和装小物

2022.10.10

半襦袢とは?カジュアル着物に最適な種類と活用法、合わせる肌着など解説

半襦袢とは?カジュアル着物に最適な種類と活用法、合わせる肌着など解説

着物を着用するときに必ず必要になる襦袢
襦袢にはどのような役割があるのでしょうか?
また、色や素材も様々な種類があります
季節に合わせた素材選びや着物を快適に着こなすための疑問について解説します。

半襦袢とは?長襦袢とは違う?

襦袢と呼ばれるものには、「長襦袢」と「肌襦袢」、「半襦袢」の三種類があります。
どれも着物が直接肌に触れるのを防ぎ、汗などの汚れから保護する役割をはたします。
洋服を着用するときの下着やインナーをイメージしていただくと分かりやすいと思います。
また、襦袢には裾捌きをよくしたり、体温調整といった役割もあります。

長襦袢とは

長襦袢は、①肌襦袢>②長襦袢>③着物の順で着用します。
一般的に長襦袢は、着物のようにおはしょりはとらず、対丈で着用するため身長に合ったサイズを選ぶ必要があります。
サイズの目安としては、着用したときに裾がくるぶしのあたり、身長の8割の長さ、または、身長マイナス32CMが目安となります。
既製品の長襦袢などで、身丈が長過ぎる場合には、おはしょりをとっても問題はありませんが、
身丈が短い場合、絽や紗など夏着物の場合、透けてしまいますので注意が必要ですのでおすすめはできませんが、透け感のない着物であれば、裾が乱れるようなことがない限りは、気にしなくても大丈夫かと思います。

半襦袢とは

半襦袢は、一枚で長襦袢と肌襦袢を兼ねた役割をはたします。
そのため、肌襦袢を省略することができ、その場合は、①半襦袢>②着物の順で着用します。
また、半襦袢は、長襦袢よりも着丈が短いため、裾除けと合わせて着用します。
上下が分かれているので簡単に着丈の調整することができます。
見た目には、長襦袢を着用しているように見えるので「うそつき襦袢」とも呼ばれることもあります。

肌襦袢とは

肌襦袢とは、和装の下着のことです。
肌ざわりがよく吸汗性に優れた綿素材でつくられたものが一般的です。
肌着と裾除けが上下一体となったワンピースタイプのものと、肌着と裾除けをそれぞれ着用するタイプのものがあります。

裾除けとは

裾除けとは、腰から足首までを覆う、和装の下着の一つです。
着物の裾が傷むことを防ぐためにつくられたもので、蹴出しと呼ばれることもあります。腰巻きタイプやペチコート、スカートタイプがあり、素材も綿素材や化繊としては、静電気が起きにくいとされるキュプラを素材にしたもの、安価なポリエステルを素材にしたもの、裾捌きのよさや静電気の起きにくさ、着心地や肌ざわりの良さが特徴の絹を素材にしたものなど、素材の特徴を活かすことで、季節に合わせて快適に過ごすことができます。

半襦袢の歴史について解説

戦国時代に外国から入ってきた『ジバゥン』

16世紀、ヨーロッパから貿易商人と共に多くの宣教師が日本を訪れ、さまざまな文物を伝えました。
この時期に伝わったものの中には、その名称がそのまま、日本語として定着した外来語由来の言葉が多く存在します。
ポルトガル語で肌着を意味する「gibão(ジバゥン)」もその1つで、着物の下に着用する下着=「襦袢」として定着しました。

江戸前期に登場した『半襦袢』

現代のように、衣服の下に肌着を身に付ける習慣は、江戸時代に始まったといわれています。
もともと上層階級の下着として用いられていた小袖が、表着として庶民にも定着したのがこの時代です。
生活様式の変化と共に、江戸時代中期には、小袖にも大きな変化が見られるようになります。もとは袖幅が狭く身幅が広かったものが、袖幅が広く、身幅は狭い小袖へと変化していき、今日まで受け継がれ現代の着物の原型となったといわれています。
小袖の変化に伴い襦袢も幅の広い広袖へと変化していったと考えられます。
江戸時代前期には長襦袢よりも半襦袢が正式な襦袢と考えられていましたが、
元禄以降、経済力をつけた町人を中心に、絞りや刺繍など、着物にも匹敵する贅沢な生地を用いた華やかな長襦袢が流行するようになります。
しかし、公家や武家で着用されることはなかったようです。

現代の半襦袢の位置付け

江戸時代後期には、礼装・晴着の装いには長襦袢を用い、普段着には半襦袢を用いるようになります。
この時代の慣習が今日まで受け継がれています。

半襦袢の種類

筒袖の半襦袢

袖が筒状で袂(たもと)の無い形状の半襦袢
メリットは、裄や袖丈を気にせず着物が着用出来ることです。
また、一般的に綿素材でつくられたものが多く自宅で洗濯が出来るので正絹の長襦袢に比べてお手入れが簡単です。
化繊の半衿であれば、衿を付けたまま洗えるので、半襦袢は比較的、安価なので数着、数を揃えることで半衿を縫い付ける頻度を減らすことができ、気軽に半衿のコーディネートを楽しむことができます。

袖付き半襦袢

替え袖(うそつき袖)とも呼ばれる、袖口と振りに生地を縫い付け襦袢を着用しているようにみせる形状の半襦袢
もともと、袖が縫い付けてある半襦袢の他に、マジックテープなどで袖が簡単に脱着出来るタイプもあります。
マジックテープのタイプは、貼る位置で袖幅を調節できるメリットがあります。
また、袖口や振りから覗く替え袖(うそつき袖)には、柄や色など既製品も含め豊富にあり、自分でも比較的、簡単に作ることができますので、コーディネートの幅も広がります。

二部式襦袢

その名の通り上下で二部に分かれた襦袢
半衿付きの半襦袢と裾除けがセットになった襦袢です。
上下が分かれているので簡単に着丈の調整ができるのがメリットです。

Tシャツ半襦袢

Tシャツに半衿が付いた襦袢です。
Tシャツのように着るだけで、衿元に
半衿が覗くので、
和装の装いをより簡単にしてくれるアイテムです。
もともとは男性の襦袢として販売されていたものですが、最近では女性のものも多く見られるようになってきました。
くりこしサイズが選べる商品もあり、着用するだけで衣紋が抜ける工夫がされています。

男性の半襦袢

男性の襦袢と女性の襦袢の形状の大きな違いは、身八つ口の有無です。
男性の襦袢には身八つ口はありません。
また、男性の着付けでは衣紋を抜くことはないので繰り越しもありません。

季節に合わせて選ぶ半襦袢

半襦袢の季節感は『袖』と『衿』

着物は季節によって着分けるルールがありますが、襦袢についてはどうなのでしょうか?
基本的に半襦袢は筒袖が一般的です。
半衿を夏用のものにすれば夏の襦袢として、それ以外の季節は、塩瀬などの半衿を
袖付きの半襦袢や二部式襦袢であれば、袖の素材によって季節が分かれます。
筒袖であればそのまま着用できますが、夏に袖を付ける場合は夏は絽のものを選びます。
裾除けを着用する場合も、素材の考え方は同じです。

素材で選ぶ半襦袢

基本的には、半襦袢は身頃が綿素材であることが多い為、
半衿と袖さえ変えれば通年着用可能です。
素材によって着心地は変わってくるので、より快適に過ごしたい方は素材にもこだわって選ぶといいでしょう。

袷の時期 半無双・無双
単衣の時期 単衣・駒絽
夏着物 駒絽・麻

正絹

半襦袢でも正絹にこだわりたい方は、季節に合わせて、正絹のうそつき袖を選んでみるのもいいでしょう。

ポリエステル「化学繊維(化繊)」

比較的安価な価格の半襦袢では、衿や袖、裾除けが化繊の場合が多く見られます。
ポリエステルは、シワになりにくく型くずれしにくいのがメリットです。
デメリットとしては、静電気が起きやすいということです。
空気が乾燥しやすい冬の季節は、洗濯の際に柔軟剤を使用することで、柔軟剤の成分が繊維をコーティングするので、摩擦を軽減する効果があり静電気の発生を防止対策になります。
最近では、吸汗速乾性を高めた素材のものや吸湿性発熱素材のものなど高機能なポリエステル素材を使用した襦袢もあります。
素材の特徴を活かすことで快適に過ごすことができます。

日本では昔から盛夏には麻が用いられてきました。通気性のよさと吸汗速乾性に優れた麻の素材の襦袢を選ぶことで、より夏を快適に過ごすことができます。

半襦袢の洗い方と保管方法

基本は洗濯機で大丈夫

袖や衿を正絹にしている場合、正絹は、どうしても縮む可能性がありますので、着物洗い専門店(京洗い)や呉服店に持ち込むことをおすすめします。
綿や化繊、麻などの洗える素材であれば、肌着と同じ感覚で洗濯ネットに入れて洗濯機で洗うことができます。

衿などの皮脂汚れが気になる場合

洗濯機に入れる前に、中性洗剤で優しく揉み洗いをすることで軽い皮脂汚れであれば落とせる可能性があります。
皮脂汚れは、時間が経つと頑固な汚れになってしまいます。
汚れが見えないからといって、放置せず早めに洗うことを心掛けましょう。

半襦袢のたたみ方と保管方法

襦袢をたたむ時に、特に気をつける点は、着物を着用した時にのぞく袖口と衿が、
しわにならないように注意することです。
たたむときには、衿芯ははずしておきましょう。
女性用・男性用に関係なく襦袢をたたむ方法に「襦袢たたみ」があります。
正しいたたみ方は、しわになるのを防いでくれるので覚えておくといいでしょう。

半襦袢の格式と合わせる肌着

半襦袢は、肌にそのまま着用しても大丈夫ですが、直接、肌に触れるのが気になる方や少し肌寒い時などは、肌襦袢などを中に着用して体温調整することも出来ます。
襦袢の役割は、着物が直接肌に触れるのを防ぎ、汗などの汚れから保護することですので、その役割をはたせば組み合わせは、快適さ重視で比較的、自由でもいいかと思います。

肌襦袢を着る場合

肌着として半襦袢を選んだ場合
上は肌襦袢+半襦袢
下は裾除け、又はステテコで大丈夫です。

肌着としてスリップを着る場合

スリップやワンピースなどのいわゆる上下一体型のタイプの肌着を選んだ場合
肌着と裾よけが一体になっているので、これ一枚で大丈夫です。

肌襦袢を省いて半襦袢を着る場合

半襦袢が洗える素材であれば、それほど汗をかかないのなら肌襦袢を省略することもできます。
和装ブラの上に半襦袢を着る場合は、裾除け、またはステテコで大丈夫です。

半襦袢はあくまでもカジュアル向けの簡易的な襦袢である

半襦袢はあくまでもカジュアル向けの襦袢で、着物を普段着として気軽に着るために活用されているものです。
そのためルール的なものがあるわけでないのですが、一般的に着易さを求めると上記の組み合わせがおすすめです。
裾除け代わりにステテコの着用もできますが、裾が乱れたときに足元が見えてしまうことが気になる方は、裾除けのほうが安心です。

半襦袢・二部式襦袢をフォーマルに用いたい場合の注意点

前述したことから、半襦袢がカジュアル向けのものであることは、ご理解いただけたかと思います。
それでも予算的に、寸法的に、様々な理由からフォーマルに半襦袢を用いたい方もいるかと思います。

その場合押さえておくのは
・必ず二部式襦袢の形態にすること(袖と裾除けがあるもの)
・礼装に相応しい色柄を選ぶこと、
基本は白、カジュアルな柄はNGです。

・着物との寸法をきちんと合わせること
筒袖ではなく、袖付きのものを選びます。

・季節感をきちんと合わせる
半衿、袖は季節に合ったものを選びます。

上記がきちんと合っていれば、見た目には簡易的なものには見えませんが、二部式の場合、上下の境目や袖がマジックテープで脱着できるタイプのものは袖の境目が目立ってしまうことがあるので注意が必要です。

まとめ

着物を着用するシーンは屋外とは限りません。屋内など空調の効いた場所では体感温度に個人差があるため、年中麻や夏物の襦袢を着ている方もいます。
素材にこだわり快適に過ごせる工夫や袖口がちらりとのぞかせる、さり気なくおしゃれにこだわるのも楽しいものです。
すべての季節に合わせた長襦袢を用意するのは大変です。
気軽に着物を楽しむために、半襦袢を活用してみてはいかがでしょうか。