着物の正しい保管方法とは、何でしょうか?
着物は洋服よりも繊細なつくりのものが多く、保管の際に気をつけることがたくさんあります。
着用した後のお手入れから始まり、どこで保管すればいいか、収納の際に何を利用すればいいかなど、数え上げれば疑問が無数に湧いてきます。
今回は、着物を着た後、収納する前後にどのようなことをすべきか、また、保管の際の注意点や使うと便利なアイテムについてもご紹介します。
着物ビギナーの方だけでなく、家族が持っている着物の保管にお悩みの方、自分の保管方法に不安がある方まで、参考にしていただけるポイントを一つ一つ解説していきます。
この記事の目次
着物の保管方法は?
着物は、絹やウールなど、たんぱく質を原料とする素材でできているものが多いため、保管の際は気を配るポイントが多数あります。
湿気や日差し、虫などに注意する他、着物にシワやたるみができないよう、適切な場所に収納することが重要です。
また、着用した後や保管する前に、きちんとお手入れを心掛ける必要があります。
正しい保管方法と知識を身に着けて、手持ちの着物をできるだけ長く、大切に着られるようにしましょう。
昔の管理方法
昔の日本では、着物は普段着として着用されていたため、今とは保管方法も異なりました。
季節が変わるごとに、袷で仕立てた着物を解き、単衣に仕立て直してすぐ着用することもあり、たくさんの着物を保管しておくということもありませんでした。
また、汚れやほつれ、サイズの変化などがあれば何度でも仕立て直し、着続けることができました。
最終的に、着用が難しくなった着物は解いて他のものを作ったり、雑巾として使用するなど、無駄なく布地を活用していたようです。
礼装の着物の管理についてはまた異なりますが、着物の保管方法ひとつとっても、現代とはかなり感覚が違っていたということがわかります。
現代の着用頻度にあった保管を
現代では、昔と比べて着物の着用頻度が減っていたり、気温や湿度といった地球環境そのものも変わってきています。
また、着物の素材自体も、昔と全く同じということはありません。
絹の性質も変化する上、化繊などの新しい素材で作られた着物が増えてきています。
時代に合わせて、着用頻度や環境を考慮した保管方法を選ぶことが大切です。
着物別おすすめ保管方法
基本的に、着物の保管方法は素材によって分けられます。
絹製の着物の中で、訪問着、振袖、紬…と、着物の種類によって保管の仕方が変わることはありません。
ただ、着物の着用シーンによって収納方法はそれぞれです。
振袖や訪問着などの礼服を一式まとめて保管する場合、手持ちの着物が少なく箪笥などが家にない場合なども当然有り得ます。
ここでは、着物の種類別におすすめの保管方法をご紹介していきます。
小物や帯、草履などのアイテムのまとめ方もそれぞれ解説いたしますので、ぜひご自宅に合った保管方法をお試しください。
※着物の素材に関しては、別記事をご参照ください。
出番の少ないフォーマル着物[振袖・留袖・喪服など]
比較的出番の少ない礼装用の着物は、帯や草履、帯揚げや帯締めなど、併せて使う小物類がたくさんあります。
いざ着るとなったタイミングで焦らないよう、小物類も含めてひとまとめに収納しておきたい場合は、「きものキーパー」がおすすめです。
「きものキーパー」は、そのまま着物を包んでどこにでも置ける、万能な保存袋。
チャック付きで密閉できるので、防虫・防水効果にも優れており、桐箪笥等に入れなくても安心して置いておくことが可能です。
着物や襦袢など、複数枚をまとめて入れることもできるので、一式セットの収納にぴったりです。
ただし、しばらく着用することなく放置していると、特に劣化が現れやすいのが「草履」です。
サンダルや靴と同じく、底が剥離してしまったり、突然鼻緒が切れてしまうこともあります。
着用当日までに、草履を履いてしばらく外を歩いてみることで、劣化していないかチェックしておくと安心です。
保管の際は、湿気対策や型崩れ防止のため、草履キーパーや鼻緒キーパーを入れておくのもおすすめです。
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子供の着物[お宮参り・七五三]
子供の成長は、節目節目にきちんとお祝いしたいもの。
親や祖父母の代から受け継いだ子供用の着物を持っている人もいることでしょう。
しかしながら、子供の礼服は、大人のフォーマル着物よりも輪をかけて着るタイミングが限られています。
着用した後はきちんとクリーニングに出して保管し、着用する前に傷み等がないか確認するようにしましょう。
こちらも、きものキーパーに一式を入れておくと安心です。
カジュアル着物のオフシーズン
カジュアルな着物は基本的に、シーズンが終わったタイミングでクリーニングに出し、その後、たとう紙に入れて箪笥などに仕舞っておけば特に問題はありません。
着物の収納に最適なのは「桐箪笥」だと言われていますが、ない場合は洋服用の衣装ケースやスチールラックなど、代用品でも大丈夫です。
※詳細は「着物 収納」(リンク)をご覧ください。
カジュアル着物のシーズン中
着用した後は、必ず1日~2日陰干しをして湿気を飛ばしましょう。
シーズン中であれば、陰干し後にそのまま畳んでたとう紙に入れ、箪笥などに仕舞います。
高い頻度で着用する場合、日光や室内灯が当たらない場所、湿気の少ない場所に保管できるようであれば、わざわざ箪笥へ収納する必要もありません。
※詳細は「着物 収納」(リンク)をご覧ください。
着物を保管するスペース・収納
着物は、絹やウールなど、たんぱく質を原料とする素材でできているものが多いため、保管場所には気を配るポイントが多数あります。
湿気や日差し、虫などに注意する他、生地にシワやたるみができないよう、丁寧に保管することが大切です。
自宅で保管する場合とそうでない場合に分けて、着物の保管場所についてのメリットとデメリットをご紹介します。
自分自身の環境に合った適切な保管場所を選んで、手持ちの着物をできるだけ長く、大切に着られるよう心がけましょう。
自宅で管理する際の注意点
着物の収納は、基本的に「桐箪笥」が最適であると言われています。
収納スペースが広く平らなため、たたんだ着物を重ねて入れやすく、湿気対策と防虫効果に優れているからです。
桐は湿度の影響を受けにくく、乾燥してひび割れや隙間ができたり、逆に水分を含んでしまったりということがほとんどありません。また、桐に含まれる「タンニン」という成分には、カビや虫を防ぐ効果があります。
桐箪笥として販売されている商品の中でも、外国産や合板のもの、大量生産品の箪笥などは桐材特有の機能性が期待できないこともあるため、購入の際は注意が必要です。
また、箪笥よりも省スペースな桐製のケース、「きものキーパー」などの収納袋もおすすめです。
きもの専用のケースはたとう紙に入れたまま保管でき、防湿・防臭効果が施されているものがほとんどです。
その他、除湿剤や防虫剤を使用しながら、洋服用の衣類ケースやラックに収納するという方法もあります。
※詳細は「着物 収納」(リンク)をご覧ください。
スペースがない場合は着物預かり・保管サービスも
着物を保管するスペースがない場合や、そもそも自宅で保管することが難しい場合には、保管サービスを活用するという手があります。
呉服店や着物洗い専門店が主に行っているサービスで、シーズンが終わった際や着用した後に預けておけば、着物をクリーニングした上で、次の着用まで保管しておいてくれます。
他の倉庫保管サービスと異なり、紫外線や湿度、虫対策にも気を配った着物に最適な場所で保管されるため、自宅での正しい保管方法がわからない場合や、自分では着ない形見の着物を大切にとっておきたい…という場合にもおすすめです。
月単位や年単位で、一点当たり数百円~数千円と価格帯はさまざま。クリーニングの内容や保管期間によって値段が大きく異なるので、選ぶ際はしっかりと確認しましょう。
サービスによって事故があった際の補償内容も変わってくるため、大切な着物を預ける場合は注意が必要です。
着物を保管する前の確認点
着物を長く着続けるために、保管の際に心がけておくべきことがあります。
シワや型崩れを防ぐことと、湿気や虫を防ぐことです。
着物は「本だたみ」という方法で、シワができないよう丁寧にたたみ、ゆとりのある収納スペースに仕舞うことが大切です。
ぎゅうぎゅうに詰めて保管してしまうと、シワが寄りやすいだけでなく、刺繍や箔などの装飾が崩れてしまう恐れもあります。
帯や草履も同様に、型崩れしないよう配慮が必要です。
ウール素材は虫がつきやすいため、絹ものとは場所を分けて保管し、防虫剤や桐素材の収納を活用することをおすすめします。
防虫剤や乾燥剤を複数種類併用すると、化学反応によるシミなどの原因となるため、気をつけましょう。
また、絹素材は単体で虫がつくことは少ないですが、湿気に弱く、カビや変色の恐れがあります。
保管前だけでなく、保管後も定期的な手入れを行うことで、大切な着物を天敵から守りましょう。
※着物のお手入れに関しては、別記事をご参照ください。
着用後の虫干し・シミチェック
着物を脱いだ後は、湿気を飛ばすために陰干しを行います。
着物専用のハンガーにかけて、室内の日光が射さない場所で一晩~2日ほど干し、体温と水分を飛ばします。
洋服用のハンガーなどにかけると、余計な型がついたり生地が伸びてしまうこともあるので、必ず着物用ハンガーにかけることが大切です。
時間がない場合は、同じく日光が射さない室内で、風通しの良い場所に数時間だけでも干しておくようにしましょう。
着物だけでなく、帯や襦袢も同様に虫干しをします。
小物類は、同様に干したり、手洗いできる素材のものは早めに洗ってしまいましょう。
干した後はタオルなどで優しくホコリを落とし、シミや汚れがないかをチェックします。
絹物など、自宅で洗濯できない着物に汚れを発見した場合は、早急にお手入れに出しましょう。
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衣替えの時期にはクリーニングを
着物は、単衣仕立てと袷仕立て、または夏用着物や浴衣など、仕立てによって着用時期が異なります。
着物を着た後、シーズン中に着用予定がない場合は、保管する前にクリーニングへ出しましょう。
箪笥に保管した後は定期的な虫干しを
クリーニングも終え、綺麗に形を整えて箪笥に仕舞えば安心!というわけにはいきません。
そのまま何年も放置したりすると、劣化に気がつかないままになってしまう可能性があります。
定期的に箪笥を開いたり、着物を虫干しして風を通すことが重要です。
古くから、虫干しのタイミングは年に三回と言われています。
①梅雨の湿気を飛ばすため、7月下旬~8月上旬に行う「土用干し」
➁夏についた虫を払うため、9月下旬~10月上旬に行う「虫干し」
③冬の間の湿り気を抜くため、1月下旬~2月上旬に行う「寒干し」
上記のタイミングにこだわらなくても良いので、空気の乾燥した晴れの日に、手持ちの着物を陰干ししてあげましょう。
また、たとう紙に変色がないか、乾燥剤などの期限が切れていないかなどもチェックが必要です。
まとめ
「着物を着るのは好きだけど、脱いだ後のあれこれが面倒…」という方も多いことでしょう。
自分のライフスタイルにあった保管方法を見つけることで、より気軽に着物が着用できるようになります。
この記事が、素敵な着物ライフを送る一助となれば幸いです。