着物の種類

2022.9.3

色留袖はいつ着る?訪問着との格式の違いや選び方・着用シーンを解説

色留袖はいつ着る?訪問着との格式の違いや選び方・着用シーンを解説

色留袖と言えば、結婚式や披露宴、パーティーなど、華やかで格式がある場の装いとして知られていますね。
ですが、特別な日にしか着物を着なくなった現代では、あまり目にすることはなくなりました。
また、色や柄が似ている訪問着とも、しばしば混同されがちです。

「色留袖って、そもそもどんな時に着るの?」
「訪問着との違いは何?」
「着られる年代は限られているの?」

この記事を読んでいるあなたも、このように思ったことでしょう。
そこで、今回は色留袖に焦点を当てて説明していきます。
この記事では、着られる年代や訪問着との違い、小物のコーディネートや選び方など、色留袖に関するあらゆる情報を説明しています。
色留袖とはどんな着物なのでしょうか。
是非、最後までご覧ください。

色留袖とは?

既婚・未婚問わない女性の第一礼装

まず、色留袖は既婚、未婚問わず、第一礼装に当たります。
留袖は一番格式高い着物ですが、色留袖は黒留袖の次に格式が高い着物です。
ですので、主な着用場面としては婚礼や披露宴、叙勲の授賞式やパーティーなど格式がある華やかな場が基本になります。
また、紋の数で準礼装にもなる、とても便利な着物でもあるんです。

着物の格についてはこちらの記事をご覧ください。

※未婚女性が振袖と悩んだ場合は、年齢で決めるのが良いでしょう。
30代以上で振袖着用に抵抗がある人は色留袖がおすすめです。
20代であれば振袖の方が華やかで好まれる傾向がありますが、式場の格や周りの衣装との兼ね合いで決めるのが良いでしょう。

色留袖の起源・歴史

留袖の始まりは、江戸時代のころです。
結婚した女性は、それまで着用していた振袖の袖を短く仕立て直しました。
この風習を「留袖」と言い、既婚女性の礼装として広まったのです。
現在着用されている留袖は、江戸の芸者の間で流行った江戸褄(えどづま)と呼ばれる着物が元になっています。この着物は上半部には模様がなく、下半部にのみ模様が入っているのが特徴です。
元々、留袖は既婚女性が礼装として着用するものでしたが、高齢の未婚女性ですと振袖を着ることがためらわれることが多かったのです。代わりに訪問着を使用するにしても派手さがあるため、年相応の落ち着いた装いをしたいということで、色留袖が未婚女性の間でも着用されるようになりました。
礼服として留袖は一般的ですが、宮中では黒は喪服を連想させるということで、あえて色留袖を着用することがあります。

色留袖の特徴について

色留袖の特徴として、
・着物を重ねて着ているように見せる「比翼仕立て」になっていること
・裾にのみ絵羽模様の柄が入っていること
が挙げられます。また、細かいシボが入った「ちりめん」という生地を使用しており、地模様が入った生地も使用されることがあります。
色はどの年代にも合わせやすい淡いものが多いのが特徴です。

色留袖と黒留袖の違い

留袖と言えば、もう一つ忘れてはならないものがあります。
それは、黒留袖です。大きな違いは、
・黒留袖…既婚女性の第一礼装
・色留袖…既婚、未婚どちらも着ることのできる礼装
であることです。
黒留袖は既婚女性しか着られないのに対し、色留袖は既婚の有無を問わず着ることができるのです。
また黒留袖は婚礼など(現代はほぼ婚礼のみです)華やかな場面のみですが、色留袖は婚礼や披露宴、祝賀会など、黒留袖に比べて着用できる場面が多くなります。

色留袖と訪問着の違い

続いて、色留袖と訪問着の違いについて説明します。
着物を見慣れていなければ、一見全く同じ着物に見えてしまいますよね。
ですが、明確な違いがあるのです。
それは、左肩や袖に模様が入っているか、ということです。
色留袖は裾にのみ絵羽模様が入っていますが、訪問着は裾、それから左肩から左胸にかけて、また、袖にも絵羽模様が入っているのが大きな特徴です。
訪問着は準礼装であるため、婚礼やパーティーをはじめ、入卒業式、お宮参りなど様々な場面で着用できるのも大きな特徴です。

元々、留袖は既婚女性が礼装として着用するものでしたが、高齢の未婚女性ですと振袖を着ることがためらわれることが多かったのです。代わりに訪問着を使用するにしても派手さがあるため、年相応の落ち着いた装いをしたいということで、色留袖が未婚女性の間でも着用されるようになりました。

まず、こちらが色留袖です。

続いて、こちらが訪問着です。訪問着の方が柄が多いので華やかに見えますね。

色留袖の紋と格と着用シーン

色留袖は第一礼装ですが、紋の数によって着用できるシーンが変わるということも覚えておかなければなりません。
どういうことなのか、順を追って説明します。

※紋については別途記事がありますので、こちらも併せてご覧ください。

五つ紋:礼装

色留袖は黒留袖よりも格が低いのですが、紋を五つ入れることによって黒留袖と同格に並びます。
着用できるのは主催者側の人間になることも覚えておきましょう。
主催者側の人間としてふさわしい格を持っているのですが、黒ばかりでは華やかさに欠けるため、祖母・叔母・姉妹・いとこなどの立場であれば親族の中でおしゃれを楽しめて華やかな色留袖がおすすめです。

三つ紋:準礼装

三つ紋の色留袖は準礼装に当たります。
これはゲストとして参列する場合にふさわしい装いです。
五つ紋に比べて着用できる場面が広がるので、最近は身内の慶事に三つ紋の色留袖を選ばれる方も多くなっています。

一つ紋:準礼装

こちらも、ゲストとして参列する場合にふさわしい装いの着物です。
三つ紋よりも格が下がるので、結婚式や披露宴はもちろん、祝賀会など華やかな式典で着用することができます。

色留袖に合わせる帯と小物

小物についても、忘れてはいけません。
家にあるものなら何でも、というわけにはいかないので、注意が必要です。
着物は全て同じ形ですが、帯や小物の合わせ方次第で雰囲気がガラッと変わってしまいます。
では、どういうものを合わせれば良いのか見ていきましょう。

重厚感のある袋帯がおすすめ

色留袖には格式高く重厚感のある金や銀の袋帯を合わせるのが一般的とされています。
着物と似たような色を合わせると優しい雰囲気に、また反対色を合わせるとはっきりとした印象になります。

フォーマルな長襦袢を合わせる

長襦袢は洋服で言うインナーにあたります。
色のバリエーションが豊富なのですが、礼装として着用する場合は地模様が入った白の長襦袢を選びましょう。
こちらはポリエステル素材の洗える長襦袢です。
留袖は絹の素材が一般的ですが、お手入れしやすいように化繊のものも主流になっています。

帯揚げなどの小物類の決まり

基本的には黒留袖のルールに準じ、帯揚げや帯締めは白色、草履やハンドバッグなどは礼装用の金や銀を選ぶようにしましょう。
現代では帯揚げは綸子や絞りの布地を、帯締めは平たく織っている平打ちを使用するのが一般的になっています。

髪型やアクセサリーの選び方

色留袖に合う髪型は、スッキリとしたまとめ髪です。
華やかさに上品さを持たせることも忘れてはいけません。ヘアアクセサリーはべっ甲や螺鈿のかんざし、またはパールをひとつ挿すと上品にまとまります。パールですと洋装にも合わせやすいのでおすすめです。

留袖の選び方

留袖は着用する機会が高頻度ではないので、実際のところどのようにして選べば良いか悩ましいですよね。
回りと比べて浮いていないか、年相応の装いが出来ているかなど、とても気になります。
ここでは、留袖の選び方について解説しています。ポイントを押さえて、是非あなただけの1枚を見つけてください。
“実際に着用する際には、TPOの他浮いていないか、
年相応か、という見られ方が非常に気になる和装。
読者が安心して着用できるために、画像や実際のコーディネートを用いて納得する選び方の基準を解説。”

年代で選ぶ

まず、自身の年代で選んでみましょう。年代によって、合いやすい色や柄があります。
それぞれの年代に合う柄をまとめました。

・20代、30代…明るく華やかに

20、30代が色留袖を着用する場合は、明るく華やかな装いになることを意識しましょう。
例えば、色味はピンク系やクリーム系、水色などです。柄はバラなどの洋花をあしらった着物ですとより華やかさがアップします。
バラの花言葉は愛ですので、おめでたい席にふさわしい柄と言えるでしょう。

・40代、50代…上品+洗練された装いに

40、50代ですと、落ち着いて洗練された装いがとても似合う年代です。
色味はくすみのピンクや鶯色、ベージュ系が良く合います。柄は、吉祥文様の亀甲や巻物、雪輪などが好ましいです。
伝統的ですが淡い色にすることで華やかさもアップし、モダンな雰囲気になります。

・60代以降…上品+高級感

60代以降の場合は、高級感を取り入れた装いを意識しましょう。
色味は淡いグレーや落ち着いた藤色、あずき色がおすすめです。柄は上記の伝統柄の他に、おめでたい象徴の鶴をあしらったものもあります。
金、銀糸を織り込んだものだと高級感もアップします。

色で選ぶ

上記で年代別で合いやすい色を指定しましたが、似合う色は人それぞれです。
そこで、パーソナルカラーにあった色味を選ぶ方法もあります。
パーソナルカラーとは、それぞれに合った美しさを引き出す色のことを言います。
似合う色は千差万別です。このパーソナルカラーを利用すればおのずと似合う色が見つかります。

柄・文様で選ぶ

色留袖は慶事に着用するものなので、柄や文様の意味を重視して選ぶのも素敵ですよ。
例えば、
亀甲…長寿
扇 …繁栄
雪輪…豊作
熨斗…長寿、祝福
などです。
吉祥文様は様々な願いが込められているので、選ぶ際の参考にしてみてください。

色留袖のQ&A

色留袖を着用する際の疑問をまとめました。

Q.色留袖を着る前後のお手入れは?

色留袖を着る前は着物を広げ、風通しをします。
また着た後も汗を乾燥させる意味合いでハンガー等にかけ、風を通します。
軽い汚れがありましたらベンジン等のお手入れグッズで染み抜きを行いましょう。
絹の着物は水を含むと縮んでしまうので、間違っても水で洗うことはしないでくださいね。

詳しい着物のお手入れに関してはこちらをご覧ください。

Q.夏の結婚式に袷の色留袖を着てもいい?

結論から言うと、夏でも袷の色留袖は着られます。
ただ、袷ですので、会場で着付けるなどの対策をしましょう。特に最近の夏は災害級ですので、くれぐれも家から着ていくということは避けてください。
※車移動ができるのであれば家から着て行っても問題はありません。おうちの状況等で判断しましょう。

Q.色留袖をレンタルするには?

色留袖のレンタルは、式場や着物専門のレンタルショップが主流です。
最近ですと、ネットで簡単にレンタルできるので、多忙な方にも利用しやすくなっています。
料金は一式1万円前後から取り扱っているショップが多いので、予算に合わせて利用しましょう。
また、今後も色留袖を着用する機会が見込めそうであれば、購入する選択もあります。
三つ紋や一つ紋であれば着用できる場面が広いので、一着仕立ててもらうのも良いですね。

以下に色留袖のレンタルできるサイトのURLを載せました。ご参考にご覧ください。

Q.自宅にある色留袖を着用する際に気を付けることは?

まず、着物を広げてシミや汚れが付着していないか調べましょう。
次に軽く羽織ってみて、丈や身幅が合っているか確認します。
数年以上寝かせているようであれば、汗染みや食品の汚れ、また丈が合わなくなっていることが想定されます。
クリーニングや寸法直しが必要であれば呉服店か百貨店の呉服売り場に行き、必要なところを直してもらいましょう。
専門の販売員が常駐していることが多いので、着物に関する相談も受け付けています。不安であれば利用してみてください。

まとめ

これまで、色留袖について学んできました。
着用ルールが多く難しい、と感じてしまうかもしれません。
ですが、現在は着物に関するルールはそれほど厳密ではなくなってきています。
礼装ですとある程度のルールを守らなければいけませんが、それを踏まえた上で自分なりの着こなしを楽しむのもとても素敵ですよ。
色留袖は年齢が上がるにつれて着用する機会が多くなる着物です。
特別な日の装いに、是非色留袖を着てみませんか。