着物の着付け

2022.5.16

着付け方法マニュアル。事前準備から着物の脱ぎ方、よくある質問まで

着付け方法マニュアル。事前準備から着物の脱ぎ方、よくある質問まで

着付けってなんだか敷居が高い…。どうしても難しい印象を持たれがちな着付け。
確かにいざ自分で着てみようとしても手順が多く、慣れるまでは大変。
しかし自分でできるようになると、好きな時に着物を着られるようになるし、着崩れても自分で直せるという利点が。
また、忘れがちな着物の脱ぎ方やポイントまで全部把握できる。
ぜひ一度挑戦してみましょう。

着付けの事前準備

いざ着物の着付けを自分でしてみよう!と思っても、しっかり事前の準備をしないとバタバタしてしまいます。
落ち着いてスムーズに着付けができるように、当日の朝ではなく、前日の夜のうちに準備をしましょう。
具体的にどのような準備が必要なのか、順番に説明していきます。

着物をタンスから出しておく

着物だけではなく、帯や長襦袢も前日の夜のうちにタンスから出して、着物ハンガーなどにかけておきます。かける場所は直射日光の当たらない風通しの良い場所にしましょう。
長い間タンスに仕舞いがちになる着物は、たたみジワや防虫剤などの臭いがついてしまっています。そういったものを、夜の間に取っておきましょう。
着ようと思った時に長襦袢の半衿がついていなかったり、汚れや変色がある場合もあるので数日前にはチェックが必要です。

ヘアセットやメイクをする

着物を着る時は、ヘアワックスなどで着物が汚れないように、アップヘアにするのがおすすめです。
もしヘアセットも自分でする場合は、着物を着てからだと腕を動かしづらいので、着る前に行いましょう。
その際、髪が崩れてしまわないように前開きの服にしておいた方が無難でしょう。
メイクは着物に付いてしまったら大変です。メイク後はティッシュオフをして、汚れないように注意が必要です。

着付けは広い場所で清潔な手で行う

着物の丈は洋服と違い、身長よりも長く作られているので、どんな着方をしても必ず裾や帯が床につきます。
狭いスペースでの着付けは難しいので、二畳以上あるのが理想です。
なお、着物を汚してしまわないように清潔な手で行うことも大切なので、特にヘアセットやメイクをした後は一度手を洗ってから行いましょう。

着付けの手順

着付けは、①肌着 ②長襦袢 ③着物 ④帯の順で行います。
浴衣の場合は長襦袢は着ません。なお履物は、浴衣の時は裸足に下駄、着物の時は足袋に草履が一般的です。

1.足袋、肌着、補正

足袋を履く時のポイント

足袋は、普段履くような靴下と違い伸縮性がない物が多いため、慣れないうちは履きづらいので、着物を着る前に履くことをおすすめします。

肌着の種類と選び方

肌着には、セパレートタイプ・スリップタイプ・ワンピースタイプの3種類があります。
セパレートタイプは上下で分かれているもので、
上半身を肌着、下半身を裾よけと呼んでいます。
スリップタイプは上下で分かれていないもので、頭からかぶります。
ワンピースタイプも上下で分かれていないものですが、こちらは着物と同じような形状をしています。
肌着は自分に合ったものを使うといいですが、初心者の場合はスリップタイプが1番簡単です。

補正をする

着物は平らな布を体に巻くイメージなので、体の凹凸の少ない方がきれいに着付けられます。
主に肩周り・胸・腰にできる体のくぼみをわ薄手のタオルで埋めていきます。

2.長襦袢を着る

着物の前に着る長襦袢は、着物より少し短め調整しましょう。
ここで必要なものは、コーリンベルトと伊達締めです。衿芯はあらかじめ長襦袢に付けておきましょう。

3.きものを着る

長襦袢が着られたらいよいよ着物です。ここで必要なものは、腰紐2本・コーリンベルト・伊達締めです。着物によってはクリップがあると便利です。

4.帯を締める

着物によって使う帯の種類は違います。一般的に振袖や留袖には「袋帯」、小紋や紬には「名古屋帯」、浴衣は「半幅帯」を締めます。
帯を締める時に必要なものは、帯枕・帯締め・帯揚げです。
結び方にもよりますが、仮紐やクリップ、ゴムなどが必要な場合もある為、事前に確認しておきましょう。

長襦袢の着方

1.長襦袢をはおり衣紋を抜く

まず長襦袢を肩にかけ袖を通し、衿を持って背中の中心線を合わせていきます。
この時、首の後ろの衣紋を手のひら分ほど抜いておきます。

2.衿合わせをする

まず、コーリンベルトを肩幅より少し広めに調整します。
そして下前のウエスト位置でコーリンベルトを留め、左側の身八つ口から出してシワを取りながら上前のウエスト位置に留めます。
コーリンベルトがない場合は腰紐でもできますが、着崩れを直す時に調整しやすいのはコーリンベルトです。

3.伊達締めをする

伊達締めをしめ、胸元のたるみやシワを伸ばし、長襦袢は完成です。

きものの着方

1.袖を通す

着物を後ろに持ち肩にはおり、腕を通します。この時、長襦袢の袖を持った状態で通すとスムーズです。

2.裾合わせをする

背中心を決め背縫いと衿先を持ち、ゆかすれすれの長さに合わせます。
上前を衿先を腰骨の位置に合わせ、前幅を決めます。前幅を広げ、下前を巻いていきます。この時褄先を持ち上げ、上前より短めにします。

3.腰紐をつける

上前を戻し、腰紐を腰骨より少し上の位置で結びます。この時、上前の褄先を3cmほど持ち上げると、裾つぼまりになりスッキリ見えます。

4.衿合わせをする

両方の身八つ口から手を入れ、前後のおはしょりを整えます。
背中心を合わせ、襟を整えます。そのまま下前のおはしょりを斜めに折り上げ、ウエスト位置でコーリンベルトを留めます。左の身八つ口
から出したコーリンベルトを後ろからまわして上前の衿に留めます。
正面から見て、長襦袢の半衿が左右均等に見えるように整えましょう。

5.おはしょりを整え、伊達締めをする

コーリンベルトより上の位置で腰紐を結びます。背中のシワを下に引き、左右の身八つ口から脇が見えないように合わせます。
おはしょりの下のラインを整え、後ろのおはしょりを持ち上げてコーリンベルトのゴムに挟みます。前のおはしょりは着物が滑る場合はクリップで留めておきます。
伊達締めをして着物は完成です。

帯の結び方

帯結びは一般的なものから創作結びまでさまざまです。お太鼓や文庫などはみなさんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。

帯の結び方の種類と合わせ方

帯の結び方は着物の種類によって違います。代表的なものだーと、留袖は「二重太鼓結び」、振袖は「ふくら雀」や「文庫」の他、豪華に見える結び方をします。
二重太鼓結びはには縁起の良い意味がありますが、和装の喪服の場合は不幸が重なるという意味になるので一重の太鼓結びにします。

一重太鼓の結び方

1.まず帯板をウエストに着けます。
手先を半分に折り、後ろから肩にかけます。肩にかけた帯は帯板の下線くらいに合わせ、帯を胴にひと巻きします。この時輪の方が下側にくるようにしましょう。

2.ひと巻きしたら左手は背中心の帯を持ち、右手で引き締めます。そのまま右手は帯の下側をしっかり固定しながらふた巻き目を締めます。

3.ふた巻き目の終わりで脇から斜めに折り上げ、手先を下ろします。下ろした手先を仮紐でおさえ、前で結んでおきます。

4.たれ元をひろげ、帯揚げを巻いた帯枕を内側にあて、お太鼓の山を作ります。そのまま帯の上線に合わせお太鼓をのせ、帯枕の紐を前で結び、帯の中にしまいます。この時帯揚げも前で仮結びしておくと邪魔になりません。

5.仮紐を外し、お太鼓のサイズを決めたらくるむようにたれを持ち上げ、仮紐を前で結びます。
たれの長さは大体人差し指1本分くらいです。

6.お太鼓の中に手元を通し、手元を押さえるように帯締めを通します。帯締めを前で結んだら仮紐を外します。

7.帯揚げを整え、前でひと結びして帯の内側におさめます。お太鼓の形を整えたら完成です。

二重太鼓の結び方

1.まず帯板をウエストに着けます。
手先を半分に折り、後ろから肩にかけます。肩にかけた帯は帯板の下線くらいに合わせ、帯を胴にひと巻きします。この時輪の方が下側にくるようにしましょう。

2.ひと巻きしたら左手は背中心の帯を持ち、右手で引き締めます。そのまま右手は帯の下側をしっかり固定しながらふた巻き目を締めます。

3.ふた巻き目の終わりで脇から斜めに折り上げ、手先を下ろします。下ろした手先を仮紐でおさえ、前で結んでおきます。

4.たれ元をひろげ、帯揚げを巻いた帯枕をたれ先から30cmほどのところにあてます。帯を2枚重ねて端を揃え、お太鼓の山をつくります。この時帯の柄が綺麗に出る部分を考えてお太鼓の山を決めると良いでしょう。

5. 帯枕を帯の上線に合わせお太鼓をのせ、帯枕の紐を前で結び、帯の中にしまいます。この時帯揚げも前で仮結びしておくと邪魔になりません。

6.仮紐を外し、お太鼓のサイズを決めたらくるむようにたれを持ち上げ、仮紐を前で結びます。
たれの長さは大体人差し指1本分くらいです。

7.お太鼓の中に手元を通し、手元を押さえるように帯締めを通します。帯締めを前で結んだら仮紐を外します。

8.帯揚げを整え、前でひと結びして帯の内側におさめます。お太鼓の形を整えたら完成です。

着物の脱ぎ方

着物を脱ぐ時は、汚さないように注意しなければいけません。ここでは脱ぐ前にするべき事や脱ぐ時の注意点をお伝えします。

1.着物を脱ぐ準備

脱ぐ場所の準備

まず、着物は洋服より裾が長いため、必ず床に生地が触れてしまいます。清潔で広いスペースが必要な他、理想は畳の部屋ですが、難しければ衣装敷と呼ばれる着物用のシートを床に敷くと良いでしょう。

着物を汚さないようにする準備

着物を脱ぐ時にメイクが付いてまわないように、メイクは落とすかフェイスガードを使いましょう。特に口紅のような色移りしやすい物は注意が必要です。同じように、手は綺麗に洗っておき、ひっかけないようにアクセサリーはあらかじめ外しましょう。

シワにならないようにする準備

着物を脱ぐ前に、着物用ハンガーを準備しておきましょう。脱いですぐハンガーにかけるとシワになりにくいです。

2.着物の脱ぎ方

着物は上から順番に脱いでいきます。
まず帯締め・帯揚げ・帯枕を外し、帯を外します。その後は着た順番と逆に着物・長襦袢・肌襦袢を脱ぎます。

3.着物を脱いだ後

着物は裾も長いですし、紐や小物も多いので、全て一気に脱ぐと床が小物だらけになります。脱いだらひとつずつ着物ハンガーにかけておくと整理ができ、スムーズに脱ぐことができます。
自宅ではすぐに陰干しをし、空気にあてておきましょう。こうすることで湿気が飛び、カビを防げます。

着付けQ&A

気付けに関するよくある質問をまとめてみました。是非参考にしてみてください。

着物は左前・右前?

着物の衿合わせは男女関係なく、左側が上にきます。ただ注意が必要なのは、呼び方は「右前」となります。これは、気付ける順番のことで、右を先に着付けるため「右前」と呼びます。
なお左前だと、お葬式の時に亡くなった人に着物を着せる時の死装束となります。
正しい着方を忘れそうな人は、小文字の「y」で覚えると簡単に覚えられますよ。

補正タオルってなに?何枚必要?

着物は体の凹凸があると綺麗に着付けられず、着崩れの原因となります。
襟元や胸、ウエストやヒップにタオルなどで補正をし、体をフラットにしていくことが必要不可欠です。
一般的には5枚ほどあれば大丈夫ですが、細身で胸の大きい方などは余分に用意した方が無難です。
タオル以外にも、補正パットなど専用の道具もあるので、ご自身に合うものを見つけてくださいね。

衿もとがゆるんできたらどうしたらいい?

衿もとがゆるんでしまったら、着物の裾を持ち上げ、長襦袢の背縫いを両手で下に引っ張ると直ります。

脇のたるみはどうしたらいい?

脇のたるみは、身八つ口の穴を塞ぐように引き、帯に押し込むことで直ります。

腰にたるみができてきたらどうしたらいい?

腰のたるみは、おはしょりをめくり上げ腰紐の上のおはしょりを持って引き上げます。腰にできたシワは左右に広げてのばしましょう。

お端折り(おはしょり)が乱れたらどうしたらいい?

おはしょりを直す時は、帯の下側に手を入れてたるんだ部分を左脇に送ります。その際たるんだ部分はタックを作り、後ろの身頃に倒すと良いでしょう。

裾(すそ)が落ちている時はどうしたらいい?

裾が落ちてしまったら、おはしょりの下から上前の衿先を持ち、突き上げるようにして腰紐の中に入れこみます。その後またおはしょりを整えましょう。

振袖は一人で着付けられる?

振袖はもともと着せてもらう前提の着物なので、一人での着付けは難しいです。特に、振袖に使う袋帯は硬くて幅も広く、結ぶ位置も高いので、1人で結ぶのは難易度が高いです。
着物が着られる=振袖が着られるとは考えない方が良いでしょう。

まとめ

着付けは洋服と違って手順も多く、慣れるまでは大変ですが、もし少し着崩れてしまった場合でも、着付けの方法を知っていたら対処法も分かると思うので、知っていて損はありません。何度も練習して、自分でも着付けができるようになると、きっとオシャレの幅も広がります。本格的に学びたい場合は、着付け教室に通ってみるのもいいですね。
是非、素敵な着物ライフをお過ごしください!