和装小物

2022.10.4

着物に合ったバッグの種類とおすすめを紹介!振袖や結婚式など礼装用、男性用の着物バッグも

着物に合ったバッグの種類とおすすめを紹介!振袖や結婚式など礼装用、男性用の着物バッグも

着物用のバッグとは?

昔は「筥迫(はこせこ)」がバッグの代わりだった

江戸時代まで、日本人は現代でいう「バッグ(鞄)」の類を持っていませんでした。
バッグが登場したのは、洋装が流行しはじめた明治時代以降。ドレスに合わせて、おしゃれで使い勝手の良いハンドバッグが普及しました。

では、それまでは外出の際、どうやって小物を持ち歩いていたのでしょうか。

例えば、手鏡や櫛、懐紙などの化粧品関係の小物は「筥迫(はこせこ)」という小物入れに収め、着物の胸元(懐)に。
筥迫を使わない場合には、そのまま懐に入れるか、帯の間に挟んでいました。
財布も帯の間にはさみ、手ぬぐいなどの嵩張るものは袖の袂へ仕舞います。
洋服でいうポケットのような感覚で、着物のあちこちに小物を入れることで事足りていたため、基本は手ぶらで外出していました。
それ以上の荷物がある場合は、巾着袋に入れるか、もしくは風呂敷に包んで持ち歩いていました。

現代でも筥迫の文化は一部残っており、七五三や婚礼の衣裳、成人式の振袖に合わせて襟元に挟むことがあります。

現代は「着物に合うバッグ」を使い分ける

江戸時代の女性に比べて、現代では衣服に小物を仕舞える場所が少なくなったため、バッグを持つのが当たり前になりました。
普段の持ち物も増えたため、着物姿の場合もバッグは必需品です。
また、フォーマルやカジュアルなど、着物の格式によって、バッグや小物を使い分ける必要があります。

今回は、それぞれの着物や着用シーンに合わせたバッグの選び方や、その特徴についてご紹介します。

フォーマルシーンにおすすめの着物バッグ

礼装の場面で使われることが多いのは、刺繍やビーズなどの装飾がついた高級感のあるバッグ。ぱっと華やかなものから、煌めきを抑えた上品なものまで、TPOに合ったバッグを選びましょう。
パーティーや式典など、大きなバッグを持ち歩くことが難しい場面もあるため、荷物の多い方はサブバッグを併用することをおすすめします。

錦・帯地のバッグ

ハリのあるしっかりとした生地に、キラキラとした箔糸や刺繍のこまやかな装飾があしらわれ、高級感と品の良さが両立するバッグです。
袋帯などに使われる錦地・帯地を使用しているため、帯とデザインを揃えたり、似た色合いのものを選んだりすればコーディネートもばっちり。
地色は白、ゴールド、シルバーなどが多く、決して派手になりすぎない華やかさと煌めきが何よりの魅力です。

ビーズのバッグ

豪奢さや個性を際立たせたい場合は、ビーズバッグがおすすめ。
大粒・小粒のパールや金銀のビーズ、クリアビーズなど、美しいビーズ刺繍で飾られたバッグは、ぱっと目を惹くような華やかさがあります。
和装に合いやすいがま口型のバッグの他、洋装用のハンドバッグやクラッチバッグなどもパーティーシーンにはぴったりです。
帯留めや髪飾り、ネイルやピアスなど、アクセサリー類と雰囲気を合わせても素敵ですね。

利休バッグ

利休バッグは、着物と合わせるバッグの中では定番型の一つ。ボストン型で、底のマチが広いことが特徴です。
和装と相性が良いこと、収納力が高いことから昭和以降に普及したもので、生地を選べばフォーマルシーンにも活用できます。
金銀の箔糸が織りなされた生地の利休バッグは、礼装との相性も抜群。また、西陣織の上質な帯地を使用したバッグは、セミフォーマルやパーティーシーンの他、ちょっとしたおでかけなどにも使えます。

喪服用バッグ

ブラックフォーマルは出番が少ないため、気付かないうちに劣化してしまいがち。特に草履は経年劣化の可能性が高いため、注意が必要です。
きものエッセイストのきくちいま氏が、以前、草履メーカーとのコラボ企画で「黒い草履をおしゃれに履く」という提案をされていました。
喪服用のアイテムを、シンプルなブラックの小物として普段遣いに転用するか、あるいはバッグのみ先に用意しておき、草履は後から購入するなどの工夫がおすすめです。

サブバッグ

和装用のバッグはサイズが小さく、容量も少ないものが多いため、荷物がたくさん必要なおでかけの際はサブバッグが欠かせません。
サブバッグであっても、着物との相性は気になるもの。帯地を使用したバッグや、シンプルな色・形のものを選ぶことをおすすめします。A4サイズ対応のものや、ペットボトルが入るサイズであればなお安心ですね。
ブラックフォーマルの場面で使用する場合は、黒一色のものを選びましょう。

草履バッグセット

和装小物の中でも、特に目立つためコーディネートのポイントとなる草履とバッグ。
特に礼装用のものはセットで販売されていることも多く、コーディネートに自信のない方や、統一感のあるデザインがお好きな方におすすめです。
草履の台とバッグの色、または鼻緒とバッグの生地が共通していると、コーディネートが決まりやすく、また上品に仕上がります。

礼装用の草履は底が高いものが正式であるため、クッション性なども確認し、歩いていて痛くならないものを選ぶようにしましょう。

振袖におすすめの着物用バッグ

基本的に、未婚女性の最上級の礼装とされている振袖。成人式や卒業式、婚礼の席など、お祝いのセレモニーやパーティーシーンで着用する機会が訪れます。
バッグも振袖の雰囲気に合わせて、煌びやかなものやすっきりと上品なもの、若々しい可愛らしさのあるものなどを選びましょう。

筥迫

筥迫(はこせこ)とは、振袖や打掛を着用する際、襟元に挟み込ませる小物入れのこと。小さな箱型で、刺繡や房飾りなどがついています。
元は懐紙や鏡、櫛などを入れるコスメポーチのような存在でしたが、現代では実用品として使われることはほぼなく、装飾品として扱われます。
必ずしも必要というわけではないですが、最上級のフォーマルシーンでしか登場しないものなので、お好みで振袖に合わせても素敵です。

エナメルバッグ

華やかな振袖には、光沢感や艶のある素材が似合います。
高級感のあるエナメルのバッグは、あらゆる色柄の振袖にマッチして品の良さを演出してくれます。振袖の場合、ショルダータイプのものは肩の部分が擦れたり、ずり落ちたりする可能性があるので、手に持てるハンドバッグやクラッチバッグタイプがおすすめです。
デザインに「和」の要素が少ないため、洋装用にも使えるところが魅力ですね。

がま口バッグ

着物と相性がいいバッグといえば、よくイメージされるのががま口のバッグ。
ころんとした可愛らしい形、ぱかっと開閉できる開けやすさと、間口が広く荷物も入れやすいところがおすすめポイントです。
振袖と合わせる際は、帯や帯締め、伊達襟など、小物と色を揃えるとコーディネートに統一感が出ます。
かっちりとした帯地のバッグや、刺繡入り、あるいはほっこりとしたちりめん地のバッグも振袖によく合います。

草履バッグセット

振袖に合わせる小物に迷ったら、草履とバッグをセットで選びましょう。
振袖用に販売されているセットは、上品なだけでなく、帯地の模様にこだわった、可愛らしく華やかなものが多いです。

振袖の草履は礼装用であるため、正式なものはそこが高くなっています。必ず事前に履き心地を確認しましょう。

袴におすすめの着物用バッグ

卒業式などのセレモニーで定番衣装となりつつある袴。
お店でレンタルした場合は、バッグや履き物がセットでついてくることもあります。
ここでは、振袖用よりも手軽でお求めやすいバッグをご紹介!
基本的には振袖と同じバッグ・草履で問題ありませんが、ブーツを履く場合はそれに合わせたバッグを選びましょう。
洋風のバッグであればモダンに、和の要素が強いバッグは大正浪漫風な雰囲気を演出できます。

巾着

袴に合わせてレトロな雰囲気を押し出したい方には、巾着型のバッグがおすすめ。
まるい形も可愛らしく、軽さとコンパクトさが魅力。重いものや多すぎる荷物を持ち運ぶのには不向きなので、持ち物も減らしてミニマルに出掛けましょう。
ちりめん地を使用した巾着は、着物や袴の色とニュアンスを合わせても素敵です。

エナメルバッグ

大人ムードを重視する方には、エナメル製のバッグがぴったり。
白黒やシルバーなど、シンプルながら光沢のあるエナメルは装いをぐっと格上げしてくれます。
着物や袴も落ち着いた色合いで揃えて、アクセサリーや小物で艶感を足せば、エレガントな袴姿をコーディネートできます。バッグに合わせてエナメルの草履を履くのもおすすめです。
なお、エナメルは傷が目立ちやすいので、取り扱いには十分ご注意ください。

がま口バッグ

和のコーディネートに間違いなく合わせやすいのが、がま口のバッグ。
袴姿の時は、大ぶりな飾りのついたものやカラフルなものを選ぶと、華やかさが着物とマッチします。
バッグによって、持ち手も金属製や布地、竹、チェーンなどさまざま。
素材によって雰囲気も大きく変わってくるので、袴や着物のタイプを見ながら、ぜひお好みのバッグを探してみてください。

カジュアル着物におすすめのハンドバッグ

カジュアルな場面であれば、バッグの種類は基本的には問われません。
ウールの着物にリュックやボディバッグを合わせたり、洋装の時に使うバッグを兼用するのもOK。
ただ、できれば「着物らしさ」は活かしたい…という場合には、和の雰囲気を纏ったバッグを合わせるのが一番です。
カジュアルな着物でも、間に合わせではないお気に入りのバッグを持っておくと、お出掛けの気分が上がりますよ。

利休バッグ

茶道などの習い事や街着でのおでかけなど、幅広いシーンで使いやすいのが利休バッグ。
しっかりとマチがあるので容量も大きく、たっぷり収納できるのが特徴です。カッチリとした四角いフォルムのため、カジュアルな中にもきちんと感を出したい方におすすめ。
普段着に合わせる場合は、キラキラとした刺繍などが入っていない、マットな質感のバッグがベターです。抑えた色柄のシックな利休バッグが一つあれば、あらゆる着物に合わせやすいですね。

籠(かご)バッグ

素材を活かしたコーディネートには、籠バッグがおすすめ。
サイズや形、風合いも好みによって選ぶことができ、昭和レトロな雰囲気や季節感を演出できます。
夏に涼やかさを演出してくれるのはもちろん、秋冬にはほっこりとした温かみを感じさせてくれます。ニットやファー素材の飾りをつけたり、巾着の生地を季節によって変えるのも素敵ですね。
着物だけでなく、洋服にもおしゃれに合わせやすく、使い勝手も抜群です。

トートバッグ

気軽なおでかけやショッピングの際は、軽くて収納力があるトートバッグが活躍します。
ウールや木綿の着物に、キャンバス地などのトートバッグを合わせるのも可愛らしいですが、過剰にカジュアルダウンさせたくない方は、バッグの生地にこだわるのがおすすめ。
帯地はもちろん、ヘリンボーンやジャガード織りなど、模様が浮き出る織りの生地は高級感を演出し、着物姿の気品を損なわず寄り添ってくれます。

浴衣におすすめのバッグ&巾着

夏の浴衣は、着物にあまり慣れていない方でも手を出しやすいジャンル。
サンダルにクリア素材のバッグを合わせるなど、夏の洋装に近いコーディネートも良いですが、普段とはがらっと雰囲気を変えたい方は、籠バッグか巾着を購入するのがおすすめ。
夏だけでなく、他の季節にも流用できるものを選ぶと箪笥の肥やしになりにくいですよ。

籠(かご)バッグ

浴衣の軽やかさにぴったりなのが、素朴な雰囲気の籠バッグ。コンパクトなサイズ感のものからたっぷりとした大きさまで、お出掛けの都合に合わせて選べます。
シンプルなデザインのものも素敵ですが、お祭りやデートで着用する場合は、リボンやビーズ飾りのついたものもおすすめです。飾りのついたヘアクリップなどを縁に挟んで、自分でアレンジすることもできます。
中に入れる巾着をポップな色柄のものにして、差し色にするのも可愛らしいですね。

巾着

浴衣用のバッグとしてイメージに挙がりやすい「巾着」。
小さくて見た目も可愛らしいのですが、バッグとしては少し頼りなく感じることも。籠がついているタイプや、底の型がしっかりしているタイプを選ぶと安心感があります。
趣たっぷりの和柄の巾着で雅な浴衣姿を演出するも良し。あるいは、レースをあしらったものや、洋服地のようなデザインを選ぶと一気にモダンな雰囲気に。レトロな和装だけでなく、現代的なコーディネートが好きな方にもおすすめです。

男性におすすめのハンドバッグ

メンズ着物に合わせるバッグは、基本的に小ぶりなサイズがほとんどです。革製のバッグや、ナチュラルな素材感のバッグであれば、着物姿にも馴染みやすいです。
レディースのバッグと異なり、煌びやかなものは少ないですが、フォーマルシーンでは上質な革やお召地などを使用したバッグを選びましょう。

信玄袋

信玄袋は、口紐で結ぶタイプの手提げ袋で、底に板がついたもの。巾着よりも角ばった形をしていることが多く、武田信玄由来の名前がついていることから、メンズの和装バッグやお神輿を担ぐ際の小物入れとして使われます。
「合切袋」という二つ名もあり、小物の一切合切をラフにぽんぽんと放り込めるのが魅力。生地やデザインもさまざまなので、好みや着用シーンに合ったものを選びましょう。ハリのある帯地や着物地の信玄袋は、フォーマルシーンにも活用できます。

道中財布

ふらりと気軽にお出掛けしたい方におすすめなのが「道中財布」。
袋状になっており、お金や貴重品を入れてくるくると丸め、袂などにコンパクトに仕舞うことができます。軽いので持ち運びやすく、お会計の際も粋なおしゃれを演出してくれるポーチのような存在です。
荷物が多い方には不向きですが、着物姿でも手ぶらで外出したいという方はぜひ。

セカンドバッグ

スマートな手元に見せてくれるセカンドバッグ、あるいはクラッチバッグ。
革製のセカンドバッグの中でも、特にこだわりを感じさせるのが「印伝」のバッグです。鹿革に漆の加工を施し、模様付けをした印伝は、人肌に近い馴染みの良さと丈夫さ、使えば使うほどに光沢を帯びる美しさが魅力。フォーマルシーンにも使える、上質なバッグです。
ぜひ古き良き伝統の技を身に着ける感覚で、こだわりの着物姿をお楽しみください。

ショルダーバッグ

肩掛けバッグと聞くと「着物にはカジュアルすぎるのでは…?」というイメージがあるかもしれないですが、和装にも似合うショルダーバッグは、カジュアルスタイルにおすすめ。
素朴な色合いや藍染めの布地、あるいは革製のバッグであれば、メンズ着物の風合いを活かしてしっくりと馴染んでくれます。
鳥獣戯画など、人気の日本画が描かれたデザインのバッグも、話が弾むきっかけになりますね。

まとめ

着物に合わせたバッグ選びのコツは、主に以下の四点です。

・格式に合わせた生地やデザインを選ぶこと
・シーンによって容量(サイズ)を調整すること
・持ちやすさ、開閉のしやすさなどを吟味すること
・着物や帯、小物とのコーディネートを考えること

使いたい場面や合わせたい着物をきちんとイメージして、それぞれにぴったりのバッグを選ぶようにしましょう。

和洋で兼用できる着物用バッグもあれば、洋服用のバッグを着物に用いる方もいるので、堅苦しく考えすぎず、全体的にバランスの取れたコーディネートを目指せば大丈夫です。
カジュアルな着物であれば、リュックやボディバッグを合わせるのも素敵ですね。

ぜひお気に入りのバッグを見つけて、着物ライフを満喫してみてください!