仕事や家庭での役割が増え、フォーマルな場に出席する機会も多くなる40代。
結婚式や入学式、七五三など節目の行事に「せっかくなら着物を着たい!」と思う一方で、「どんな着物を選べば年相応に見える?」「髪型やメイクはどうすればいいの?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
さらに
「若い頃とは似合う色柄が変わってきた…」
「場にふさわしい装いをしたいけどルールが多そうで不安」
「40代にふさわしい着物って何があるの?」
など、40代ならではの悩みが出てきますよね。
そこで本記事では、40代の魅力を引き立てる着物の選び方と、結婚式や入学式から、食事会や同窓会などシーン別のおすすめの着物をまとめました。
さらに、初心者にも分かりやすい着物の基本情報も合わせて、着物に合う髪型やメイクのポイントも解説しています。シーンに合った上品な着物が選べることで自信を持てるようになり、周囲からの好印象を得られるようになりますよ。
40代ならではの魅力を引き立てる着物スタイルを見つけたい方、自信を持って着物姿を楽しみたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の目次
40代の着物は上品さがカギ
40代の女性にとって、着物姿は成熟した魅力と品格を表現できる機会です。特にフォーマルな場面では、20代や30代で重視される華やかさよりも、大人で洗練された上品さがよく似合います。
成熟した大人ならではの魅力を最大限に引き出すためのカギは「上品さ」です。着物選びはもちろんですが、合わせる帯や小物、髪型やメイクなど全身のバランスを考えると大人の女性の魅力を最大限引き出せますよ。
あなたに合った色柄、髪型、メイクを選ぶポイントをご紹介します。
落ち着いた色味が似合う40代
40代の女性には、落ち着いた色味の着物を選ぶと魅力がより引き出されます。と言っても「落ち着いた色=茶系やモノトーン」ではありません。
グレーの入ったブルーやピンク、淡い色合いの黄色など、優しい色合いを選ぶと肌馴染みが良くておすすめです。他にも、深みのあるブルーやワインを思わせるような赤なども、落ち着いた印象になりますよ。
もし20代や30代の「娘時代」に着ていた着物をお持ちの場合は、着物自体が華やかすぎたり派手すぎたりする場合が多く、そのまま着ても40代には馴染みにくいことがあるため、注意が必要です。
もし娘時代の着物を着るときは、帯や小物を変えて印象を大きく変えましょう。例えば、帯締めや帯揚げに落ち着いた色味を取り入れることで、大人らしい雰囲気に仕上げることができます。
帯や小物を変えてもまだ違和感が拭えない場合は、着物の「染め替え」もおすすめです。トーンを落とした色に染め替えれば再び活用できますよ。
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40代におすすめの髪型
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着物を着るときの髪型にも、年齢に合わせた選び方があります。
全年齢に共通するのは、まとめ髪です。特に結婚式への参列や式典への出席などフォーマルシーンではマナーとして、肩にかかる長さの髪はアップスタイルにしましょう。下を向いても髪が落ちてこないことを目安にしてください。
40代の髪型選びでポイントになるのがボリュームです。40代になると髪質に変化が起こり、ボリューム不足に悩む方も少なくありません。そのままアップスタイルにしてしまうと、分け目がはっきりと出たり、頭の形がわかりすぎてしまうこともあります。
後頭部に程よくボリュームを出したスタイルにして、大人らしさと若々しさを演出しましょう。
ただ、きちんと感を出すためにも、セットしないまま外出してしまうのはNGです。ショートやボブの方も簡単にでも良いので、ポイントに沿ってヘアアレンジを加えるときちんと感が出ます。
華やかさをプラスしたいときには、髪飾りがおすすめです。大人の女性には、落ち着いた魅力を引き出してくれる扇形のかんざしがよく似合います。べっ甲やパールなど素材にこだわるとさらにおしゃれ度がアップしますよ。
40代のポイントを守りつつ、自分に似合う髪型を選んで上品さと魅力を演出してくださいね。
▼着物を着ていくシーン別、髪の長さ別のヘアスタイルを知りたい方はこちらも参考にしてください
40代女性向け!着物に合うメイク
くすみやたるみといった肌の悩みも増えてくる40代。着物の色も落ち着いた色が多くなるので、メイクのやり方も若い頃とは気を付けるポイントが異なります。
意識したいのは、自然な美しさを引き出しながらも、全体のバランスを整えることです。ベースメイク、アイメイク、リップメイクの部位別に40代が意識したいポイントをご紹介します。
ベースメイクはトーンアップ下地を活用して透明感のある肌へ
ベースメイクで目指すのは、白くて透き通るような肌です。そのために日頃のスキンケアを徹底することはもちろんですが、トーンアップ下地を活用します。
3種類ある下地ごとの特徴を以下の表にまとめました。
下地 | 効果 | おすすめ |
イエロー系 | ・肌のくすみを隠す ・自然な肌色に見せる |
・肌の色が白い方 ・パープル系が合わない方 |
パープル系 | ・肌のくすみを隠す ・クマやたるみを目立たなくする ・肌を明るく見せる |
・イエロー系が合わない方 ・肌の色が白い方 |
パール系 | ・顔色を明るく見せる ・艶のある肌を作る |
・肌艶を引き出したい方 ・立体感を抑えたい方 |
肌悩みや色によっても、相性の良い下地は変わります。いくつか試してみて、いつもよりもワントーン明るい肌を目指してみてください。
アイメイクは細く長めのアイラインで和風美人に
アイメイクは、控えめでありながらキリっとした和風美人の印象を意識して仕上げるのがポイントです。
アイラインは、細くしっかりと入れ、目尻を少し長めに描いて切れ長風に仕上げます。跳ね上がる形は避け、目尻に合わせた自然な形を意識しましょう。大人の女性独特の色っぽい雰囲気になりますよ。
アイシャドウは肌に馴染みやすいベージュ系が基本です。着物のメインカラーを取り入れると自然な雰囲気に仕上がり、帯や着物のワンポイントカラーを取り入れるとおしゃれな印象になります。
ただ、色柄がにぎやかな着物の場合、アイシャドウでたくさん色を入れてしまうと、うるさく感じてしまうため注意が必要です。ベージュ以外の色を選ぶ場合は、着物や帯に使われている色から一色選ぶのがおすすめです。着物姿全体に統一感が出て洗練された印象になります。
リップメイクのポイントはふっくらした艶っぽさ
着物姿には基本赤いリップが似合いますが、落ち着いたコーディネートが多くなる40代では、あまり明るすぎる色だと浮いてしまいます。
さらに、普段は重宝するベージュ系やブラウン系などのナチュラル系の口紅は、華やかな色柄の着物に負けて、メイクをしているのにどこか地味な印象になる可能性も…。着物のイメージに合わせて、黄色がかった赤などの落ち着いた色で上品に仕上げましょう。
着物のリップメイクでポイントとなるのは、ふっくらとした艶っぽさ。
ファンデーションなどで唇の色を消してから、リップライナーでしっかりと輪郭を取り、色を乗せていくと美しく仕上がりますよ。
40代に合わせた着物の色柄選び
40代では、年齢に応じた上品さと洗練された雰囲気を重視することが、着物選びのポイントです。30代前半と後半では似合い方が変わるように、40代ではさらに成熟した魅力を引き立てる着物が求められます。長い目で見て無難になりすぎず、TPOにも自分にも合った着物を選ぶためのポイントを3つご紹介します。
パーソナルカラーから選ぶ
パーソナルカラーは、一人ひとり異なる肌や髪、目の色に合わせて最も似合う色を見つけるための手法です。洋服選びやメイクの参考にすることが多いですが、着物選びにも役立ちます。
着物には柄があり、カラフルなものも多いので、着物の中でもメインに使われている色や、たくさん使われている色を参考にしてください。ヘアカラーやメイクでも印象は変わるので、着物を選ぶ際には一度顔に近いところに当ててみて、顔映りを確認しましょう。
着物もファッションですから、好きなものを着て楽しむことが重要です。
しかし、自分のパーソナルカラーを知れば、黒以外の細くすっきり見える色や自分に似合うピンクがわかり、色選びの選択肢が増えます。自分に似合う色を知ることは、あなた自身の魅力をアップさせ、着こなし上手への近道にもなりますよ。
イエローベースとブルーベース別に40代に似合う色と柄をまとめましたので、ぜひ参考になさってくださいね。
暖色が似合うイエローベース
生まれ持った肌色のベースが黄色寄りの方は、イエローベース(イエベ)に分類されます。イエベの方におすすめなのは暖色を基調とした着物です。
中でもイエベ春タイプの方は、軽やかで柔らかな色合いがよく似合います。白やクリーム系はもちろん、淡いピンク系やグリーン系などのパステルカラーもおすすめです。柄はレトロなタイプや大胆なデザインよりも、梅や鞠、動物など可愛らしい柄を選びましょう。
春タイプより落ち着いた印象のあるイエベ秋タイプの方には、彩度や明度が低いアイボリーやバニラホワイトがおすすめです。他にも、アースカラーと呼ばれるベージュやモスグリーンなどのくすんだ色、サーモンピンクやピーチピンクも地味にならず、華やかな印象になります。柄なら、吉祥柄や牡丹、レトロ柄など大胆なものがよく似合いますよ。
寒色が似合うブルーベース
肌色のベースが青色寄りの方は、ブルーベース(ブルベ)に分類されます。ブルべの方におすすめなのは寒色を基調とした着物です。
中でもブルべ夏タイプの方におすすめなのが、初夏に咲くあじさいのような淡い紫やピンクなど、中明度で中彩度のパステルカラーです。
柄なら、桜や菊、蝶など女性らしさを演出してくれるフェミニンなイメージで選んでみてください。格子柄や細かいドットなども上品な雰囲気をより引き立ててくれますよ。
一方、同じブルべでも、コントラストがはっきりしているのがブルべ冬タイプです。ブルべ冬の方にはメリハリのある、彩度が高い青みがかった寒色系が似合います。クールな雰囲気にぴったりな、ビビットなグリーンや紺色の他、モノトーンカラーがおすすめです。
さらに、敬遠されがちな大柄や濃い色の着物も、ブルべ冬タイプの魅力を存分に引き立ててくれますよ。
季節に合わせた色・柄を選ぶ
着物を着る時期が決まっているのであれば、その季節に合わせた色柄を意識するのもおすすめです。季節の雰囲気に着物が馴染み、一気に着なれている感、着物上級者の雰囲気を纏えます。
人それぞれ似合う・似合わないはありますが、控えめな小紋柄や、草花柄などを取り入れると40代の落ち着いた印象になるのでおすすめです。無地に近いデザインの着物に、さりげなく散りばめられた柄があると、主張しないシンプルさの中に洗練された印象を与えます。
以下に、季節ごとにおすすめの色と柄をまとめましたので、ぜひ参考になさってください。
季節 | 色 | 柄 |
春 | ・花をイメージさせる明るいパステルカラー ・春を思わせるピンクや空色 ・桜の時期が終わったら、若草色や藤色などのやや落ち着いた色味 |
・桜文様、桜とともに他の季節の花も描かれた吉祥文様のもの ・芽吹き・桃・桜・牡丹・菖蒲・蝶など |
夏 | ・見ているだけで涼やかな気持ちになれる色 ・モノトーンや薄い色、寒色系 |
・紫陽花や朝顔、金魚などの夏をモチーフにした柄 ・季節を先取りした蜻蛉や桔梗、撫子など ・涼やかな印象になる氷割れや雪輪などの冬らしい文様を取り入れるのも◎ |
秋 | ・秋の景色を思わせるようなこっくりとした濃い色 ・深みのある赤やオレンジ |
・紅葉やすすき、月見 ・木の実やきのこ、かぼちゃ ※月の描かれた帯に、ウサギの帯留めを使るなど、物語性のあるコーディネートも秋の楽しみ |
冬 | ・暖かさを感じる暖色系か黒に近い濃い色 ・クリスマスや年末年始など華やかな雰囲気に合わせて賑やかな色合いも好まれる |
・椿や南天、年明け以降は梅の花 ・松や雪の結晶 ・近年は、クリスマスツリーやサンタ、チョコレート柄など、モダンな柄も豊富 |
TPO・雰囲気に合わせて選ぶ
「着物は決まりが多くてちょっととっつきにくい…」と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか? しかし、洋服でも、普段着からビジネスシーン、冠婚葬祭など、TPOに合うものを当たり前のように使い分けていますよね。
着物も同じなのですが、難しく感じてしまう原因のひとつとして、自分で着る機会や周囲で着物を着ている人を見る機会が圧倒的に少なく、感覚で選べるほど経験を積んでいないことがあります。
20代・30代ではある程度許容されていたとしても、40代にはきちんと把握した上で自由な着こなしを目指したいもの。大人ならではの嗜み(たしなみ)とも言えるTPOを踏まえた着姿は、余裕のある女っぷりを醸し出してくれます。
まずは着物の「格」をざっくりと把握しておきましょう。第一礼装から普段着までそれぞれの着物と「紋」の有無による格の違いを把握したら、「主役よりも格を下げる」ことを意識しておくと間違いがありません。
結婚式なら、主役の新郎新婦とその親族の方々が「第一礼装」に対し、ゲストは「準礼装」を選びます。入学式卒業式であれば主役は子どもたちなので、両親は子どもたちより1ランク下の「格」に合う着物を選ぶのがポイントです。
ただ、近年は従来のルールにとらわれ過ぎない着こなしも増えてきました。
結婚式ひとつをとっても、親族や仕事の関係者を招待した場合と、親しい友人だけのパーティーの場合では、着物の格は変わってきます。
着ていく着物やコーディネートに悩んだときは、事前に会場の雰囲気や、他の参加者の顔ぶれを確認するのがおすすめです。もし同じように着物で参加する予定の方がいたら、どんなコーディネートで行くのか話をするのもよいでしょう。
TPOや着物の決まりだけにとらわれず、会場の雰囲気や周囲に合わせて着物を選んでくださいね。
▼着物の格やTPOに関して詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
40代の結婚式におすすめの着物
結婚式へ参列する際は、一般的な色柄の選び方以外にもある程度のマナーが求められます。
そのため、基本的にはTPOに基づいたきちんとしたコーディネートがおすすめです。
主役である花嫁が身に着ける白、赤や黒はNGとされています。さらに、極端に華美になりすぎないこと、ウールや紬などのカジュアルな着物を選ばないことを守れば、ある程度自由に着物や帯を選んで問題ありません。
黒留袖や色留袖、訪問着を選ぶ方が多いですが、立ち位置や会場によってふさわしい着物の格も変化します。近年は親しい友人同士だけで小規模のパーティーを開催したり、カジュアルな結婚式を挙げるケースも増えてきました。結婚式や披露宴では好まれる訪問着も、会場や規模によっては浮いてしまうことも…。
最も大切なのは、主役である新郎新婦をお祝いする気持ちを持って、会場の雰囲気に合わせた装いをすることです。シチュエーションや立場別に、40代におすすめの着物をご紹介します。
主催者・親戚側の場合
新郎新婦の叔母やいとこなど、主催者・親戚側として参列する場合、最高格の着物である第一礼装を着用することがマナーです。一般的に、新郎新婦の友人など参列者は主催者側よりランクをひとつ下げた着物で参列することが求められているため、格が並ばないように配慮する必要があります。
黒留袖か、色留袖を選ぶと、40代にふさわしい格式と品位を考慮した装いになるのでおすすめです。いずれの着物を着る場合でも派手になりすぎず、上品で落ち着いた装いを心がけましょう。
黒留袖
黒留袖は、既婚女性の第一礼装です。新郎新婦の母親として参列する場合は、背中の中心、両胸、後ろの両袖(肩)の5カ所に紋の入った5つ紋付の黒留袖を着用しましょう。
格調高い鶴や亀、松竹梅、鳳凰など吉祥文様は結婚式にふさわしい絵柄です。また、合わせる袋帯も唐織りや錦織りなど格のあるものがおすすめです。
新郎新婦の母親が着るイメージが強いですが、主催者・親族側の既婚者であれば黒留袖を着用しても問題ありません。
ただ、地域や家によって黒留袖のルールが変わるので、新郎新婦やその両親の意向を確認して決めたほうがよいでしょう。
▼黒留袖の選び方や帯の合わせ方など、詳しく知りたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
色留袖
未婚既婚問わず着用できるのが色留袖です。黒留袖の次に格式が高い着物とされています。特に5つ紋が入っていると第一礼装として着用が可能です。
叔母の立場で参列する場合や、黒留袖を着用する参列者が多くなりそうなシーンにも、会場を華やかに彩ってくれます。
▼色留袖の紋による格式の違いや選び方、帯や小物の合わせ方など、詳しく知りたい方はこちらの記事もおすすめです。
招待客・ゲスト側の場合
友人や知人として結婚式に招待された際の着物は、セミフォーマル(準礼装)やインフォーマル(略礼装)が基本になります。
近年増加しているカフェやレストランでのカジュアルパーティーの場合は、会場や雰囲気に合わせて格を下げますが、一般的な結婚式の場合は「訪問着・付け下げ・色無地」を着る方がほとんどです。
ただ留袖や、五つ紋が入っている訪問着や色無地などを着ると格が高くなりすぎてしまい、マナー違反になるケースもあるので注意してくださいね。
訪問着・付け下げ
華やかな装いでお祝いの気持ちを表したい結婚式や披露宴には、訪問着か付け下げがおすすめです。汎用性が高く、色柄によっては長く着られる着物が多いので、一枚持っていると後で解説する入学式や卒業式など子ども関係の行事にも活躍してくれます。
訪問着と付け下げの明確な違いは、縫い目を越えて柄がつながっているかどうかです。落ち着いている柄の多いほうが付け下げ、より華やかなのが訪問着というイメージがあります。
結婚式に合わせてレンタルするのであれば、華やかな色やお祝いの席にふさわしい吉祥柄の着物を選びましょう。もし、購入するのであれば、今後も長く着られるように、帯を調整すればコーディネートの幅が広がる控えめな柄がおすすめです。
40代の方には派手すぎず落ち着きすぎない控えめなピンクや水色など、華やかさのある色が人気ですが、長く着るためにも気持ちが上がるような一枚と選んでくださいね。
色無地
「お祝いの席に向く訪問着や付け下げを着る機会なんてそう多くないしな」「華やかな着物は気後れする…」そんな方におすすめなのが色無地です。一色で染められた柄のない着物のことを言います。
色無地は本来準礼装に分類されますが、紋の数や合わせる帯によって格が変わります。
5つ紋を入れると礼装に格上げされますが、活用シーンが限られるため現代であまり見られなくなっています。三つ紋を入れると準礼装となり一つ紋の訪問着より格上に、1つ紋なら無紋の訪問着よりも格上に、紋を入れなければおしゃれ着感覚でも着られる着物です。
近年は用途が広がる紋なし、もしくは1つ紋に帯で格を上げるのが主流になっています。
一色で染めるという特徴から染め替えがしやすく、丈夫な生地であれば一枚の着物でもお好みで年代を重ねるごとに深みのある色に染めていくこともできます。何十年も着続けられる着物です。
▼色無地のコーディネートや紋による格の違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
40代ママ向け!入学式・卒業式・七五三の着物
子どもが主役となる入学式や卒業式にも、着物は活躍します。
学校行事に参加するなら華やかな装いができる「訪問着・付け下げ・色無地・江戸小紋」がおすすめです。
ただし、あくまでも子どもが主役で、親は引き立て役。奇抜すぎる装いや色柄よりも、正統派ではんなりとした雰囲気のほうが、より40代ママの魅力を引き出してくれます。
季節ごとに合った装いやマナーを意識し、会場の雰囲気やマナーにも配慮しましょう。
訪問着
古典柄で淡い色が多く、上品な訪問着は、年相応の華やかさが演出できます。年齢や既婚・未婚を問わず着られるほか、伝統的な古典柄からモダンなデザインまで、バリエーション豊かなのも魅力です。
入学式や卒業式に着ていくなら、春に行われる行事なので、桜などの春らしい柄や色や、吉祥紋様などお祝いの席に向いた柄を選びましょう。
一方、秋に行われる七五三には、シックな印象の濃い色の訪問着が向いています。
着ていく時期に合わせて着物の色や柄を選ぶのも楽しいですが、春と秋両方で着用したい場合、着物ではなく帯を変えるのもおすすめです。春は淡い色、秋はこっくりしたアースカラーの帯にするだけでも、印象ががらりと変わりますよ。
もし訪問着では華やかすぎるかも…と感じた場合は、黒の羽織や、白や生成りのレース羽織を羽織ってみてください。羽織が着物を適度に隠してくれるので、全体の印象を調整できます。さらに、春先や秋特有の体温調整にも重宝しますよ。
ママ友からの印象も良く、子どもの式典で着ていく着物の中では特に人気の着物です。
付け下げ
付け下げは、訪問着に比べて柄の割合が少ない着物です。訪問着と同じように着られますが、帯によって「格」を落として着用できるため、主役を引き立てたい場で着用されています。
「訪問着だと華やかすぎて気後れする」「控えめな装いがしたい」という方にぴったりの着物です。
付け下げも吉祥文様や花文様などがありますが、控えめな中にも華やかさがにじむデザインのものを選ぶと、上品さが演出できて着物を着る楽しさが増しますよ。
近年では訪問着と付け下げの違いが明確に分からない着物もあります。その場合は、柄の割合が少ないものを選びましょう。
色無地・江戸小紋
付け下げ以上に着回しがきき、コスパの良い着物が色無地と江戸小紋です。
江戸小紋とは、遠目には無地に見えるほど極小さな柄を、一色のみの型染めで染めた小紋のことです。柄によっても格の違いがあり、特に格の高いものとして「三役」と呼ばれる鮫、行儀、角通しがあります。三役の江戸小紋に1つ紋を入れると1つ紋の色無地と同じ格として着用可能です。柄が細かくなるほど格が高くなることも、把握しておきましょう。
無地、または無地に見える着物なので、合わせる帯や小物次第で子どもの行事はもちろん、買い物や食事会などまで活躍してくれます。これから本格的に着物を着る機会を増やしたい方におすすめの着物です。
入学式や卒業式では袋帯を締めて、フォーマルに装いましょう。上品かつ目立ちすぎず、しかも華やかさも演出できます。
お子さまがまだ小さくて正絹では汚したときが怖い…という方には、ご自宅で洗濯できる化繊の着物もおすすめです。
色無地も江戸小紋も紋の有無によって格が変わりますが、近年は紋なしで仕立てて、帯次第で格を変える着方が主流になっています。柄がとても細かい江戸小紋の中には、色無地として着ることのできるものもあるため、あまり難しく考えず、好みのものを選んでくださいね。
▼色無地のコーディネートや紋による格の違いについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
40代のよそいきにおすすめ!フォーマル着物
着物が活躍するシーンは、あらたまった場所だけではありません。
例えば、会社関係のパーティーや親族の集まりなど、結婚式や子どもの行事以外にも、フォーマルな場面で着用できます。
そんな「よそいき」におすすめなのが「付け下げ・色無地・飛び柄小紋・江戸小紋」です。
それぞれ詳しくご紹介します。
付け下げ
華やかでも控えめに、すっきりと装いたいシーンにおすすめなのが付け下げです。柄付けの特徴として無地場が多くあっさりしていながら、控えめながらも柄が入っているため、色無地と訪問着の良いところを併せ持っています。
主役を引き立てたい場に向いており、親族との顔合わせや挨拶まわり、同窓会や食事会にもぴったりです。結婚式の二次会やお披露目パーティーなど、礼装や準礼装までは求められないシーンにも活躍します。
着用シーンに応じて帯や小物を変えれば幅広いコーディネートができるのが嬉しいポイント。パーティーなどの華やかな席では礼装袋帯や洒落袋帯を、挨拶まわりや食事会などには、着物に合わせシンプルな帯を合わせるとよいでしょう。
ただ、結婚式や入学式、卒業式などで着用するような縁起の良い文様の付け下げに、金糸銀糸の入った袋帯を合わせると、フォーマルに寄りすぎてしまいます。例えば、パーティーにはモダンで華やかな帯を、親族の集まりには塩瀬や染め帯をなど、着物を着ていくシーンによって帯の格も合わせてコーディネートしてくださいね。
自由度の高いおしゃれを楽しみたい方はもちろん、広いシーンで着られるオールマイティな一着を持ちたい方におすすめの着物です。
色無地
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会社関係のパーティーや企業主催のレセプションなど、ドレッシーなスーツやジャケットで決めたい場には色無地がおすすめです。スーツのように万能に着こなせるため、カッチリとした雰囲気のあるシーンに向いています。
上品な印象を与えてくれる色無地は、一歩引いた立場で参加するシーンにぴったりです。
フォーマル寄りなシーンには重厚な袋帯を、カジュアル寄りなシーンには染めの名古屋帯や紬地の帯を合わせると、それぞれ雰囲気にあったコーディネートが楽しめます。着物が無地なため、帯との組み合わせが難しくないのも着物初心者にとっては嬉しいポイントです。
さらに40歳で買った色無地でも、40代後半から50代、60代と年を重ねても、帯や小物類を変えれば年相応のコーディネートができるため、長く着用できます。色選びが特に大切になりますので、顔映りがよく、あなたの心がときめくものを選んでくださいね。
飛び柄小紋・江戸小紋
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フォーマルな着物は肩がこるし、カジュアルすぎるのも気が引ける…そんな場合は、飛び柄の小紋や江戸小紋がおすすめです。
小紋はカジュアル着物に分類されますが、飛び柄小紋は無地の部分が多く、柄の入り方が訪問着か付け下げに近いような雰囲気があり、少し上品な普段着として活用できます。洋服でいえばワンピースか、スーツに近いちょっときれいめの服装のイメージです。
華やかな袋帯を合わせれば、子どもの入学式や卒業式などのセミフォーマルシーンにも着用できます。
江戸小紋は、遠目には無地に見えるほど極小さな柄を、一色のみの型染めで染めた着物です。特に格の高い三役に、大小霰(だいしょうあられ)・縞を加えた5つまでを江戸小紋五役と呼び、それ以外の柄はカジュアルなものとして位置づけられます。
さらに、柄が細かくなるほど格が高くなるので、着物を着ていくシーンに合わせて柄の種類や細かさを選びましょう。
はっきりとしたドレスコードが決まっていない、レストランやホテルでの食事会にも活躍してくれる着物です。
40代の着物初心者さんの普段着におすすめ!カジュアル着物
着物を着る機会と言われると式典などのきっちりとしたシーンをイメージする方も多いかもしれません。しかし、近年では気軽に街着として着物を着たい方も増えています。
お友達との食事やショッピングなどの街着や普段着に向く着物として、年齢にかかわらず「小紋・紬・御召・木綿・ウール」などがおすすめです。
「着物姿で気軽にお出かけしたい!」という初心者さん向けに、それぞれの特徴を着物ごとにご紹介します。
小紋
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小紋は、カジュアルな着物として販売されている染の着物です。絹だけでなく化繊やウールなどの着物も、柄があると小紋に分類されます。
定義の幅がとても広い小紋は、セミフォーマルで使える「飛び柄」もあれば、完全にカジュアル向きとなる更紗など、柄から格式まで選択肢が豊富なのが特徴です。どこまで使えるのか悩んだら、まずはカジュアル着物として考えましょう。
特に正絹の小紋は、着心地がしっとりとしていて肌に馴染むことから、「たれもの」の着物とも呼ばれています。
ただ、たれものの着物は着付けが少し難しいのが特徴です。肌に馴染む質感も、着付けになると紐や帯がするりと滑ってしまう原因になり、着慣れていないと固定が難しいと言われています。
そのため、着付け初心者さんであればひとまず着心地よりも、着付けがしやすいパリッとした化繊の小紋を選んでも良いでしょう。
紬・御召
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紬は、セミフォーマルなシーンにも着用できる小紋とは違い、完全にカジュアルな着物に分類される着物です。友人とのお出かけやパーティー、お稽古など、プライベートでの着用がメインになります。
織りの着物の代表格と言われ、普段着からおしゃれ着まで着回しやすく、日常生活で使う着物としてはもっともおすすめの着物です。あらかじめ染めておいた「先染め」の糸を使い、織りで美しい紋様を表現しています。
御召も、先染めの糸で柄を織り出す「織りの着物」です。撚りが強くかかった糸で織り上げるため、独特の張りや光沢、シャリ感があります。都会的でキリっとした着姿に仕上がるのも魅力のひとつです。
近年は紬や御召にも華やかな色合いが増え、パリッとした風合いが楽しめます。張りがある生地で着付けがしやすいのも、着物初心者さんには嬉しいポイント。着心地も良く、素朴な風合いの中に見える粋な雰囲気がおしゃれな着物なので、ワンランク上のカジュアル着物から始めたい方におすすめです。
▼紬の特徴や着用シーンについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
木綿
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生絹の小紋や紬より予算を抑えたい方におすすめなのが木綿の着物です。着やすさと素朴さを兼ね備えており、手触りもよく自宅で洗濯もできるので、初めて自分サイズに誂えるのにも向いています。
以前は木綿といえば縞や格子などの決まったデザインが多く、渋い色合いの着物が主流でしたが、近年は明るい色やポップなデザインなども増え、よりおしゃれの幅が広がりました。産地によって風合いが全く異なるので、自分好みの一枚を探すのも木綿の着物の醍醐味です。
近年目にすることの多くなったデニム着物も木綿に分類されます。落ち着いたインディゴカラーの着物は、40代女性の放つ美しさをさらに引き立ててくれるので、縫製にこだわった一枚は、カジュアル着物にもこだわりたい方にもおすすめです。
ウール
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昭和の時代に大流行したこともあり、実家の箪笥に眠っていることが多いのがウールの着物です。特に、着物と羽織のアンサンブルとして、おばあさんやお母さんがお持ちだった方も多いのではないでしょうか。
ウールの着物は、現代でも基本的に木綿と同じようにカジュアル着物として着用可能です。しかし、大胆なデザインや色使いのものが多く、そのままでは少し時代遅れに感じてしまう可能性があります。その場合は、コーディネートの中にひとつ現代のアイテムを取り入れましょう。丈の長い羽織や今風の帯を選べば印象ががらりと変わり、現代的なコーディネートになりますよ。
古着の中にもレトロな色柄のウール着物もありますし、原色に近い色に抵抗のある場合は今風のウール着物もあります。たくさんの種類の中から、自分好みの着物を選んでくださいね。
▼ウールの着物について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。
まとめ
「着物にはルールがあって難しそう…」そんなふうに感じていた方も、ここまで読んで「自分に似合う一枚が選べるかもしれない」と思っていただけたのではないでしょうか。確かにTPOやマナーは大切ですが、それ以上に大切なのは、着物を「着てみたい」「楽しみたい」という気持ちです。
特に若い頃とはまた違った魅力が増す40代には、年齢を重ねた今だからこそ似合う着物があります。落ち着いた色や洗練された柄がしっくりくる今、大人の女性としての装いを思い切り楽しめるタイミングなのです。
「この色、今の自分に似合うかな」「この柄、着てみたいな」そんな小さなワクワクを、着物は運んできてくれます。結婚式やお子さまの行事、ちょっと特別なお出かけの機会に着物を選ぶだけで気持ちが引き締まり、周囲の目にも自信と品格が映るはずです。
ぜひ肩の力を抜いて一歩を踏み出してみてください。着物を纏ったあなたの日常に、少しだけ特別な時間を添えてくれますよ。