご紹介します。
比較的安価で手に入る生地ですが、吸湿性には優れておらず夏場は蒸れてしまったり、乾燥する冬場には静電気が発生しやすいです。
また、正絹の着物とポリエステルの長襦袢の相性は悪く静電気が発生しやすいのでおすすめしません。
ただ、お手入れが簡単なので安心して着用する事ができますね。

麻・トスコ

生地がしっかりしていて透けにくいですが、風通しも吸水性もありサラッとしている生地が特徴です。
天然素材なので着ていて気持ちがよく、比較的安価でご家庭での洗濯も可能です。
ただ、麻だけの場合はシワになりやすく足捌きも気になるという方もいるかと思います。
その場合は、トスコ麻がおすすめです。
トスコ麻はポリエステルと麻の混紡した生地になるので、涼しくお手入れも楽で足捌きも気にならないように作られています。
また、麻の着物を正絹などのやわらかい着物と合わせるとゴロつきが表面に出て目立ってしまうのでおすすめしません。

アイスコットン

アイスコットンは触れた時にひんやりと冷たく感じる接触冷感の天然素材の生地です。
天然素材なので合繊アレルギーの方でも安心して着用できます。
着崩れしにくくシワにもなりにくい。さらに洗濯可能でどんな素材の着物でも相性が良いです。
麻のように涼しく、だけどごわつかないという快適さから夏場に人気の生地です。

長襦袢の格と色柄

では、格式と着用シーンごとに解説します。

礼装向けの「白」

留袖や喪服を着るときは礼装向けの白の長襦袢を選ぶようにしましょう。
自分らしさを求めるよりも格式、品格が大切です。
礼装向けの白い長襦袢の中にも地紋がたくさんありますので、着用シーンに応じて柄を選ぶようにしましょう。

お祝いの席では、縁起の良いおめでたい柄がおすすめです。
四君子、七宝、亀甲などの吉祥文様が入っているものは慶事の際に良いですね。

お別れの席では、蓮や流水などを着用する場合が多いです。
あまり着用の機会がないので、慶弔両用できる長襦袢が欲しいという方は菊や檜の枝をデザイン化した檜垣、雪のデザインの雪輪柄などがおすすめです。
慶事向けの文様より慶弔両用の文様の方が多いので探しやすいかもしれません。

準礼装から普段まで使える「淡いぼかし」

準礼装のよそゆきの時に使う長襦袢から普段着として使う長襦袢は、「淡いぼかし」の長襦袢が使えるでしょう。
ただ、準礼装の場合は着物の存在感から出過ぎてしまわないよう控えめにした方が粋です。同系色のお色味で合わせたりと、着物に添えるようにコーディネートした方が全体のバランスが良いです。

普段着として使う場合の「淡いぼかし」の長襦袢は、特にお色味なども気にせずに楽しんでください。
長襦袢の色味を変えるだけで、帯締めや重ね衿と同様全体の雰囲気が大きく変わります。
そういう細やかなところの似合わせを考えるのが楽しくなってきている方は、素敵な着物ライフを楽しまれているのでしょう。

普段向けの遊び心満載「カラー襦袢」

遊び心を出したい、自分らしい雰囲気で着物ライフを楽しみたい時には、「カラー襦袢」を合わせてみてはいかがでしょうか?
無地の着物に色物の長襦袢を合わせると、内袖や袖口からちらっと見えた時におしゃれですね。
手を抜こうと思えば抜けるからこそ、その人らしさやこだわりを表現しやすい部分でもあります。
ぜひ影の主役として「カラー襦袢」をコーディネートしてください。

[正絹]着心地抜群なお洒落長襦袢

こちらは猫の足跡がお散歩しているように見える可愛い猫柄のお洒落長襦袢です。
水で洗える「ふるるん」なので、汗をかく時期でも活躍間違い無しです。

大きなふんわりとしたひよこが飛び柄で描かれている長襦袢です。
配置によっては袖口や内袖からのぞくように着こなせます。

[化繊]手軽にコレクションしたくなる長襦袢

黒地に茶色のキツネが可愛い長襦袢です。
対色の白や薄めの色味と合わせれば、よりチラッと見えた時の存在感があるので着る方も見る方も楽しめるコーディネートとなりますね。

こちらのお洒落長襦袢は濃い目のオレンジ地で見る人をハッとさせるようなお色味です。
大波を軽々超えていくような帆船が描かれていて思わずコレクションしたくなってしまいますね。

長襦袢の選び方

様々な視点から長襦袢をおすすめしましたが、結局どれを選べば良いのかと迷われていませんか。
そういう場合は、優先順位を先に決めて考える様にすると必然と選ぶべき長襦袢が絞れます。

予算で選ぶ

まずは価格帯を知る事で予算から選ぶ事ができます。
正絹、麻、化繊それぞれ誂え品と既製品のおおよその価格を確認してください。

正絹 化繊
誂え品 2万〜10万円 1,5万〜6万円 1,5万〜4万円
既製品 1万〜4万円 1,5万〜3万円 3千円〜2万円

また、お店によっては生地の違い別の料金ではなく一律の場合もあります。

着心地で選ぶ

着心地を優先させる方は、静電気が起きやすい化繊はおすすめしません。
体の曲線に寄り添い、優しく包み込んでくれるような着心地はやはり正絹が一番です。
ただ、夏場など汗ばむ季節には汗をかくと肌に張り付いてしまう正絹よりも風通しの良い麻の着物がおすすめです。

また、仕立て方によっては暑い季節でも着心地よく過ごせるものもあります。
麻だとカジュアルのよってしまうため、フォーマルな場面でも使用したい場合は絽や紗の長襦袢を使用すると良いでしょう。
生地は正絹でも化繊でもあります。
紗は全体に等間隔ですき間があいていて、高い透明感で通気性が良い生地です。
絽は定期的にすき間を作ったシマシマの透け感が入っていて、紗よりも透ける部分は少ないものです。

手入れのしやすさで選ぶ

手入れのしやすいものを優先される方は、ご家庭で洗濯ができるものを選ばれると良いでしょう。
麻や化繊にふるるんは洗濯できる生地なので、普段着として気軽に着物を着たいという時にも良いですね。
化繊やふるるんはシワになりにくく収納や保管もしやすいです。
麻の生地はシワになりやすいですが、シワがとれやすくもありますのでこちらも手入れはしやすいといえるでしょう。
また、手縫いのものよりもミシン縫いの方が丈夫で何度洗濯しても大丈夫です。

色柄で選ぶ

自分らしさや季節に合った柄物で何気ないおしゃれを楽しみたい方は色柄で長襦袢を選ぶと良いでしょう。
着物とコントラストをつけてハッとさせるような色合いを選んでみたり、春夏は明るい温かみのあるもの、秋冬はこっくりと深いお色味を合わせてみるのもおすすめです。
着ている本人からはあまり見えない部分ですが、だからこそ着る方のセンスが表現できたりその人らしさを伝える事ができます。
特に夏物は着物が透けて見えるので中に着る長襦袢のお色味や柄が見えます。
長襦袢で雰囲気を大きく変える事ができるので襦袢を一番楽しめる季節でもあります。

長襦袢のお手入れ・保管方法

では長襦袢に特化したお手入れ方法や保管方法をご紹介します。

基本的な考え方はきものと同じですので、下記の関連記事もご参照ください。
◉着物のクリーニングを解説。お店選びのコツから、万が一の時の応急処置まで

素材別の注意点はそれぞれ素材ごとに違いますので、下記の素材別関連記事もご参照ください。
◉着物の素材には何がある?生地の種類と見分け方・選び方を紹介

◉麻の着物の特徴は?歴史や見分け方、代表的な織物の種類を紹介

◉化繊・ポリエステルの着物は初心者におすすめ?正絹との違いや東レシルックなど紹介

素材に応じた洗い方を選ぼう

正絹の長襦袢はご家庭で洗濯をするのでなく、着物のクリーニングを行っている専門店へ持っていくようにしましょう。
おおよその相場は、2千円〜5千円ほどです。
わざわざ専門店へ持っていくのが大変だ、という方はふるるんのように正絹でもご家庭で洗濯可能なものを選ぶようにしてください。

化繊や麻などの洗える素材のものは、洗濯ネットに入れてお洒落着洗いをするか、手洗いで洗濯がおすすめです。

丸洗いや洗い張りについての知識や、応急処置が知りたい方は下記の着物のお手入れページを見てください。
◉着物のクリーニングを解説。お店選びのコツから、万が一の応急処置まで

長襦袢を干す際の注意点と、麻のシワ伸ばし裏技

ご家庭で洗濯をする場合は、洗い方だけでなく長襦袢の干し方も重要です。
・シワにならないようにきちんと生地を伸ばす
・着物用ハンガーに掛けて、日陰で干す(直射日光はやけをおこし色褪せの原因となる)

麻の素材はシワになりやすいため、手洗いをした後に脱水せずにそのまま水浸しの状態で着物用ハンガーに干す方法がおすすめです。
こうする事で、水分の重みでシワが伸び綺麗な状態で乾燥できます。
ベランダに干すまでに部屋を水浸しにしない様に洗面器などを駆使して移動してくださいね。
長襦袢にアイロンをかけたい場合は、低温で当て布をして優しく素早くかける様にしましょう。
特に絹の生地に対してスチームなどの水分をつけると縮みの原因になるのでやめましょう。

長襦袢のたたみ方と保管方法

1.長襦袢を横に広げて下前側の方へ座る
2.シワを手で伸ばしながら手前の脇目を基準に中心へ畳む
3.上前も同じ様に脇目を基準に中心へ畳む(2の上へ重ねる)
4.着物でいう衽線部分を基準に中心へ向かって畳む
5.袖の幅の3分の2を目安に手前に折り返す
6.上前も同じ工程を繰り返す
7.裾から衿へ向かって半分におる

保管はたとう紙、桐たんす、きものキーパーが良いです。

たとう紙は着物や長襦袢を収納する専用の包み紙です。
カビやチリ、シワを防いでくれる役割です。
ただ、何年も使い続けると斑点の様なシミやカビが生えたりします。
それが着物や長襦袢に移ってしまうこともあるので、梅雨時期の終わりや何年も同じものを使い続けている時は一度確認してみてください。

桐たんすは、一年中最適な湿度となるように自然に調整してくれる特徴があります。
桐は害虫や湿気などに強い素材の為、着物収納に適しています。
気をつけるポイントは、湿気のあるものを中に入れたり、汚れた手で触ってしまうとカビなどの原因となってしまうので清潔な状態で開け閉めするようにしましょう。

きものキーパーは、三種構造の機能性フィルムのプロガードを使用しているのでカビから着物を守ってくれたり、高密着チャックで虫食いから着物を守る役割があります。
防虫剤や虫干し不要で、色褪せや水害からも守ってくれる為人気のある商品です。

化繊や麻、綿素材であれば洋服と同じ感覚で収納して構いません。
ただ、シワのまま入れてしまわないように気をつけてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
一口に長襦袢といっても本当に奥が深く、着心地を追求される方は仕立ての細かい寸法を一つ一つ指定して拘る方もいらっしゃいます。
それほど、着心地の良い長襦袢は全体の着姿に深くかかわるからです。
また、季節で仕立て方や素材のおすすめをしましたが、体感温度には個人差があるため、年中麻や夏物の襦袢を着用している方もいます。
ご自分の生活スタイルや体型に合う長襦袢を見つけつつ、何か着づらいと感じた場合はぜひ色々な仕立てのものを試して、自分にあった長襦袢を見つけてください。

下記に関連のURLをご紹介しますので、こちらも合わせてお読みください。
◉和装小物