木綿の着物とは、どんな着物なのでしょうか?
手入れが簡単って言うけど、化繊と同じように洗えるの?
カジュアルな場所ならどこへ着ていってもいいの?TPOは?
木綿の着物には、どんな種類があるの?
代表的な木綿の着物についても紹介していきます。
木綿とは?
デニムや浴衣も木綿です。
デニムというと外国から輸入されたもののようなイメージがありますが、日本にも古くから表面が藍色、裏面が白色の厚地の藍染綿織物があります。
木綿の和装の代表格である浴衣は、着たことがある方も多いのではないでしょうか。
木綿と真綿の違い
木綿はコットン(植物繊維)、真綿は動物繊維と同じ綿でも全くの別物です。
日本では、室町時代に木綿の生産がはじまるまでは、綿といえば真綿を指していました。木綿の生産とともに、蚕の繭かつくる繊維を真綿、アオイ科の植物、ワタからとれる繊維を木綿と区別して呼ぶようになりました。
木綿の見分け方
木綿の生地の特徴と他の素材との見分け方
木綿は、吸湿性、通気性に優れ、柔らかな手触りが特徴となります。
木綿の見分け方は、厚みや重さ、滑りにくさなどで判断する他、仕立て上がった着物では、その特徴から単衣の着物が多く見受けられ、木綿糸は絹糸に比べ繊維が太いため繊細な柄はあまり見かけません。
木綿の歴史
木綿のはじまり
日本への木綿の伝来は、8世紀末と古く、
平安時代に書かれた書物には、崑崙人(インド人と言われている)が三河国(現在の愛知県東部)に綿花の種子を持って漂着したとの記述があり、
これが日本の木綿の伝来と言われています。
しかし、この種子は定着しませんでした。
室町時代、朝鮮と日本の間で貿易がはじまり木綿が輸入され、日本人の衣服が変わっていくきっかけとなります。
戦国時代の木綿
汗を吸収し動きやすい木綿は、戦う兵士の衣服として重宝され、応仁の乱はその状況に拍車をかけ、戦国大名が競って朝鮮から木綿を輸入したことで、朝鮮国内での木綿不足が深刻となり輸出制限がかけられたことから、中国から木綿を輸入するようになります。日本国内で自給自足を目的とした木綿栽培がはじまります。
江戸時代の木綿
1628(寛永5)年、農民は、木綿・麻以外の着物を着ることが禁止されます。
このことからも、すでに木綿が庶民の生活に深く木綿が浸透していたことがわかります。良質な木綿を生産する産地の誕生。
木綿の普及は江戸時代の経済を変えたとされます。
近代の木綿
幕末、欧米諸国と修好通商条約が結ばれると、大量の木綿製品が輸入されるようになり、機械紡績業の発展とともに、日本在来の綿は機械紡績には合わず、それに向く中国、インドやアメリカの綿が輸入されるようになり、日本の在来綿の栽培は衰退していきました。
明治時代以降、近代化が進むと洋服の一般化により、日本人が着物を着る機会は減っていきました。しかし、最近10年くらいは、洋服の上に直に着るなど、新しい着こなしが提案されたりと、若者の間で「着物は面白い」と思う人が増えています。
普段着物におすすめ!木綿の特徴
木綿のメリット
・手触りや着心地の良さ
・自宅で洗濯ができる
・比較的お手軽な価格で購入出来る
木綿のデメリット
・シワができやすい
・生地が縮みやすい
・色落ちしやすい
木綿着物のお手入れ方法
木綿の着物は手洗いでも、洗濯機でも洗うことができます。
洗剤は中性洗剤を使用します。
手洗いの場合は、優しく押し洗いをします。
脱水は、バスタオルに挟んで水分を取ります。
洗濯機の場合は、洗濯ネットに入れて、おしゃれ着コース(ドライコース)
脱水が終わったら、着物ハンガーで形を整えて陰干しします。
アイロンは、てかりが出る場合があるので、裏側からかけてください。
着物における木綿の種類
木綿の代表的な柄の種類
縞模様
線だけで構成される単純な柄でありながら
線の太さや組合せ、色の濃淡などにより棒縞、子持ち縞、矢鱈縞、鰹縞などバリエーションに富む。
格子柄
縦縞と横縞を組み合わせた柄、縞の幅や間隔によって、市松模様や千鳥格子、弁慶格子などがあります。
絣
糸の段階で染め分けされた糸で、縦糸と横糸を織り合わせて、木綿地に柄を織りだしたもの。柄の輪郭がかすれて見えるのが特徴です。
日本の代表的な木綿の産地
会津木綿(福島県)
陸奥国 会津郡(現在の福島県西部)に伝わる木綿平織りの伝統工芸品です。
厚地で丈夫、風通しがよく、冬は綿とは思えない温かさがあります。
冬はご極寒、夏は酷暑と、厳しい盆地の気候から生み出されたのが会津木綿です。
伊勢木綿(三重県)
三重県津市を代表する伝統工芸品です。
現在では作り手が、一社となってしまったため、大変貴重なものとされています。
伊勢木綿の特徴としては、洗えば洗う程柔らかくなるというその生地にあります。
片貝木綿(新潟県)
新潟県小千谷市の片貝町で織られている木綿織物です。
片貝木綿の特徴は、経糸、緯糸ともに単糸を使っていることです。
単糸は使い込むとワタに戻ろうとする性質があるため、ふわりとした優しい風合いへ変化していきます。
三河木綿(愛知県)
愛知県三河地方で織られる木綿織物、生地の白木綿が主である。有松絞りは、江戸時代はじめに三河木綿を使って絞った蜘蛛絞り、手筋絞りの道中手拭いを染めたのが始まりだといわれています。
三河は日本の木綿発祥の地といわれています。
久留米絣(福岡県)
福岡県久留米市を中心に周辺地域で生産される織物です。
備後絣、伊予絣と並び日本三大絣の一つと呼ばれています。
1957年に、木綿でははじめて、国の重要無形文化財として指定されました。
美しい藍色とかすれたような味わいのある柄が特徴です。
遠州綿紬(静岡県)
静岡県浜松市を中心に周辺地域で生産される織物です。
江戸時代の初め頃、南蛮貿易によってもたらされた縞織物を元に、織られるようになりました。
日本の四季から生まれた温かみのある日本の伝統色が特徴です。
阿波しじら(徳島県)
徳島県徳島市で織られている木綿織物です。
凹凸のある生地感が特徴的な阿波しじら織の着物は初夏から真夏にピッタリです。
国の伝統工芸品を気軽に身にまとえるのも、阿波しじらの魅力の一つです。
木綿は単衣仕立てがおすすめ
お気に入りの一枚が見つかったら、次はお仕立です。単衣仕立で袷の季節もずっと着られるのも木綿の嬉しいところ。ウールや木綿など普段着は昔から裏を付けずに仕立てます。
裏を付けてしまうと重くなってしまいます。
普段着として着物を楽しむなら、軽くて動きやすい単衣仕立てがおすすめです。
衿はバチ衿がおすすめ
お仕立てで、バチ衿と、広衿で迷ったらバチ衿をおすすめします。
生地によっては、広衿で仕立てると思ったより衿に厚みが出てしまう場合があります。
また、普段着の着物として気付けの時間も短くてすみます。
木綿の裏地は『背伏せ』と『居敷当て』
背伏せとは、背縫いの縫い代にかぶせて縫い付ける補強布のことです。
居敷当てとは、お尻部分にかかる力を両脇に分散させ着物の縫い目が広がったり裂けてしまうのを防止します。正座での動作をされる機会の多い方は生地の保護のため居敷当てを付ける事をおすすめします。
木綿の着物に関するQ&A
Q.高級な木綿着物は礼装になる?
いいえ。
どんなに高価な木綿の着物であっても、普段着であることに変わりありません。
着物には、素材などによって格付けがあります。礼装が求められるフォーマルな場での着用は控えたほうがいいでしょう。
Q.木綿の着用時期が知りたい!
木綿の着物は、季節を問わず一年を通して着用できます。
一口に木綿の着物と言っても薄手のものから、かなり地厚なものまであるので、素材感も重要です。
気温やお出かけになる場所に合わせて、襦袢やインナーを工夫することで、快適に過ごすことができます。
Q.浴衣は全部木綿なの?
浴衣の素材は、木綿が多く
最近は、ポリエステルなどの合成繊維も見かけるようになってきました。
小千谷縮や近江縮などの麻100%の浴衣もあり、綿と麻の混合もあります。
暑い時期に着る浴衣は、麻の方がおすすめ。
まとめ
普段着として着物を着たい人や着物初心者の方は一枚は持っておきたい木綿着物。
あると着用機会がぐっと上がります。
着物の世界には、格や着る時期など、いろいろな決まり事もありますが、固定概念から飛び出して、洋服感覚で気軽に木綿着物を楽しんでみてください。