着物の種類

2023.4.26

京袋帯とは?袋帯や名古屋帯との違いや見分け方、格や合わせる着物を解説

京袋帯とは?袋帯や名古屋帯との違いや見分け方、格や合わせる着物を解説

帯の種類のひとつに「京袋帯」と呼ばれる帯があるのはご存知でしょうか。
格としては袋帯と名古屋帯の中間とされている帯ですが、名前や形状から見分けがつきづらいとされることも多い帯です。
京袋帯は袋帯と名古屋帯のいいとこ取りをした優秀な帯でもあり、普段から着物を着る人には人気があります。
・京袋帯の種類や見分け方
・着用シーンやコーディネート
・京袋帯の結び方
・京袋帯を簡単に自分で結ぶアレンジ方法
など京袋帯の特徴を踏まえながら、活かし方を解説していきます。
自宅にある京袋帯が箪笥の肥やしになってしまっている人や、今後着物をより気軽に楽しみたい人は是非最後まで読んでみてください。
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京袋帯とは?

仕立て方は「袋帯」、長さや用途は「名古屋帯」と同じに作られているのが「京袋帯」です。
地方によっては「袋名古屋帯」と呼ぶこともあるようですが、八寸名古屋帯を指すことの方が多く使われているため一般的ではありません。
他に「一重太鼓帯」と記載されている書籍もありましたが、通称は「京袋帯」で良いでしょう。

京袋帯の歴史

京袋帯は帯の種類の中でも最も情報が少なく、歴史の中では出てきません。
過去には丸帯が長く使われており、大正時代に名古屋帯が、袋帯に至っては昭和初期に生まれた帯です。
歴史の浅い袋帯の進化版ともいえる京袋帯ですから、昭和から平成にかけて生まれたと言えます。
特に戦後は物資が足りず、名古屋帯の中でもさらに短くお腹に一重しか巻けない帯もあったそうですから、袋帯も同様に短く作られていた可能性はあります。
歴史の中で試行錯誤し作られていたものが昭和後期から商品化されたと考えれば納得がいきますね。

袋帯や名古屋帯との違いと見分け方

最も簡単な見分け方は、仕立て上がりの長さが4m30cm以上であれば袋帯、それ以下なら名古屋帯or京袋帯です。
違いを見分けたい時は着用シーンについて悩んでいる場合がほとんどだと思いますが、金糸や銀糸、箔を用いた煌びやかな帯は格式高いフォーマルシーンで締める袋帯の可能性が高いです。
長さはあるのに華やかではない袋帯もありますので、そちらのTPOについてはこちらの記事をご覧ください。
まずは袋帯との違いを判別するための長さ、次に名古屋帯との違いである仕立てを解説します。

長さと結び方で分かる袋帯との違い

形状の似た帯で判断が付かない場合、まず確認するべきは仕立て上がりの長さです。

長さ
丸帯 4m 34cm
袋帯 4m30cm~ 31cm
京袋帯 3m50cm~ 31cm
名古屋帯 3m50cm~ 31cm

比較すると、袋帯はもっとも長さがあることがわかります。
違いは帯の結び方にあり、袋帯は「二重太鼓」という締め方ができるような長さで織られているのです。
対して名古屋帯・京袋帯は略式で手軽に締められる帯なので「一重太鼓」で締める長さで織られています。

仕立て方で分かる名古屋帯との違い

袋帯と京袋帯はその名の通り、タレ先の口をかがって閉じた袋状態の仕立てが完成系で、縫い合わせることを「かがる」と呼ぶためかがり仕立てと呼ばれます。
手先を折らないため、畳みやすく前幅の調整が効くメリットが特徴です。
対して名古屋帯の主流である「名古屋仕立て」は手先を半幅に縫い合わせて仕立ててあるため一目でわかります。
名古屋帯の仕立てで京袋帯と混同され悩みがちなのは「開き仕立て」です。

名古屋帯の「開き仕立て」と京袋帯の見分け方

開き仕立ての他に、「額縁仕立て」や「平仕立て」とも呼ばれる名古屋帯の仕立てで、すべて開いた状態で仕立てる方法です。

帯芯を入れた場合手先~前帯部分の帯芯が見えるものと、帯芯が見えない様に別布を付けている場合もありますがいずれも帯幅の調整が可能です。
名古屋帯の開き仕立てと京袋帯の見分け方は、裏地をチェックしてください。
裏地が帯全体で同じであれば京袋帯、お太鼓部分と胴部分で異なる帯地であれば名古屋帯の開き仕立てだといえます。
名古屋帯の開き仕立ては九寸か八寸かで特徴も変わるため、詳しく知りたい方は、こちらの記事を合わせてご覧ください。

【小話】三つの袋?袋帯/京袋帯/小袋帯

「袋」とつく帯には3つあり、先述した袋帯・京袋帯の他に「小袋帯」と呼ばれる帯があります。

小袋帯とは、浴衣や木綿着物などカジュアルな着物に締められる「半幅帯」の一種で、表裏の生地を縫い合わせ袋状に仕立てた帯です。
化繊や麻の小袋帯は両端がかがってある場合も多いですが、正絹博多織の小袋帯などは帯の端が切りっぱなしで折り込んでいる未仕立てで販売されていることが多いため端を見れば袋状であることがわかります。

表裏で異なる生地を縫い合わせてリバーシブルに仕立てられるメリットがあり、長さは現代の華やかな変わり結びに伴い3.5mから長尺だと4m以上の小袋帯もあります。
仕立ての特徴から「袋帯」と名がついてはいますが、小袋帯は半幅帯と同格で浴衣や木綿、ウールや紬、小紋などカジュアルな着物にしか着用しませんので間違えないよう注意しましょう。

京袋帯の結び方と帯枕の選び方

【基本】一重太鼓


京袋帯の基本の結び方は「一重太鼓」です。
袋帯を簡略化しつつもきちんと感が出る結び方として、主流になっています。
お太鼓の大きさや高さ、形は帯枕とタレの位置で調節でき、年齢や体型に応じて変えます。
一般的には年齢が若いほど高めの位置で大きく結び、歳を重ねるにしたがって位置は低めに、お太鼓も小ぶりに結ぶものとされています。
体型によっては、背の高い人はお太鼓を大きめにした方が全体のバランスが綺麗になりますし、逆もまた然りなのであくまでも一般論として参考にしてください。
▼フォーマル、華やかさを出すなら高めタイプがおすすめ

▼お太鼓をまっすぐ、粋に演出したいなら低めタイプがおすすめ

【粋】角出し結び

粋な着こなしに良く似合う「角出し結び」は、江戸時代から人気の通な結び方です。
袋帯でも結べますがカジュアルに装う名古屋帯や京袋帯で締める人が多く、後ろから見た時に左右にツノのように手先が出ていることからその名が付きました。
帯枕不要の結び方なので「帯枕はないけどとりあえず帯結びにチャレンジしたい」という時にもおすすめです。

【粋】銀座結び

角出し結びと同じような完成形になる銀座結びも、粋な着こなしにおすすめです。
違いは結び方の手順くらいなので厳密には同じものといっても良いとされています。

京袋帯を簡単に結ぶアレンジ方法

袋帯を簡略化したのが京袋帯ですが、それでも帯を結ぶのは一苦労…。
より簡単に結べる方法をご紹介しますので、肩が痛くて着物を敬遠している人や結び方が覚えられず諦めてしまった人は参考にしてみてください。

軽装帯に作り替える

もっとも簡単に帯を締める方法は、軽装帯に作り替えてしまうことです。
軽装帯はつくり帯の他、ワンタッチ帯など様々な名称で呼ばれており、切らずに加工した帯もあれば切ってお太鼓部分と前帯をパーツ分解したものがあります。
軽装帯のメリットには
・着付けの時間が短縮できる
・一人で楽に締められる
・肩が辛くても締めやすい
・変わり結びの注文もできる
などがあります。
今後検討する場合は糸を切れば元の状態に戻せる、切らずに加工する軽装帯がおすすめです。
【ワンタッチ帯加工 まゆみ帯加工】帯加工専門店

【角出しつくり帯加工】切る加工

京袋帯の格と着用シーン

帯の種類が判別できたら、いよいよコーディネートを組んでみましょう。
京袋帯は格でいうと準礼装向けと普段向けの2種類あり、織り方では染と織に分類されます。
着物のコーディネートを組む上で基本とされる考え方は「染の着物に織の帯、織の着物に染の帯」とされており、聞いたことがあるかもしれません。
染の着物とはいわゆる「やわらかもの」と呼ばれる後染めの着物で、小紋や色無地、訪問着や留袖などの礼装~略礼装で着用できる着物を指します。
染の帯とは同じくやわらかい質感の帯で、塩瀬や縮緬(ちりめん)、絞りの帯を指します。
織の着物は反対に「かたもの」と呼ばれる先染めの着物で、紬や御召、木綿やウールなど張りのある、普段に着る街着の着物を指します。
織の帯は織の着物と同じく張りがありざっくりとした質感の帯で、代表的なものに「西陣織」「博多織」「芭蕉布」などがあります。
着物の「染め」と「織り」について詳しく知りたい方ははこちらの記事を、
帯の「染め」と「織り」についてはこちらの記事をご覧ください。
これらの着物と帯の組み合わせによって格が決まり、礼装で赴く場面では「TPOに沿っている」とされるのです。
・この京袋帯はどの着物に合わせるのか?
・この京袋帯はどんなシーンで締められるのか?
帯の特徴とデザインごとに、TPOを解説します。

【準礼装向け】織の京袋帯

京袋帯は基本的にカジュアルな着物に締める帯ですが、例外として豪華な金銀や箔を用いた京袋帯で着物と合わせた時に見劣りしないデザインであれば礼装に用いる帯もあります。
現代販売されている礼装向けの京袋帯はほとんど見ませんが、昔は今より国民の暮らしに寄り添った衣服として個人で改良することもあったため様々な形状の帯がありました。
袋帯が礼装用とされたのは昭和の話で、当時の袋帯では重く年配の方には締めづらかったために短く切って京袋帯として礼装に締めていたといいますから、その名残でリサイクルショップや譲り受けた箪笥の中で「礼装向けの京袋帯」に出会うのですね。
礼装向けの京袋帯は、昔の重厚な袋帯や丸帯を加工して作られていることが多いため、恐らく現代の袋帯と比較しても遜色ない華やかさを持っているのではないかと推測されます。
手持ちの着物と合わせた時に格、コーディネートに違和感がなければ京袋帯でも礼装に相応しいと言えるのではないでしょうか。
特に譲り受けた京袋帯を気に入ってはいても「二重太鼓にできないから」という理由で手頃な袋帯を購入するくらいなら、昔の京袋帯の方が遥かに質の良い帯です。
二重太鼓にも意味は込められていますがお太鼓部分の重なりよりも帯のデザインや糸の質の方が分かりやすいですし、それよりも日本人らしく「物を大切にする」心を優先し、手持ちの帯を是非活かしてください。
手持ちの帯と着物のコーディネートに不安を感じたら、近くの着物屋さんに相談してみてください。
馴染みの着物屋が無い場合や相談しづらい場合は、オンラインでコーディネート相談にのってもらえるサービスもありますので上手く活用しましょう。


着物のTPO/コーディネートなどお悩み相談承ります

【普段向け】カジュアルな京袋帯ブランド

現代に販売されている京袋帯は染めがメインの可愛らしいデザインが人気です。
比較的お手頃価格で正絹の京袋帯を販売している人気のブランドを2店舗紹介します。
普段向けのカジュアルな京袋帯は、小紋や紬、御召、木綿やウールなどの街着にぴったりです。
礼装には向きませんので、趣味の範囲でオシャレを楽しんでくださいね。

【京WA・KKA】正絹染め京袋帯


物語を込めたオシャレな絹の染帯で人気を博した「WA・KKA」(ワッカ)には、遊び心満載の京袋帯が多くあります。
【WA・KKA】テーマ:牛若丸と弁慶「にゃん慶とうさ若丸」

【WA・KKA】テーマ:不思議な森「森の番人」

【WA・KKA】テーマ:雲海の下に広がる東京「東京ドローン」

京袋帯よりも気軽に締められる小袋帯も展開しているため、遊び心のあるワンランク上の半幅帯が欲しい人や、お太鼓結びはハードルが高いけどお洒落な染め帯が締めたいという人におすすめのブランドです。

【KIMONO MODERN】召しませ花

「ワンピース時々、きもの」のキャッチコピーで普段着物愛好家に人気な「KIMONO MODERN」内のブランド「召しませ花」の京袋帯も人気です。


【召しませ花】arjenter(アルジョンテ)シリーズ/Cat noir

【召しませ花】arjenter(アルジョンテ)シリーズ/遊園地

【召しませ花】ポルスカフラワー/孔雀や草花

【洗える】化繊の京袋帯

着物を始めたばかりで絹から手を出すのは気が引ける、という人におすすめなのは木綿やポリエステルなど自宅で洗える素材の帯です。
絹と比べて安価で、お手入れも楽なので雨の日や汚れを極度に心配する必要がありません。
とりあえず手順を覚えたい、自宅で洗える帯が欲しいという人におすすめです。
絹と比べると締めにくく緩みやすい化繊の帯は初心者には結びづらいため、注意が必要です。

まとめ

袋帯と名古屋帯の中間の帯として生まれた京袋帯。
両者のいいとこ取りの帯として愛されていますが、現状では染め帯が主流です。
現代らしくポップなデザインが多く、西陣織の帯などと比べると手頃なため着物初心者で絹の帯が欲しい人や、遊び心のある帯が好きな人におすすめです。
自宅に「礼装向けの織の京袋帯」が眠っている人はこの機会に是非箪笥から出して、礼装として相応しいかコーディネートを組んでみてくださいね。
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▼クリーニングについて

この記事で紹介したサービス

【ワンタッチ帯加工 まゆみ帯加工】帯加工専門店

【角出しつくり帯加工】切る加工

【相談サービス】コーディネートや加工に関するオンライン相談

この記事で紹介した商品

八寸名古屋帯/開き仕立て

小袋帯/ツモリチサト

本場博多織小袋帯

帯枕/華やかさ高めタイプ

帯枕/粋な低めタイプ

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