「半襟付けが苦手…」
「もっと簡単にできる半襟の付け方はない?」
着物を着るために欠かせない半襟付け。
しかし、糸と針を使って縫う半襟の付け方では、うまくできない、面倒と感じている方も多いのではないでしょうか?
着付けの準備段階でハードルを感じ、着物から遠ざかってしまっている方もいるかもしれません。
できることなら半襟の付け替えにハードルを感じることなく、着物を気軽に楽しみたいですよね。
そこで今回は、針と糸を使用した基本の方法はもちろん、糸さえ使用しない簡単な半襟の付け方をまとめました。
衣紋のシワを防ぐためのポイントや、刺繍や柄の半襟を付ける際のコツも紹介していますので、きれいに縫いつけられない、柄出しがうまく行かないと悩んでいる方も必見です。
本記事を読めば、半襟付けでストレスを感じることなく、着物を楽しめるようになりますよ。ぜひ参考にしてください。
▼半襟については、こちらもあわせてご覧ください。
この記事の目次
半襟を付け替えるのはなぜ?
つい面倒に思ってしまいがちですが、半襟を付け替えるのには理由があります。
・汚れから着物や襦袢を守るため
・TPOに合わせた半襟を選び、装飾するため
付け替える手間を惜しんだことで、かえって面倒を増やしてしまう可能性もあります。
半襟を付け替える意味を見ていきましょう。
半襟は着物や襦袢を守るためにある
半襟が果たしている最も大切な役割は、着物や襦袢自体を守ることです。
顔に近い襟元は、ファンデーションや皮脂などで汚れやすい部分。落ちにくい上に、放置すればシミになる恐れもあります。
汚れたら着物や襦袢を洗濯やクリーニングすればいいかもしれません。しかし、手間と費用がかかる上に、少しずつ生地を傷める原因にもなってしまいます。
そこで活躍するのが半襟です。半襟を付け替えることで、着物や襦袢自体が汚れるのを防いでくれます。頻繁に着物や襦袢を洗う必要がなくなり、汚れてしまった半襟を替えればまたすぐに着用可能。
半襟は、着物や襦袢自体を守る大切な役割を持っているアイテムなのです。
TPOに合わせた半襟選び
着物の中で襟元からわずかに覗くだけの半襟にも、着物や帯と同じく格があるため選び方には注意が必要です。
格を重んじるフォーマルな場面では白襟が基本。
カジュアル着物なら季節さえ気を付ければ、色や柄付き、刺繍やレースタイプなど実に多種多様な半襟を楽しめます。
選ぶのに迷ったときは、塩瀬素材の白半襟がおすすめです。合わせる着物やTPOを選ばず、10月から5月まで着用できますよ。
身に着けた時に失礼とならないよう、半襟にはTPOに合わせた選び方があることを把握しておきましょう。
▼着物や格式・季節で選ぶ半襟の目安は、以下の記事をご覧ください。
基本の方法!半襟の縫い方
ここからは、針と糸を使用した王道の半襟の付け方をご紹介します。
今まで独学で縫い付けていた方も、改めて確認してみてください。
半襟縫いに必要なもの
半襟を縫い付ける方法に必要なものは以下の8点です。
・長襦袢
・半襟
・縫い針
・まち針
・縫い糸
・糸切ばさみ
・アイロン
・衿芯
まち針は、10本を目安に用意しておきましょう。
半襟の縫い方
半襟を縫う際は、以下の手順に沿って進めていきます。
1.アイロンがけ
2.まち針を打つ
3.表側を縫う
4.裏側を縫う
コツも含め、詳しく解説します。
アイロンがけ
半襟を付ける前にまずはアイロンがけです。
シワがついている場合はもちろん、見た目にきれいな半襟でもアイロンをかけると作業がしやすくなりますよ。
正絹の半襟は裏側から、ポリエステルの場合は当て布をして中温で伸ばしましょう。
まち針を打つ
次に半襟を1cmほど内側に折り、長襦袢の表側に背中心にしっかり合わせてまち針で留めます。一度アイロンをかけて折り目を付けておくとやりやすくておすすめです。
中心から両端に向かって全部で10本ほどを目安にまち針で留めていきます。
背中心から15cmぐらいは、半襟を少し張って待ち針を打つのがポイント。着用したときに首の後ろ側にシワが寄るのを防げます。
表側を縫う
まち針で留めたら、半襟の端から縫っていきます。糸は2本重ねず1本でも構いません。
半襟と長襦袢の襟のそれぞれの折山から0.1cm内側を、2〜3㎝ほどの間隔で縫っていきます。表側は着たときに見えないので、ざくざくと縫いましょう。
裏側を縫う
表側が縫い終わったら次は裏側です。
長襦袢を裏返し、地襟を覆うように幅を調整しながら余分な部分は内側に折り込みます。中心から両端に向かってまち針で留め、端から縫っていくのは表側と同じです。
背中心から左右15㎝は衣紋から見られる部分なので、糸が目立たないようにすくって縫っていきます。
衿芯は、最後に長襦袢の内側に差し込みましょう。
刺繍・柄半襟を縫う際の注意点
人気の高い刺繍や柄の半襟を縫う際は、基本の縫い方と違うため注意しましょう。
先に見せたい部分を決めて固定し、裏側から縫っていくのがポイントです。
特に刺繍半襟は、左右対称になるように刺繍が入っている商品が多く見られます。せっかく縫い付けたのに、着てみたら刺繍や柄が隠れてしまっては悲しいですよね。
お気に入りの半襟をきれいに見せるために、必要なものと手順、コツを確認していきましょう。
半襟縫いに必要なもの
刺繍や柄の半襟を縫うのに必要なものは以下の9点です。
・長襦袢
・半襟
・縫い針
・まち針
・縫い糸
・糸切りばさみ
・アイロン
・衿芯
・着物クリップ(あれば)
あれば着物クリップを用意しておくとやりやすくなるのでおすすめです。
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刺繍・柄半襟の縫い方
刺繍や柄半襟は、縫い始める面が裏側からになります。
1.アイロンがけ
2.まち針を打つ
3.裏側を縫う
4.表側を縫う
ポイントやコツとともに、それぞれ詳しく解説します。
アイロンがけ
半襟を付ける前のアイロンがけは変わりません。生絹は裏側から、ポリエステルの場合は当て布をしてから、中温で軽くアイロンをかけ伸ばします。
まち針を打つ
まち針を打つ側も、刺繍や柄半襟の場合は裏側からです。
半襟を1cmほど内側に折り、長襦袢に背中心を合わせます。
ポイントは、刺繍や柄の見せたい部分を先に決めること。先に着物クリップで留めておくと、まち針を打っている間に動く心配がなくおすすめです。
後は中心から両端に向かって10本ほどまち針で留めていきましょう。
裏側を縫う
まち針を打ったら、半襟の端から縫っていきます。
背中心から約15 cmの人から見られる部分は細かく、小さな縫い目を意識しましょう。表から見えないようにすくって縫っていきます。
端からは2〜3㎝ほどの大きな縫い目でも構いません。
表側を縫う
裏側を縫い終わったら、表側に折り返してまち針で留め、縫っていきます。
表側は着用した時に縫い目が見えないため、縫い目が大きくなっても、曲がっても大丈夫です。
最後に衿芯を長襦袢の内側に差し込みましょう。
縫わない半襟付け?両面テープ
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裁縫が苦手な方や、毎回縫うのは大変だと感じている方におすすめなのが、両面テープを使った半襟付けです。
洗濯のときは貼っていたテープをはがすだけと手間もかからず、簡単に半襟を付け替えられるのは大きなメリット。時間がなくて急いでいるときや、旅行先でも重宝します。
ただ長時間貼り付けたままにしておくと変色の原因にもなるため、一時的な対応として使用しましょう。
両面テープの半襟付けに必要なもの
両面テープで半襟を付けるために必要なアイテムは以下の5点です。
・長襦袢
・半襟
・アイロン
・衿芯
・両面テープ
・まち針(必要であれば)
現在では半襟専用の両面テープも販売されています。
文房具として売られている両面テープも使用可能ですが、はがした際にベタつきが残ったり生地が傷んだりする恐れがあるため、おすすめはできません。
化繊など洗えるタイプの半襟に使用し、生絹の半襟は避けたほうがよいでしょう。
よりきれいに半襟を付けたい場合は、まち針も用意しておくと安心です。
半襟を両面テープで付ける方法
半衿を両面テープで付ける手順は、以下の通りです。
1.アイロンがけ
2.両面テープを貼る
3.縫う時と同じようにくっつける
縫う方法に比べれば簡単ですが、ポイントをおさえて進めていかないと仕上がりに影響が出る場合があります。
工程ごとに詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
アイロンがけ
まずアイロンがけをするのは、縫いつける方法と変わりません。生絹の半襟は裏側から、ポリエステルの場合は当て布をして中温でシワを伸ばしていきます。
両面テープの幅より少し太め、1.5~2㎝ほど内側に折り込み、アイロンをかけておきましょう。
両面テープを貼る
長襦袢に両面テープを貼っていきます。
背中心から端に向かって貼るのがポイントです。左右半分ずつ接着していきます。
縫うときと同じようにくっつける
半襟を両面テープでくっつけていきます。剥離紙は一度にはがさず、少しずつ行いましょう。
背中心から左右15㎝までは着た時にカーブを描いてシワになりやすいので、軽く引っ張ってピンと張らせながら貼っていくのがポイント。
最後に衿芯を長襦袢の内側に差し込み完成です。
普段着物に!安全ピンで半襟付け
半襟も襦袢も一緒に洗濯をしたい方におすすめなのが、安全ピンを使った半襟付けです。
両面テープに比べて、半襟の安定感が増します。
しかし、安全ピンは縫い針よりも太く、大きな穴が空いてしまうため、生絹では使わないようにしましょう。
麻や綿、化繊などのカジュアル着物を中心に頻繁に半襟を付け替える方にもおすすめです。
安全ピン半襟付けに必要なもの
安全ピンを使った半襟付けには、以下の5点が必要です。
・長襦袢
・半衿
・アイロン
・衿芯
・安全ピン7個
着用時のシワを抑えたい場合は、縫う時と同じようにまち針も用意しておきましょう。
半襟を安全ピンで付ける方法
安全ピンで半衿を付ける手順は、以下の通りです。
1.アイロンがけ
2.安全ピンで留めていく
それぞれ解説していきます。
アイロンがけ
まずはアイロンがけからです。生絹の半襟は裏側から、ポリエステルの場合は当て布をして中温のアイロンでシワを伸ばします。
まち針を使用する場合は、アイロンがけの後に行いましょう。
安全ピンで留めていく
背中心にひとつ安全ピンを留め、左右端に向かって安全ピンで留めていきます。両肩、前の直線部分、半襟の端に2つずつが目安です。特に人から見られる衣紋周りは5カ所は留めておきます。
最後に衿芯を差し込んで完成です。
衣紋で安全ピンを見せないポイント
衣紋で安全ピンを見せないポイントは、表側の襟は縫い代だけをすくって留めることです。
特に背中心から肩にかけての左右15㎝ほどは、他の人の目に入ります。
安全ピンが貫通しないよう、慎重にピンを差してください。
半襟の肩から端までは着物を着てしまえば見えなくなる部分なので、しっかりと固定させるためにも貫通させましょう。
ファスナー式?簡易的な半襟も
両面テープや安全ピンで留めるのも面倒に感じてしまう方には、以下の便利グッズがおすすめです。
・うそつき長襦袢「き楽っく」
・超うそつき半襦袢
ファスナーで半襟を付け替えるタイプの長襦袢で、慣れない場合でも1分もあれば半襟の付け替えが可能です。
半襟や長襦袢の組み合わせや商品が限られてはしまいますが、半襟付けの手間からは解放されますよ。
負担をできる限りなくしたい方は一度検討してみてください。
うそつき長襦袢「き楽っく」
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「き楽っく」は、半襟をファスナーで付けるタイプの長襦袢です。最短10秒で半襟付けが完了します。
専用の半襟が必要ですが、着物を着る直前に半襟を変更したいと思い立っても、すぐに替えられるほど簡単にできるのが魅力です。
超うそつき半襦袢
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「超うそつき半襦袢」は、半襟をファスナーで付け替えられる二部式の襦袢です。
「ローズカラー」と名の付いているものであれば、他ショップで取り扱っている半襟でも取り付けできます。格に関わらず幅広く使える塩瀬のほかにも、ちりめんや刺繍、柄など多くの半衿が揃っているのも魅力です。
▼長襦袢に関してはこちらの記事もあわせてご覧ください。
半襟がシワになる?半襟付けの注意点
半襟付けで多くの方が抱える悩みが、衣紋部分のシワではないでしょうか。
シワが出る原因は、決して「裁縫がうまくないから」でも「丁寧に縫えていないから」でも「細かく縫っていないから」でもありません。
半襟の構造上、シワができて当然なんです。
シワは、着た時に襟の外側と内側で長さが違ってしまうために起こります。
着用時に円を描く半襟は、内側が短く外側は長くなり、布が余った内側にシワが寄ったり波打ったりしてしまうわけです。
シワがあっても着物は楽しめると言われても、他の人の目にとまる部分なのでどうしても気になってしまう方も多いでしょう。
工夫次第でシワにならない衣紋を手に入れられますので、ポイント2つをご紹介します。
衿芯の向きは合ってる?
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まずは衿芯の向きをチェックしましょう。
向きによってシワや凸凹になっている可能性があります。
衿芯は長襦袢の衿に入れて形を整え、襟元をきれいに見せる役割を持つ着付けアイテムです。
長さのあるほうを上に向かせて入れると、襦袢を着た時に背中心のカーブがきれいに出ます。
衿芯の向きは上・下両方の説があり、どちらかが間違っているというわけではありません。
普段入れている向きを確認して、一度反対に差し込んでシワの出具合を試してみてください。
バイアスなどのシワになりにくい半襟を選ぶ
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バイアス半襟を選ぶのもおすすめです。
バイアスには偏りや斜めという意味があり、半襟でバイアスとついている場合は、斜め45°の角度でカットした商品を差します。
襟の内側と外側の長さの違いからできてしまうシワや波打ちを、布自体が持つ伸縮性を利用して解消できるのが魅力です。
縫い方は王道と同じ。普段半襟のシワや波打ちで悩んでいる方は、一度使用を検討してみてください。違いがわかりますよ。
まとめ
必要とわかっていても、難しい・面倒と感じてしまいやすい半襟付け。
しかし、縫うよりもっと簡単に半襟を付け替える方法も多く考え出されています。
縫うのが苦手な方や時間がない方は両面テープ、襦袢と半襟を一緒に洗いたい方や頻繁に半襟を付け替えたい方は安全ピンがおすすめです。
縫うことすら面倒に感じてしまったら、ファスナー式の襦袢も検討してみましょう。
せっかく手元にある着物。裁縫が苦手と遠ざけずに、まずは簡単な方法から試して半襟のコーディネートとともに着物ライフを楽しんでくださいね。