着物の種類

2022.6.30

着物の「紬」って何?特徴や着用シーンを解説します!

着物の「紬」って何?特徴や着用シーンを解説します!

「紬」という着物を聞いたことがありますか?
絹糸を使って織られた紬は、普段着からおしゃれ着まで、幅広いシーンで活躍する便利な着物です。
ここでは、紬の特徴やどんなシーンに合うか、帯や小物の合わせ方などを解説いたします。

紬(つむぎ)とは

紬(つむぎ)とは、蚕の繭から紡いだ「紬糸」と呼ばれる糸を使って織った着物です。
「先染め」と呼ばれる、糸をあらかじめ染めておいて織りで絵柄を表現する手法によって、さまざまな美しい模様の紬が作り出されています。

普段着からおしゃれ着まで着回しやすく、日常生活で使う着物として本格的なものを購入したい時にぴったりといえるでしょう。

派手すぎず、親しみやすい着物として人気の紬ですが、中には、伝統工芸品として独自の製法を長年守り続けてきた由緒正しい紬もあります。

紬の生地の特徴

紬の生地には「節(ふし)」と呼ばれる凹凸があるものとないものの2種類があります。

紬糸を作るための蚕の繭には、「玉繭」と呼ばれる2匹の蚕が1つの繭を作ったものが含まれます。
この玉繭は2本の糸が複雑に絡まっており、これを真綿にほぐして糸を撚り出す時、たくさんの節ができます。
そのため、玉繭から作った紬糸で織った紬は、節の凹凸によるざっくりとした肌触りになるのです。
節がある紬糸で織った紬の中でも代表的なものは「結城紬」です。

また、紬の中には節があまりない紬糸を使ったものも存在します。
そちらは、節のある紬糸で織った紬よりも生地が薄く、表面がツルツルしていて絹独特の光沢があります。
節がない紬糸で織った紬の中でも代表的なものは「大島紬」です。

紬の歴史

紬が生まれたのは、江戸時代の頃であるといわれています。
江戸時代に政府から出された贅沢禁止令により、人々は高価な絹の着物を着ることを禁止されてしまいました。
しかし、裕福な町人たちは絹の着物を着ることを諦めず、なんとか「絹の着物に見えない着物」を作ろうと画策します。

そこで目をつけたのが、農家が売り物にならないくず繭を使って織り上げたくず絹の普段着。
絹糸を使っているにも関わらず、絹独特の光沢を持たない紬は「遠目からは木綿で作った着物のように見える」ということで、町人たちに好んで着られるようになりました。
また、その渋い風合いは「粋な普段着」としても人気を集めました。

町での紬の流行は、農家にとっては貴重な収入源にも繋がりました。
農作業のない時期には、農村の女性はこぞって紬を織り上げていたといわれています。

このような歴史から、紬は絹の着物でありながら普段着としての側面が強く残り、現代でもおしゃれな普段着として広く使われているのです。

代表的な紬

代表的な紬紬は全国各地で織られており、土地によってさまざまな特徴があります。
ここでは、代表的な紬を4つご紹介いたします。

大島紬

大島紬は、鹿児島県南部の奄美大島半島で織られている紬です。
「泥染め」と呼ばれる、染料に浸した糸を泥田に浸けて揉み込む手法によって染められており、黒を基調としたシックな色合いが特徴です。

フランスのゴブラン織、イランのペルシャ絨毯と並び、世界三大織物に数えられています。
着た時にシワが発生しづらく、滑らかな肌触りが特徴です。
1つの大島紬を織るためには30以上もの工程を要し、完成までおよそ半年から1年ほどかかります。

久米島紬

久米島紬は、沖縄県にある久米島で織られている紬です。
久米島は紬発祥の地ともいわれており、久米島紬の技術が広まって大島紬、久留米絣、結城紬などの紬が生み出されたとされています。
素朴でしなやかな風合いが特徴で、絹特有の美しい光沢があります。

久米島紬は、かつて「琉球紬」と呼ばれ、税金の代わりとして藩に献上されていた歴史があります。
その制度が廃止された後も技術は脈々と受け継がれ、現代まで美しい久米島紬が生み出され続けてきました。
その功績をたたえ、昭和50年には伝統工芸品として指定され、2004年には国の重要文化財に認定されました。

牛首紬

牛首紬は、石川県にある石川郡白峰村で織られている紬です。
玉繭から手作業で糸を紡ぐ「のべびき」と呼ばれる手法によって紬糸が作られており、この紬糸で織った牛首紬はハリがあり、非常に丈夫です。

玉繭から糸を引き出す「のべびき」は、熟練した職人でなければ行うことができず、この繊細な伝統技術は、牛首紬の希少性を大きく高めています。

結城紬

結城紬は、茨城県・結城市で織られている紬です。
奈良時代の中期に常陸国から朝廷に献上された「絁 (あしぎぬ)」が、結城紬の原型であるとされています。
伝統的な製法が長年守られ続けてきたことから、2010年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。

空気を多く含むため、軽くて暖かく、ふわっとした肌触りなのが特徴です。
また、糸に付いた節によって、ざっくりとした感触も楽しめます。
秋、冬の肌寒い季節にぴったりの紬です。

紬のQ&A

紬のQ&Aどんな紬を選べばいい?

紬を選ぶ際は、紬それぞれにあるメリット、デメリットを考慮するとよいでしょう。
たとえば、通常の紬には絹糸が使われていますが、現代ではナイロンのような化学繊維を使った紬も数多く作られています。

絹糸を使った紬は着心地がよく、独特の風合いを楽しむことができますが、絹を使っているため少々値が張ることも少なくありません。
一方で、化学繊維を使った紬は、着心地では絹糸には一歩及ばない場合もありますが、絹糸よりも安価に入手することができます。

これらの情報を見たうえで、自分のライフスタイルに合った紬を選びましょう。

どんな季節に着ればいい?

紬は、季節によって種類を使い分けることで、全てのシーズンに対応できる万能な着物です。

たとえば、裏地がついている紬は春、秋、冬がシーズンです。
反対に、裏地がついていない透け感のある紬は夏に向いています。

夏には節のない紬糸を使った薄手の紬が人気で、大島紬の中には「夏大島」と呼ばれる、盛夏の時期用の高級な紬も存在します。

また、真冬の寒い時期には結城紬のような、節のある紬糸を使った厚手の紬がぴったりです。

どんなシーンで着ればいい?

紬は、一般的には普段着やおしゃれ着として使われる、カジュアルな着物です。
友人とのお出かけ、パーティー、お稽古などで着用すると素敵です。

反対に、結婚式や卒業式、何らかの式典など、礼装が基本とされるフォーマルな場所には不向きです。
一つ紋入りの紬の着物なら正式な場でも着用できるという話もありますが、あまり一般的ではありません。

紬は、「プライベートで気軽に着物を楽しみたい」という方にぴったりな着物といえるでしょう。

帯や小物はどんなものを合わせればいい?

紬は普段着として使われるのが一般的なので「名古屋帯」と合わせるとよいでしょう。
日常生活からちょっとしたパーティーまで幅広いシーンで使える名古屋帯は、紬との相性もバッチリです。
また、「しゃれ袋帯」や「半幅帯」と合わせてもオシャレな雰囲気になります。

帯締めや帯揚げも、礼装にならないものであれば幅広く合わせることができます。

紬は家でも洗える?自分でできるお手入れ方法は?

絹糸を使っている紬は、自宅で丸洗いすることはできません。
シミや汚れが目立つ場合は自分でお手入れせず、業者に頼みましょう。

ですが、普段から小さなお手入れを心がけることによって、紬を長い間美しく保つことができます。
紬の着物を着終わったら、

・専用の着物ハンガーにかけておく
・埃を払う
・薄いシミや汚れがあったら、ガーゼなどの布にベンジンを染み込ませたものを使って落とす

といったお手入れをしましょう。

まとめ

紬は、日常生活に本格的な着物を取り入れてみたい時にぴったりの着物です。
着心地の良さ、派手すぎない奥ゆかしい美しさから、普段着やおしゃれ着として着用すると、普段の生活に華が生まれることでしょう。
どの着物を買うか迷った時は、ぜひ紬を試してみましょう。